【一流料理人のSECRET RECIPE】『寒ブリの照り焼き』(日本料理 一凛)
buono 編集部
- 2020年12月02日
INDEX
本料理店『一凛』を営む橋本氏が手掛ける、寒ブリ照り焼きの極意
「各面三度のタレ塗りは、まず味、二度目で香り、三度目で照りをつけるため。仕上げは乾かす程度で、決して焦がしてはならない」
これが東京・渋谷区神宮前で日本料理店『一凛』を営む橋本氏が手掛ける、寒ブリの照り焼きに対する極意だ。
冬に脂を多く身に蓄えるブリは「寒ブリ」と呼ばれ、価格も味も一気に跳ね上がり、鮨ネタとしても人気の魚種だ。体長は1mを越え、通常は10kg前後。 出世魚で幼魚から3度ほど呼び名が変わる。また、関東、関西など地域によっても名称は様々だが、いずれも体長80cmを超える個体に関しては “ブリ” という呼び名で共通している。
このブリを使った料理で、やはり広く知られているのが照り焼きだろう。もちろん日本料理のひとつに数えられ、照り、焼き加減が肝要となる。醤油ベースのタレを付けることで焦げやすい照り焼きだが、とにかく焦がしたら一巻の終わり。シビアで繊細な料理、その一流の技を紐解いていこう。
寒ブリの照り焼き
味をつけ、香りを付け、仕上げの照りを付ける三度塗り。焼き加減による口あたりと香り、そしてジューシーな面が魅力なのだ。
材料(1人分)
鰤……1切れ
大根おろし……適量
〈タレ〉
濃口醤油……500cc
煮切り酒……100ml
煮切りみりん……100ml
ザラメ……20g
作り方
1
切り出したブリの切り身の両面に塩をまぶし10分ほど寝かせ、浮き上がった水分を拭き取り、少量の濃口醤油に浸しさらに10分置く。
2
薄く下味が付き常温へと戻った状態の切り身を金串に打ち形を整える。やや表面が盛り上がるように湾曲させながら串を通す。
3
金串は、切り身の幅が狭い方の中心から一本、もう一本は一本目を支えるように打つ。皮面のラインに合わせるのは身崩れ防止のため。
4
炭から放出される熱が一定になり安定を知らせる白炭が浮いていることを確認し、串刺しした切り身を表面となる側から炭にかける。
5
切り身の大きさにもよるが7分程度焼き上げて焼き面を確認する。目安としてはきつね色へと焼けていれば問題なし。その後、裏面も焼く。
6
表面と同様に焼けているのを確認したら、仕上がりまでに合計三度のタレを刷毛で塗り付けるが、その初回。すべての面を丁寧に。
7
醤油ベースのタレを付けることで焦げやすくなるため細心の注意を払う。両面を焼いた切り身には、熱が通っているためタレを乾かす程度に。
8
一度目は味付けのため、二度目は香り付けのために丁寧に塗り込みさらに炭の上にかける。すべての面が、乾ききるほどに熱を加える。
9
三度目は照りを出すための仕上げのひと塗り。一カ所にタレが留まらぬよう均一に美しく塗り上げる。程良い照りの感じがつかめたら炭へ。
10
合計三度のタレを塗り終え、再び炭の上にのせる。濃く染み込ませた表面は、特に焦げやすい。タレがある程度乾いたら完成。
【仕事の必需品】
金串
橋本氏にとって魚を焼く際には、金串は大切な道具。熱伝導により、身の内側まで熱が通りやすいのも重要なポイントとなっている。
刷毛
切り身に醤油タレを三度付け、照り焼きをアシストするのが料理用の刷毛。長く使い慣れた刷毛は繊細な日本料理にとって使用頻度も高い。
【達人の目利き】寒ブリ
生食できるほどに新鮮で脂のりの良い良質なブリを使用。照り焼き用の切り身ももちろん塩をまぶし旨味を引き出すための下処理を加える。
炭を制する者は焼きを制する
バーベキューなどで炭を使って肉を焼いてみたが表面ばかりが焼けて、中に火が通らず、よく火を通そうと思うと焦げてしまったという経験は誰にもあるだろう。それは炭火の火力が強過ぎるため。モクモクと煙が出過ぎるのも安定しない火力の仕業だ。炭火焼のコツは充分に炭を燃やし、熱が安定するまでひたすら待つこと。紅く燃えているうちはまだ早い。目安は炭の表面の白さだ。安定すれば煙も少なく焼けるようになるのである。
料理人プロフィール
橋本幹造
京都出身。駆け出しの料理人のころ、専門店ごとに売場を持つ、築地市場のスケールの大きさに銘を打たれ、東京出店を志す。自身の店を構えるようになり10年。仕入れから調理まですべてひとりでこなしてきた。
日本料理 一凛
住所/東京都渋谷区神宮前2-19-5 AZUMAビル 2F
TEL/03-6410-7355
営業/12:00~15:00、18:00~22:00 ※完全予約制
休み/不定休
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PROFILE
buono 編集部
使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。
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