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あの「タカラcanチューハイ」の原点は大阪にあった。 大阪『ヨネヤ 梅田本店』

スーパーやコンビニでよく目にする「タカラcanチューハイ」。
そのモデルとなった歴史的な一杯「純ハイ」は、大阪『ヨネヤ 梅田本店』で生まれた。

関西チューハイの “金字塔” は、いかにして生まれたのか?

朝9時。昼夜逆転の生活を送る者からすれば、これからがゴールデンタイムだ。夜勤明けのタクシー運転手や警察官など、オープンと同時にのれんをくぐるお客の顔は少し眠そうだが、充実感にあふれている。昼時、「大阪に来たら絶対串カツを食べなきゃ」という意気込みを感じる観光客がテーブルを埋め尽くす。最近では、女性の一人客も増えているという。そして、夕方から徐々に集まり始める常連たち。年齢も性別も職業もばらばらだが、『ヨネヤ』を訪れる人々の傍らには、いつも「純ハイ」があるのだ。

純ハイ 350円。焼酎の力強い味わいと、爽やかなレモン風味の絶妙なバランス。「純ハイ」のプロトタイプにして、完成形となった名作だ。

「純ハイ」とは、宝酒造が販売する甲類焼酎「純」を用いて作ったチューハイの総称だが、 “ヨネヤの純ハイ” は特別。まさにここが純ハイ発祥の地であり、そして日本初の缶入りチューハイ「タカラcanチューハイ」のプロトタイプとまで言われているほどなのだ。

この歴史的な一杯が生まれたのは、日本がバブル景気で浮かれ出す少し前の昭和58年頃のこと。焼酎を炭酸で割る文化が関東の酒場で徐々に浸透していく中、甲類焼酎を飲む文化がなかった関西ではチューハイがいまいち根付かなかった。そんな状況下でありながら、チューハイの提供に踏み切った当時のヨネヤの社長は、「せっかく出すなら、高級感のあるチューハイを」と考え、高級価格帯の銘柄「宝焼酎 純」をベースに、宝酒造とチューハイの開発に取り組むことを決めたそうだ。

呑兵衛が集まる昔ながらの酒場だったが、いまでは女性のグループや子連れの家族の来店も目立つ開かれた雰囲気に。開店から閉店まで客足が絶えない。

焼酎の質から氷の数まで、 徹底したこだわりは常連への思いやり。

開発にあたり、まず画期的だったのがディスペンサーの導入。イチからの手作りでは、焼酎も常温で炭酸も抜けやすいことから、「焼酎ディスペンサー」であらかじめ冷えたチューハイを作っておくことを決めたのだという。次にこだわったのが、チューハイに使う素材だ。ベースとなる焼酎「純」のアルコール度数は、飲み応えがあり、割ってもお酒の風味が薄れない35度。ナチュラルなレモンテイストを足すためのレモンシロップは、あらゆるメーカーのものを取り寄せ、最も相性が良かった製品を選定。連日連夜におよぶ試飲の末に、これらを混ぜ合わせる黄金比を見つけ出したのだ。

ヨネヤのこだわりは、素材の質や分量だけにとどまらず、グラスに入れる氷の数にまでおよんだ。氷の数を少なめの60ml(約3個)にしたのは、酒好きの常連が多いヨネヤで氷を入れ過ぎると、量が少なく感じ満足感を得られないだろうという想いから。そして、アルコール度数は、氷が溶け出してお客が実際に口にする頃に10度程度になるよう、 ディスペンサーから12度で出るように設定された。

粗めのパン粉を使った食べ応えのある串カツ(1本100円〜)は、隠し味にビールを加え、ふかふかな衣の食感もたまらない。
二度浸けNGの串カツに欠かせないキャベツ。

最後の仕上げとして、グラスを口に近づけた時にレモンの香りがしっかりと立つよう、レモンスライスを浮かべることを決め、ヨネヤ特製のチューハイが完成。高級な焼酎を原料に使用し、こだわり抜いた末に出来上がった、プレミアムなこのチューハイを「純ハイ」と命名したのだった。焼酎の旨味を全面に出した飲み応えのあるチューハイは、現在に至るまでレシピは変わらぬまま。ふかふかな衣が特徴的な、昔ながらの串カツの “相棒” として多くのお客が頼む看板メニューとなったのだ。

笑顔でカウンタ ーに立ち、串カツを揚げる店長。

休日のお昼時。ヨネヤには、小さな子どもを連れたお客の姿もちらほら見られる。その中には、おじいちゃんの代から親子三代で通い詰めているという家族も。お父さんに手を引かれてのれんをくぐる “小さな常連さん” は、この歳にして三代目を就任した生粋のサラブレッドという訳だ。ビール樽を踏み台に、カウンターで一生懸命串カツを頬張る “三代目” 。彼もそう遠くない未来、先代たちが慣れ親しんだ変わらぬ味の「純ハイ」 を嗜むのだろう。

 

 

ヨネヤ 梅田本店
住所/大阪府大阪市北区角田町2-5 ホワイティうめだノースモール
TEL/06-6311-6445
営業/9:00〜22:30
休み/奇数月の第3木曜
http://www.yoneya.osaka/

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buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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