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60年以上愛されるレジェンド餃子 高田馬場『餃子荘ムロ』

かつて中国から海を渡ってきた餃子も、いまや日本の国民食。中華料理店のみならず、コンビニ惣菜や冷凍食品などでも、高いクオリティーが求められている。こうした急速な餃子の進化がある一方、何十年も変わらぬ味を守り、愛され続ける店が高田馬場にある。今回はそんな愛しいレジェンド餃子とも言える銘店を紹介しよう。

60年以上愛され続ける街に欠かせない味

17歳から働き始め、餃子一筋の捷士さん。

 

高田馬場の老舗『餃子荘ムロ』の餃子は、昭和29年の創業以来、皮も餡も家族で手作りしている。

「もう身体に染み付いているから、大きさとかいちいち測ってないんですよ」

L字型カウンターの向こう側で、やわらかい口調で話しながら、紐状に延ばした生地を金太郎飴のようにトン、トン、トンと小気味よく切り分ける。驚くのは、機械のように均一な一つひとつの大きさだ。半世紀以上、皮作りを担当している岩室捷士(いわむろまさし)さん。古希を過ぎているとは思えない所作に、思わず引き込まれてしまう。

戦後闇市から始まった餃子の原風景

高田馬場の老舗『餃子荘ムロ』の餃子は、昭和29年の創業以来、皮も餡も家族で手作りしている。「創業者の父はもともとジャズマンだったんです」と教えてくれたのは、捷士さんの姉である店主の純子さん。

青山で生まれた初代・楽之さんは戦前、海軍の軍楽隊でドラムを学び、戦後は進駐軍関係の芸能プロダクションを営んでいたという。

「米軍基地にバンドや芸人さんを手配していて。朝霞のキャンプ・ドレイク(基地)に行った時に、満州から引き上げて来た人が作った焼き餃子に出合ったんです。それをヒントに見よう見まねで作った餃子がルーツだと思います」

講和条約締結後、米軍が引き上げ、仕事が少なくなったことをきっかけに、かねてからやりたかった飲食業に転身。高田馬場駅前の闇市に店を出した。

「世界中を見てきた人ですから。当初はボルシチやハンバーグとか洋食が中心の中で餃子もあって。今で言う多国籍料理店の走りでしたよ(笑)」

長身の伊達男で話好き。場を明るくする華があった楽之さんの店は繁盛したが、区画整理で昭和44年に現在の地に移転。学生の要望で麺類を出し始め、いつしか中華料理店になった。

「お客さんとの距離感が近くて楽しい」と捷士さんの息子・健治さんが話す味わい深いカウンターは、移転当時から使い続けているもの。2階には昔ながらの円卓のテーブル席も配されている。

純子さんが店に出始めたのは移転する前の19歳の頃。

「父は厳しかったので、高校を卒業して進学も就職もさせてくれなくて。店も、お酒を出すところだから、って最初は反対されたんですが、やってみたら面白くて。今もそうですが、いいお客さんばかりなんです」

現在は純子さん、捷士さん夫婦、捷士さんの息子・健治さんの家族4人で店を営んでいるが、60年以上通う人や家族で二代、 三代通い続ける常連客も少なくない。

 

「毎日ケンカしながらやってます」と笑う純子さん(右)と捷士さん夫婦(左)、健治さん(奥)。

パチパチパチ……という乾いた音とともに出来上がる餃子

餃子は小ぶりで食べやすい。100個食べた猛者も!

酢醤油とラー油にマスタードをたっぷり入れたタレに付けてひと口噛むと、カリッと軽快な歯ざわりの後、中の餡からジューシーな旨味がジュワッ。口の中に五香粉の香りが広がる独特の味は他に類を見ない。皮同様、餡も昔から変えておらず、豚挽肉と白菜、セロリ、ネギ、ショウガにヤマサの醤油と白絞油、ゴマ油、酒、自家製の豚ガラスープ、五香粉、塩をその日に合わせ仕立てている。

「父からは白菜の水分を徹底的に搾れと教わりました。肉と野菜のバランス、それに油が大事なんです」と捷士さん。

 

ラードを馴染ませた熱々の鉄鍋で焼き上げられる。

餃子荘ムロには「ふつう」以外にも4種類のレジェンド餃子がある

餃子は定番の「ふつう」の他に4種類。ピザ作りにヒントを得てオランダ産のエダムチーズを入れた「チーズ」、一球ニンニクを一片使い、中に包んで火を入れることで辛味と臭みを飛ばした「にんにく」、カレー粉を忍ばせた「カレー」、唐辛子パウダーを油で練ったペーストを入れ「紅」。それぞれに根強いファンを持つ。

シャキッとした食感で香り高い「にんにく」(700円)
コク深いエダムチーズが餡と一体化し、とろけ出す「チーズ」(700円)
鼻に抜けていく「カレー」(650円)
唐辛子の辛味が利いた「紅」(650円)

注文が入ってから一つずつ包む、丁寧な仕事

作り置きはせず、注文が入ってから一つずつ包むという丁寧な仕事が、格別な味を生み出している。

生地を紐状に延ばしてから切って麺棒で広げる。
生地は前日に仕込んで寝かせ、当日餡をのせる。
水は一切付けずに、丁寧に包まれた餃子。

餃子だけにとどまらない、『餃子荘ムロ』の魅力

『餃子荘ムロ』の個性は餃子だけにとどまらない。

餃子以外の料理を担当する純子さんは、御年83歳で毎日店に立ちながら、4年前からDJの勉強を始め、「DJ SUMIROCK」の名で、都内やパリのクラブでプレイしている。しかも、フランスの著名なアーティストの来日公演で、前座も務めたというバイタリティには脱帽する。

「やりたいことを全部叶えたい」と純子さん。

Instagram:@dj.sumirock

「戦争中に空爆で中野の家が全焼して、命からがら逃げて……。人間、生きていれば何でもできるんですよ」

大ぶりのブラックタイガーを使った「エビチリ(900円)」も人気。料理のオーダーは1回まで。

そして、カウンター商売の醍醐味とばかりに、客との丁々発止のやりとりで場を盛り上げる健治さん、静かに黙々と餃子を包む職人肌の捷士さん――。

時代は刻々と変わる。その激流の中で『餃子荘ムロ』は、変わらない人間味と確かな味が、時を超えて多くの人を魅了している。

中身は秘密のカクテル「ホースネック(400円)」。

 

【DATA】
餃子荘ムロ
住所/東京都新宿区高田馬場1-33-2
電話番号/03-3209-1856
営業時間/17:00~22:00(L.O.21:30)
定休日/日曜、ほか不定休あり

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PROFILE

buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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