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マリア・ローザ堅守のポガチャル 力強い攻めも慎重かつ冷静に第1週を終える|ジロ・デ・イタリア

ロードレース2024年シーズン最初のグランツールであるジロ・デ・イタリアは、第1週を走り終えた。第2週を迎える段階で、個人総合首位の証であるマリア・ローザは今大会の優勝候補筆頭であるタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)がすでに保持。その走りは好調そのものだ。本人にして「パーフェクト」と評した大会前半戦。個人総合2位のダニエル・マルティネス(ボーラ・ハンスグローエ、コロンビア)に2分40秒差をつけて中盤の戦いへと向かっていく。

© LaPresse

衝撃の個人タイムトライアル

今大会第6ステージまでの戦いぶりについては、5月10日公開の記事を参照されたい。

初のジロを戦うポガチャル、ダブルツールへ視界は良好か|ジロ・デ・イタリア

第1週のポガチャルの走りの中でも、とりわけ衝撃的だったのは第7ステージ。40.6kmに設定された今大会1つ目の個人タイムトライアルでそれは起こった。

© LaPresse

最終走者としてコースへ繰り出したポガチャル。スタートから続く平坦区間は慎重そのものだった。18.6km地点に置かれた第1計測ポイントでは、それまでトップタイムだったフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)から44秒遅れ。34.0km地点にセットされた第2計測ポイントでもガンナから47秒差だった。

© LaPresse

世界を震撼させたのは、最後の6.6kmだった。第2計測通過と同時に始まるペルージャの街への上りで異次元のスピードを披露。最大勾配16%にものぼる急坂は、ガンナらTTスペシャリストをもってしても時速30km前後が精いっぱい。しかし、ポガチャルだけは時速32~33kmのスピードで駆け抜け、フィニッシュ到達時にはガンナを1分4秒上回ってみせた。

© LaPresse

このタイムトライアルを51分44秒で駆け抜けたポガチャルは、勝利を確信しフィニッシュラインでガッツポーズ。一部の総合系ライダーが苦戦したこともあり、個人総合争いでのシャッフルが発生。このステージを終わった時点で、2位に浮上したマルティネスとの総合タイム差を2分36秒とした。

今大会最初の本格山岳も快勝

実質今大会最初の本格山岳ステージとなった第8ステージ。主催者発表では難易度5つ星で、第1週最大のヤマ場と見られた。

© LaPresse

リーダーチームとしてメイン集団を統率したUAEチームエミレーツは、最大で14人まで膨らんだ逃げとのタイム差を調整しながら最後の上りである1級山岳ラティ・ディ・ティーヴォへ。残り4.3kmで逃げメンバーを全員キャッチすると、ラファウ・マイカ(UAEチームエミレーツ、ポーランド)の牽引で総合系ライダーによる争いへと切り替わった。

© LaPresse

個人総合8位でスタートしていたアントニオ・ティベーリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)のアタックで活性化するが、再びマイカがまとめて最終盤を進む。決定打が出ないまま、最後は個人総合上位陣によるスプリント勝負になった。

© LaPresse

こうなると展開はポガチャルのものに。フィニッシュ前のスピードと勝負強さは総合系ライダーの中では群を抜いている。先に仕掛けたマルティネスの動きに合わせて加速を始めると、そのまま他選手を引き離し一番にフィニッシュラインを通過。ステージ2連勝で、ボーナスタイムを生かして2位マルティネスとの差を2分40秒とした。

この先のステージでのプッシュは控えめか? 頭よぎるツールの存在

第1週最終日の第9ステージはスプリントフィニッシュだったため、個人総合にはおおむね変動なし。ポガチャルは前記の通り2分40秒のアドバンテージをもって大会前半を終えた。

© LaPresse

1回目の休息日であった現地5月13日に行われた記者会見では、「上りも個人タイムトライアルもとてもうまくいった」と第1週の走りを振り返ったポガチャル。「2分40秒差で最初の週を終えられたことは、チームとしてパーフェクトだったと分析できる。10点満点で表すなら10点だね」と胸を張る。

同時に、今年の最大目標である“ダブルツール”への意識も口にする。ツール・ド・フランスで過去2年敗れている相手、ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク)が怪我からの復帰を目指してバイクトレーニングを再開したことを喜ぶと同時に、「常にツールのことは頭の片隅にある」ことを認める。ツール前の消耗を避けるため、「限界を超えてまでプッシュする必要はなくなった」と今後のジロの戦いにおける方向性も示唆している。

とはいえ、ジロはまだ2週間残っている。マルティネスは「調子のよい日は確実に攻撃する」と宣言し、ポガチャル自身は個人総合3位につけるゲラント・トーマス(イギリス)と同9位につけるテイメン・アレンスマン(オランダ)のイネオス・グレナディアーズ勢の動きを注視したいとする。

ちなみに、自身やチーム全体の負担を減らすためにマリア・ローザを意識的に手放すことは、「まずない」とポガチャル自身が否定。レース展開に沿いつつも、リーダーの座は譲るつもりはないとの構えだ。

そのあたりは、第2週初日(第10ステージ)から山頂フィニッシュとなる戦いの中で見えてくるに違いない。どんなコースやレース展開にあっても貪欲に勝利を狙う姿勢が印象強いポガチャルだが、このジロは先々を見据えてスマートに走ろうとしている。この先の動向もしっかり押さえていきたい。

© LaPresse

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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