BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • HATSUDO
  • Kyoto in Tokyo

STORE

  • FUNQTEN ファンクテン

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ
  • Bicycle Club BOX

ツール・ド・フランス2024有力選手プレビュー|ビッグ4がマイヨ・ジョーヌ争いを先行する

世界最大の自転車ロードレース、ツール・ド・フランスの2024年大会が6月29日に開幕。第111回大会となる今回は昨年同様(スペイン・ビルバオ)にフランス国外開幕となり、イタリア・フィレンツェでスタートする。今大会の閉幕直後にパリ五輪の開幕を迎えることから、史上初めてパリに到達しないイレギュラーな大会となるが、きっといつもとは違う驚きのレースが見られるはずだ。3週間の総走行距離は3498km、総獲得標高は52230mと、“クライマーズ・ツール”と前評判の長き戦いとなる。大会3連覇がかかるヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク、デンマーク)や、ジロ・デ・イタリアとの2冠“ダブル・ツール”に挑むタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)ら、豪華メンバーによる熱戦が期待される。本記では、押さえておくべき選手や各賞争いのポイントなどをプレビューしていく。

それぞれに偉業がかかるビッグ4 「第2グループ」の突き上げはあるか?

大会最高栄誉である個人総合時間賞。リーダージャージ「マイヨ・ジョーヌ」をかけた戦いから占っていこう。

今大会は間違いなく、“ビッグ4”の存在が軸になる。4人の大物、それはヴィンゲゴー、ポガチャル、プリモシュ・ログリッチ(ボーラ・ハンスグローエ、スロベニア)、レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)。

ヨナス・ヴィンゲゴー

前記した通り、ヴィンゲゴーには大会3連覇の偉業がかかっている。ただ、今年は出場そのものが危ぶまれた。4月上旬のイツリア・バスクカントリーで落車し、複数箇所を骨折。5月から少しずつトレーニングを再開し、6月には主力メンバーと高地でのトレーニングキャンプを実施。同20日に晴れて出場表明にいたり、ツール本番に間に合った。

© A.S.O./Pauline Ballet

個人総合2位となった2021年大会も含めると、過去3大会でポガチャルと激しい争いを続けてきている。とりわけ直近2回では個人総合優勝を果たしている。その要因として、登坂距離の長い山岳区間と個人タイムトライアルへの念入りな準備と、強力なチームメートによる盛り立てが挙げられる。

怪我が癒えたとはいえ、前哨戦には出場せず、ぶっつけ本番で挑む今大会。そのコンディションは未知数である。好材料としては、同様に怪我明けのワウト・ファンアールト(ベルギー)が戻ってくることや、マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ)の台頭など、今回も充実のチームメートに恵まれる点。チーム力で見れば、出場チームの中でも指折りの強さと言えるだろう。

ヴィンゲゴー自身、そしてヴィスマ・リースアバイクの状勢は早い段階で明らかになるかもしれない。名峰・ガリビエ峠を走る第4ステージが、大会序盤のポイントとなりそう。戦える状態であるかは、第1週目でおおよそ見えてくるだろうか。

© A.S.O./Pauline Ballet

タデイ・ポガチャル

1998年のマルコ・パンターニ以来となるジロ・ツール2冠を目指すポガチャルは、ビッグ4の中では最も順調にツールを迎えた印象だ。ジロでは2位に9分56秒もの大差をつけて勝利を収め、ステージ勝利も6つと完勝。ただ何より、その走りからは「出し切ることなく」3週間を終えた感さえもあった。

© LaPresse

ジロを終えて、少しばかりの休養を経てツールに向けたトレーニングを再開。この間UAEチームエミレーツは、ツール・ド・スイスでアダム・イェーツ(イギリス)とジョアン・アルメイダ(ポルトガル)が圧倒的な走りでワン・ツーフィニッシュ。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネではフアン・アユソ(スペイン)が落車でリタイアしたが、大きなダメージはなくツールには間に合わせる。戦力は今大会ナンバーワンとの見方が強い。前回はポガチャルが大会終盤に大きな遅れを喫したことで、アダムに上位進出のチャンスがめぐり、最終的にポガチャルが2位、アダムが3位で総合表彰台を獲得。今回も、個々の能力を考えると複数人が表彰台をゲットしても不思議ではない。

とはいえ、最大ミッションはポガチャルのダブルツールだ。近年ではアルベルト・コンタドールやクリストファー・フルーム(現イスラエル・プレミアテック、イギリス)が挑戦するも、かなわなかったジロとツールの2冠(コンタドールは2008年にジロとブエルタ・ア・エスパーニャ、フルームは2017年にツールとブエルタで2冠)。大偉業の達成なるか、その答えはもうすぐ見えることとなる。

© LaPresse

プリモシュ・ログリッチ

ビッグ4の中では最年長の34歳、ログリッチには全グランツール制覇がかかっている。ブエルタでは2019年から3連覇し、ジロでは昨年優勝。ほかにも東京五輪の個人TT金メダルなどビッグタイトルを数多く手にしていながら、ツールだけは頂点まで届かない。2020年大会では個人総合優勝に王手をかけながら、最終日前日の個人タイムトライアルでポガチャルに大逆転を許した経験がある。

© A.S.O./Billy Ceusters

ツール出場は2年ぶり。スーパーエースが幾人もひしめくユンボ・ヴィスマ(現ヴィスマ・リースアバイク)を離れ、新たな環境に身を置いているのもすべてツール制覇のためだ。ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)、アレクサンドル・ウラソフといった、本来であれば総合成績を狙えるであろうグランツールレーサーがアシストを務め、上位へ押し上げるための地盤を整えている。

ヴィンゲゴーらと同様にイツリア・バスクカントリーで落車したが、すでに傷みは癒えている。前哨戦のドーフィネで個人総合優勝し、好調さをアピール。最終日こそブレーキ気味になってヨルゲンソンの猛追を受けたが、それまでの走りは力強く、ツールに向けてもさらに仕上げていることだろう。

© A.S.O./Billy Ceusters

レムコ・エヴェネプール

これまでの実績を考えると、ツールデビューが意外なレムコ。チームの育成方針からツールを回避し、グランツールはジロとブエルタに注力してきたが、満を持してツールに臨む時がやってきた。

© A.S.O./Billy Ceusters

こちらもイツリア・バスクカントリーで落車に見舞われ、鎖骨と肩甲骨を骨折。それでも早期の回復に成功し、ドーフィネで戦線に戻ってきた。肩回りの怪我によって、TTポジションの崩れを本人が心配していたが、ドーフィネでは個人TTステージを勝利。不安を解消し、ツールへ明るい材料としている。

そのドーフィネでは山岳で苦しむなど、ベストコンディションにはなかったが、ツール本番までに仕上げる見通しは立っている。特に今大会は2つの個人TTステージ合わせて59kmと、見せ場を作るチャンスは十分。あとは山岳での走りが安定してくれば、マイヨ・ジョーヌだって夢ではない。

© A.S.O./Billy Ceusters

ダークホース

ビッグ4の存在が非常に大きいものの、他の選手たちにもチャンスがないわけではない。実質の「第2グループ」からは誰が浮上してくるだろうか。その走りいかんでは、トップグループ4人に追いつき、追い越す可能性だってある。

その最右翼となりそうなのが、イネオス・グレナディアーズが誇る若きリーダー、カルロス・ロドリゲス(スペイン)。今季は4月にツール・ド・ロマンディを制し、先のドーフィネでは最終・第8ステージで勝利。シーズンを通して好調を維持する。前回大会ではステージ1勝を挙げ、最終的に個人総合5位。そのときを大きく上回る走りに期待がかかる。イネオス・グレナディアーズはエガン・ベルナル(コロンビア)もメンバー入りし、この両輪がチーム浮沈のカギを握ることとなる。

© A.S.O./Billy Ceusters

昨年個人総合4位のサイモン・イェーツ(チーム ジェイコ・アルウラー)は、4月下旬以降レースから離れ、ツールに向けた調整に集中。そのスケジューリングが吉と出るか。

ツール・ド・スイスでは負傷リタイアに終わったリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト、エクアドル)は回復を急ぐ。前回は第1ステージで落車し、早々に大会を去っている。その雪辱を期して今年は上位進出を目指す。

スペイン勢では、上位常連のエンリク・マス(モビスター チーム)やペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)の名が挙がる。

そして、アウトサイダーとして押さえておきたいのは、ドーフィネで個人総合3位と大躍進したデレク・ジー(イスラエル・プレミアテック、カナダ)。昨年のジロで再三再四逃げた姿に強いインパクトを残すが、初出場のツールを前に総合系ライダーとして覚醒した感がある。タイムトライアルを得意としているあたりもプラス要素で、本人も上位進出へ意欲的だ。

© A.S.O./Billy Ceusters

前記したヨルゲンソン、アダム、アルメイダ、アユソといった、ビッグチームの2番手・3番手の選手たちが絶対エースを押し上げながら、自身も上位へ…ということも大いにあるだろう。展開次第では、プランB・プランCとして総合エースに昇格する可能性もゼロではない。

なお、個人タイムトライアルステージをのぞく各ステージには、上位3選手にそれぞれ10秒・6秒・4秒のボーナスタイムが付与される。ステージによっては、コース途中に上位通過3人に8秒・5秒・2秒のボーナスも設けられ、これらが個人総合争いにかかわってくることも考えられる。

マイヨ・ヴェール争いはフィリプセンvs.ピーダスンの構図か

スプリンターの栄誉であるポイント賞「マイヨ・ヴェール」も、好勝負が期待できそうだ。

筆頭格は、昨年に続く連覇を目指すヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク、ベルギー)。今季はここまで4勝しており、なかでも3月のミラノ~サンレモでの勝利は改めて勝負強さを印象付けるものとなった。今大会もマチュー・ファンデルプール(オランダ)とのホットラインが見られるはず。前回大会では4勝を挙げているが、平坦ステージが8つ設定される今回はどこまで勝利できるか見もの。

ヤスペル・フィリプセン

© A.S.O./Pauline Ballet

対抗馬と目されるのが、マッズ・ピーダスン(リドル・トレック、デンマーク)。今年の勝利数は、フィリプセンを上回る8勝。そのほとんどがスプリントだが、フィニッシュ前でのスピードに加えて逃げでも狙っていけるのが強み。平坦だけでなく、丘陵コースにも適応できる脚を持っており、コースレイアウトや展開次第ではステージ優勝の量産もあり得る。中間スプリント(後述)でのポイント収集をこなしながら、ステージ上位を確実に押さえていけば、マイヨ・ヴェール争いで一気に抜け出す可能性もある。

マッズ・ピーダスン

© A.S.O./Billy Ceusters

この2人に限らず有力スプリンターがひしめいており、先のベルギー選手権ではフィリプセンに勝ったアルノー・ドゥリー(ロット・デスティニー)や、オランダ選手権を勝ったばかりのディラン・フルーネウェーヘン(チーム ジェイコ・アルウラー)、ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ、エリトリア)といった選手たちの名が挙がる。また、戦列復帰したばかりのワウトはどこまでスピードマンの争いに加わってくるだろうか。

この大会では、マーク・カヴェンディッシュ(アスタナカザクスタン チーム、イギリス)のステージ勝利最多記録「35」の達成なるかにも注目が集まる。昨年は落車リタイアとなり、引退を先延ばしにして今大会にかけてきた。大記録樹立で有終の美を飾れるだろうか。

© A.S.O./Pauline Ballet

同賞の付与ポイントはコース難易度によって変化し、スプリンターが主役となる平坦ステージならば1位フィニッシュで50点獲得。以下、順位に応じて得点が付与されていく。また、各ステージで中間スプリントポイントが設定され、上位15選手にポイントが与えられる。

ポガチャル“卒業”でマイヨ・ブラン争いは新たなフェーズへ

山岳賞「マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ(マイヨ・アポワ)」は近年、個人総合優勝者が同時獲得するケースが増えてきているが、昨年はジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック、イタリア)が同賞にフォーカスして栄誉にあずかった。山岳比重の高い今回は、個人総合争いに反映される形になるのか、山岳賞を狙って動く選手にジャージがもたらされるか、その流れを見守っていこう。

山岳カテゴリーごとの付与ポイントは以下の通り(頂上1位通過から順に表記)。

  • 超級山岳:20,15,12,10,8,6,4,2
  • 1級山岳:10,8,6,4,2,1
  • 2級山岳:5,3,2,1
  • 3級山岳:2,1
  • 4級山岳:1

今大会はヤングライダー賞「マイヨ・ブラン」が熱くなりそうだ。

1999年1月1日以降生まれの選手が対象、つまりは今年25歳になる選手までがジャージの着用資格を有する。

昨年まで4連覇していたポガチャルが晴れて“卒業”し、今回は新たなヤングリーダーが誕生する。個人総合優勝候補に若い選手が名を連ねていることもあり、マイヨ・ジョーヌ争いがマイヨ・ブランの行方にも反映されそうだ。

有力どころとしては、レムコ、ヨルゲンソン、ロドリゲス、アユソ、イラン・ファンウィルデル(スーダル・クイックステップ、ベルギー)あたり。

このほか、ステージごとに選出される「敢闘賞」や、3週間を通して印象的な走りを見せた選手に贈られる「スーパー敢闘賞」、各ステージのチーム内上位3選手のフィニッシュタイムを合算して決める「チーム総合時間賞」なども設けられる。

© A.S.O./Pauline Ballet

SHARE

PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

No more pages to load