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【家飲み万歳】人気ビストロに聞く、酒場料理の方程式 前編

居心地の良い空間、旨い酒、料理、
酒場のセオリーとは?

「フランス人ほど酒場でゆっくりと時間を過ごす人種もあまりいないでしょう。ビストロであるorganもフランスの酒場のようにゆったりとした時間を提案しています」

今を遡ること十数年。「ナチュラルワイン」という言葉が浸透していなかった時代に、三軒茶屋の地でナチュラルなワインを打ち出し一躍、東京のビストロシーンで話題となったのが『uguisu』である。この店を訪れ、ナチュラルワインの虜になった人も多い。そして日本国内でのナチュラルワインの流通量は増加の一途を辿り、いまや広く親しまれる酒のジャンルとして確固たる地位を築くまでとなった。

日本におけるナチュラルワイン界のエポックメイキング的存在となった『uguisu』を立ち上げたのは、紺野 真氏。現在では西荻窪『organ』を加え、2つのビストロのオーナーシェフを務め、ナチュラルワインと豊かな時間を求めるフーディーたちを満足させるべく、毎夜、腕を揮っている。

「根底にあるのは、ワインを楽しんでもらいたいという気持ちです。ワインは時間の経過とともに印象が変わるので、やはりゆっくり楽しんでいただきたい。うちの店では2時間程度しかお時間がとれない方は、予約の時点でお断りをさせていただいているんです。もちろんそれはワイン、そして酒場での時間を楽しんでほしいからです」

紺野氏が繰り返す“時間を楽しむ”ということ。言葉としてはシンプルだが、具現化する術を知っている者が少ないからこそ、人々はくだんの2軒に詰めかけるのであろう。一体、何が人々を惹きつけて止まないのか。organの席に着き、グラスを傾けながら店内を見回すと、その答えがうっすらと見えてくる。

「ワインを提供していますが、uguisuもorganも緊張感のある場所ではありません。張りつめた雰囲気のなかでうんちくを並べるのではなく、リラックスした空間のなかでお酒と料理、そして時間と会話を楽しんでもらいたいのです」

スキのある空間が生む効果

「具体的なお話をしましょう。ゲストがリラックスできるのは、空間に隙があるからです。organのインテリアは基本、セカンドハンドのものを集めています。そして器は作家さんが手掛けたものをチョイスしています。それらが月日を経ることで、さらに個性的になる。みなさんが腰を下ろし時間をともにする椅子はもっとわかりやすいでしょう。材質も形も異なる椅子たちが経年変化し、味わい深い佇まいとなっています。そうそう、本棚も重要な役割を果たしていて、背丈や束、背表紙の顔つきがバラバラな本を並べています。いずれも私物ですが、無作為な並びは雑然としているでしょ?つまり、整え過ぎないことがポイントなんです。それが隙。隙があることでリラックスした空間が生まれ、そこで会話が弾むんです。会話の潤滑剤がワインであり、そのパートナーが料理というわけです」

それぞれバラバラの椅子がそれぞれに経年変化をし、店内の雰囲気を作っていく。

上に目を見やると、ランプも不揃いなことがわかる。これらが重層的に視覚に入ることで、力を抜いて楽しむことができるのだ。

器とカトラリーへの思い

「フランス料理はソースで食材を美味しくする料理だからソースが映える白ベースの優美な皿が重用されます。うちは食材自体を活かした料理が中心であるため皿はリュスティック(野趣)なものを揃えています」。皿選びひとつとっても、酒場には酒場のロジックがあるのだ。

ちなみに、カトラリー、テーブルセットも揃えないのが紺野流。「リラックスさせるためには、細部に至るまで揃えないことが大切。カトラリー類はメーカーを揃えてしまいがちですが、バラバラでも何の問題もないはずです。カトラリー置きすら揃えなくたっていいんです」

紺野シェフの料理にとって器の存在は重要。野趣のあるものと、繊細な盛り付けがミスマッチの妙を引き起こす。

インテリア同様にカトラリーすら揃えない。ここまでやるからこそ、それば美学として成立するのである。

紺野シェフオススメ! 酒のアテ三選

独自のセンスで美しい料理を作り上げる紺野シェフだが、もっと簡単で軽めの“アテ”はどんなものがオススメなのだろうか。

「料理とは違い、軽めのアテは酒、つまりタイミングを問わずに楽しめるカジュアルなものたちがおすすめです」

ここではフランスで日常的に楽しまれているという3つのアテを教えてもらった。

ラディッシュのバター挟み

ラディッシュに良く冷えた発酵バターを挟み塩を振るアテは日本では知られていないが、フランスではポピュラー。

オリーブのマリネ

ローリエ、タイム、ローズマリー、ニンニンクとオリーブオイルでマリネしたオリーブはパンとともに楽しみたい。

チーズ ハチミツとタイム添え

チーズにハチミツの合わせは知られているが、タイムを添えるのがポイント。チーズはシェーブルが好相性。

紺野シェフ直伝! 簡単に作れる酒場料理レシピ

全2回で展開する本記事だが、前編となる今回は複雑な工程の無い、簡単な酒場料理をひとつ紹介する。シンプルだけれども、家飲みでこんなのがサッと出てきたら正直感動モノである。

ほうれん草のソテー 生ハムを巻いたグリッシーニと半熟卵

切れ込みを入れた途端にとろけ出す黄身とほうれん草の組み合わせ、そしてグリッシーニの食感はワインのアテに打ってつけ。

【材料】

A
強力粉…75g
砂糖…3g
塩…2g
ドライイースト…2g
水…50cc
EXVオリーブ油…8cc

卵…1個
ほうれん草…100g

B
パルミジャーノパウダー…3g
オイスターソース…3g
ショウガ(すりおろし)…2g
ニンニク(みじん切り)…1.5g
バター…10g

塩、コショウ…少々
生ハム…1枚

【作り方】

1 グリッシーニを作る。Aを合わせ、生地がまとまるまで捏ねる。水分は生地の状態で調整する。生地を1時間寝かせた後、細長く成形して190℃のオーブンで15分焼き粗熱をとる。

2 常温の卵を沸騰している湯に入れ5分30秒茹で、半熟卵を作る。

3 1のグリッシーニに生ハムを巻く。

4 フライパンにほうれん草、Bを入れ蓋をして蒸し焼きにし、塩、コショウで味を調える。

5 ほうれん草が熱いうちにセルクルを使って皿の中央に丸く盛り付け、半熟卵をのせ、塩、コショウを振る。グリッシーニを添えてできあがり。

教えてくれたのはこの人!

紺野 真さん

学生時代に渡米先で働いたことがきっかけとなり、帰国後本格的に料理を修業。三軒茶屋『uguisu』に続き2011年に2軒目となる『organ』を開業。フランスのナチュラルワインへの造詣と独創的な料理にファンは多い。

organ

住所/東京都杉並区西荻南2-19-12
TEL/03-5941-5388

出典

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PROFILE

buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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