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影響されるのではなく確信を得るツール|『OGASAWARA RESTAURANT』小笠原圭介さんが読んできた本

「いつも驚かれます。渡り歩いた店はいずれも有名店で、『エクイリブリオ』もメディア露出が多かったですから。飽きっぽいってわけではないんですが、やってみたいことがあると行動に移すタイプなんだと思います」

再確認、そしてスイッチ

飲食店がひしめき合う新宿・荒木町で自身の名を冠した店を出したことが記憶に新しい小笠原圭介氏。都度ファンを驚かせる小笠原氏は一体何を考えているのだろう。

「ぼんやり先のビジョンを考えているときに、本を見ているとスイッチが入るんです。名古屋からの上京を決めた時、アロマフレスカを辞めて北海道にいた時にカンテサンスを目指そうと思った時。二子玉川(エクイリブリオ時代)の時もそうですね。モヤっとしていたものが、文字やビジュアルで再確認できると、つい行動に移しちゃうんですよね」

和やかに話す氏に、いまが満足かと問うてみた。

「わずか3テーブルです。お客様との距離はいままでで一番近くなりました。だからこそ、見える、気付かされる、反省することが多々あります。今は池波正太郎さんの本を見ては、震えが止まらないほどに、もっとここを、あれを良くしなければと想いを巡らしています」

いつオンになるとも知らぬスイッチを持つ小笠原氏が次に手にする本は、そして今後は……。目が離せない存在である。

小笠原さんが読んできた本

書影はすべて小笠原シェフ私物。

【上京決意時の一冊】
「料理王国」(2000年12月号)

東京へ向かうことを決意させた伊シェフ特集号
名古屋出身の小笠原氏にとって、上京する“背中押し”となった一冊。

「21歳の頃です。当時はまだインターネットも普及していませんでしたから、目指していた東京や大阪にどんな店があるかは、料理王国のシェフ特集号でリサーチしていました。この号でアロマフレスカに狙いを定め、東京へ向かい、あれよあれよと3ヶ月後には就職していました(笑)」

【東京復帰前の一冊】
料理王国」(2007年8月号)

北の大地で運命を動かしたのはまたこの雑誌
紆余曲折を経て、北海道の地でまたしても出会う『料理王国』。次の一歩はこの中にあったという。

「またこの雑誌なんです。お客さんから聞いていた『カンテサンス』の料理を見たときに、この発想はすごい!と思いました。味の追求ではなく、発想で勝負することに面白さを感じ、門を叩きました。ミシュランの星を獲得前で、まだ穏やかな店でしたね」

【独立開業時の一冊】
「Food – Il mondo del gusto per immagini」Food Editore

開業時の気持ちの如き大きさと重み
2010年に独立を果たした小笠原氏へ開店祝にとプレゼントされたのは大判のビジュアル“フード”ブック。

「この本は大活躍してくれました。海外のお客さんに食材を伝えるプレゼン資料になりましたし、日本の生産者さんへ欲しい食材を伝えるためにも便利でした。開業時、挑戦したい気持ちを後押ししてくれた手放すことのできない思い出の一冊です」

【ブレイクスルー期の一冊】
ブランジュリ タケウチ どこにもないパンの考え方」竹内久典/柴田書店

焦る気持ちを救ったレシピのない料理本
「エクイリブリオの開業から1年が経った頃ですかね、もうレシピが出尽くしたというか、手持ちの駒がなくなったと感じ、焦っていました。このレシピのないパンの本を読んで、その焦りが消えたんです。そうか、レシピに縛られる必要はないと。レシピとかジャンルの枠を外した途端、気持ちが晴れやかになったことを今でも覚えています」

【現在の一冊】
食卓の情景」池波正太郎/新潮文庫

いまだからわかる池波正太郎の“怖さ”!?
「まさにいま、震えながら読んでいます(笑)。池波さんってお店を褒めたかと思うと欠点を的確に指摘して『もう来ることはないか』って締めくくったりするんです。これって店をやっている人間からすると相当に怖い。怖いから読んで、学んで、改善します。自由にやらせてもらっているからこそ、肝に銘じなければならないことが綴られている名著です」

 

Profile
OGASAWARA RESTAURANT オーナーシェフ 小笠原圭介
「アロマフレスカ」、そして「カンテサンス」を経て2010年に独立開店した「エクイリブリオ」で絶大な人気を博すも突如閉鎖。2015年9月に新宿・荒木町でテーブル3卓の店を興す。

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PROFILE

buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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