パナレーサーのNEWグラベルキング「X1」を100km乗ってみた!
坂本 大希
- 2024年04月06日
グラベルタイヤのパイオニア的存在と言える「グラベルキング」。メイドインジャパンの高品質さを売りにするパナレーサーの製造するグラベル用のタイヤだ。そんなパナレーサーから、発売から10年が経過したこのグラベルキングを全面リニューアルしたのが今年の3月。新たにできたパターンの「X1」が気になる。とても気になる。試したい。そんなとき、ちょうどパナレーサーが試乗会を東京で実施するというじゃないか。結局その後も含めて合計100km以上走ったので、この機会に「X1」の個人的感想を紹介しよう。
グリップ、転がり、泥はけ。すべて良くなってる!?
開発したパナレーサーの担当者と一緒に走れるイベントに参加したため、現地では実際にパナレーサー三上さんよりタイヤについて聞くことができた。
まず言っていたのは転がりの軽さ。センターが詰まったパターンを用いることで抵抗が少なく軽い転がりを実現している。接地面のエッジの数がグリップや転がりに影響するため、縦方向と横方向それぞれについてエッジの作り方を入念に計算して作成したとのことだ。サイドノブも今までのモデルよりもしっかりと外に張り出しており、自転車を傾けてエッジを路面に当てるようにコーナリングしたときにトラクションがかかりやすくなるよう配慮しているとのこと。X1は結果としてほぼ全ての路面に対応することが可能になるという。
実際に自分でも頻繁にライドを楽しむパナレーサーの三上さん(前)は、昨年アメリカで開催されたアンバウンドグラベルにも出場した。グラベルの知見を国内外で深めている。
転がりがいい。確かにいい。
東京の多摩川沿いのフラットダートを中心に検証。まずグラベル路面がはじまるまでの舗装路の段階で今までよりも転がりがいいことがすぐわかる(編集部サカモトはグラベルキングSKを普段使用)。日本でグラベルライドを楽しむときにはグラベルコースの間で必ず舗装路を走る機会がそれなりにある。これはうれしいポイントだ。
そしてそのままフラットダートに突入。これくらい締まった路面のフラットなら舗装路の勢いそのままに快適に疾走できる。グラベルの路面を流れるように走る気持ちよさはたまらない。
ドロはけが良さそう。ここは検証したいポイントだ。
グラベルライドを楽しんでいるときによくある悩みのひとつが泥だ。タイヤにまとわりついてクリアランスを埋め、自転車を重くしたり動かなくさせたり、果てには破損までさせたり……。この泥との戦いでもあるのがグラベルライドと言ってもいい。現に昨年参加したアメリカのアンバウンドグラベルでは泥による障害がすさまじく、自転車を押してしか進めない(もはや押してもダメでもちあげなきゃ進めない)区間に相当苦しんだ記憶がある。泥対策、必須命題だ。
ぬかるんだり湿ったりしているときに泥がまとわりつきやすく、実際この多摩川のグラベルライドでもそういった区間があり見事にタイヤにまとわりついた。しかし無理やり少し走るとタイヤのセンター部分から泥が落ちている。走っている最中にタイヤの回転にあわせて泥が飛んでいくのが確かに見えた。これはうれしい。多少の泥は頑張って走っていれば勢いで飛んで行ってくれる。アメリカで味わったくらいの異常な粘土質の泥はまだ未経験なので手放しに「ドロはけ抜群!」とはまだ言えないが、検証の価値はある。
このタイヤのセンター部分を見てほしい。泥がサイド部分と比べて剥がれ落ちていることが分かるだろう。
聞くと、このタイヤの開発に深くかかわっているのがパナレーサーの佐藤さんだ。佐藤さん? 佐藤さん……思い出した! 昨年アンバウンドグラベルの会場で一緒になり200マイルを完走した人だ。彼も相当に泥に苦しんだと聞いた。どうも“苦しみ”は人だけじゃなくプロダクトも成長させるらしい。
構造違いで展開される3つのスペック。「R」の軽量化は見過ごせないかも
今回のグラベルキングリニューアルにおいて、「X1」の登場の他に目を引いたのが新スペックの登場だ。今まではオーソドックスな無印と、耐パンク性能を強化した「+(プラス)」のシリーズの2種類。そこに新たに加わったバリエーションの「R(アール)」はより軽さとしなやかさを追求した高スペックのラインだ。重さはとても分かりやすい指標なので実際に計測してみた。
「X1」45CのRスペックだと、重量は片側で約525gだった。同じものの無印をこの後に計測したが、結果は片側約575gだ。重量差は片側で50g、両側で100gもある。とくに重量差の影響を受けやすい回転体の外周の重さということを考えると、この「R」スペックの登場は看過できない。
また、同時期にシーラントも新しくなった。シールスマートEXは前回と比べてより長い期間使えるようになったという。前回までのシーラントは「レース中のパンクがすぐ直るようにしてほしい」というレースチームからの要望によりシーラントに大き目のクルミの殻を混ぜていた。そのためパンク修理性能自体はよかったが、バルブからのシーラント投入ができないなど課題もあった。
今回の「EX」は改良が進んだことで中に入っているクルミの殻が細かいものだけになったためバルブからのシーラント投入も容易になった。それでいてパンク修理性能は前回までのものと同じレベルという。2~4カ月くらいは補充しなくてももつということなので、しばらく使ってみようと思う。
100km走ってみて、「もうグラベルライドはとりあえずこのX1でいいよね」という感覚でいる。もちろんグラベルは路面が千差万別で、同じ条件の道はないからこれからも使っていく必要はある。しかし現時点でタイヤを買うとしたら、「X1」を買えば後悔することはないと言ってもいいだろう。
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- TEXT:Sakamoto Taiki PHOTO:Sakamoto Taiki / Mikami Yuki
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PROFILE
坂本 大希
元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。
元海上自衛官の経験を持つライター。1年間のドイツ自転車旅行をきっかけに自転車が好きになる。2022年秋ごろよりグラベルイベントに多数参加。2023年のUnbound Gravelで100マイル完走。グラベルジャーナリストになるべく知見を深めるため取材に勤しんでいる。