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伊賀土鍋に凝縮されたニッポンの機能美

“呼吸をする土” と称される伊賀の土を使った道具を作り続ける伊賀焼の窯元「長谷園(ながたにえん)」。江戸時代より続く伝統の技術と、それを受け継ぐ心を教えてもらった。

開窯185年、江戸時代からの伝統を今に生かす

創業から1970年代まで稼働していた16連房の旧登り窯。この大きさで現存するのは珍しく、国登録有形文化財に指定されている。

山里の風景が広がる三重県伊賀市。この土地は400万年前、琵琶湖の底にあったという。にわかには信じがたい話だが、実際に当時生息していた生物や植物の遺骸が多く含まれる堆積層「古琵琶湖層」が存在する。そしてこの土を高温で焼成すると、遺骸が燃え尽きて細かな気孔ができる。これが伊賀の土が “呼吸をする土” と称され、土鍋向きである理由だ。こういった直火に適した土は、日本では非常に珍しいものなのだとか。

さらには伊賀地方では薪に最適な赤松の森林が豊かだったことが、伊賀焼の発展をあと押しした。また、奈良時代から始まったと伝わる伊賀焼だが、本格的になったのは茶の湯が盛んだった桃山時代。耐火度の高い伊賀土は高温の登り窯で何日も焼成できた。その間、土の表面には幾重にも降りかかった灰が溶けてガラス状の「自然釉」と呼ばれる景色が生まれる。これが評価され、加えて伊賀国領主であった藤堂高虎らが茶の湯に精通していたことから、伊賀では食にまつわる道具作りが盛んになったと考えられる。

『伊賀焼窯元 長谷園』も、この地で伊賀焼を作り続けてきた窯元の一つである。

石膏型が片隅に置かれているなど、窯元ならではの景色が広がる。
長谷園 代表取締役 長谷康弘氏

「始まりは江戸時代の1832年。伊賀・丸柱の地に長谷源治が初代当主として開窯したと伝え聞いています」と話すのは、その歴史を受け継ぎ、八代目当主を務める長谷康弘氏。代々アイデアマンの当主が続き、茶の湯道具をはじめ、土鍋など、その時代の生活様式に見合う品を作ってきた。外壁に使われるタイル製造が盛んだった時代もある。しかし、長谷氏は言う。

「土・燃料・職人・商人。この四つが成り立ってこそ焼き物の産地なのですが、伊賀は商人が育たず、知名度が低かった」。苦難の時代も経て、長谷園を一躍有名にしたのが「かまどさん」だ。土鍋での炊飯の悩みを解消すべく、4年の月日を費やした逸品である。肉厚に焼かれた本体に、二重構造の蓋。吹きこぼれもなく火加減いらず。伊賀の粗土が呼吸することでご飯がふっくらと炊きあがる。この商品のお陰で「伊賀焼=土鍋」という構図を確立したといっても過言ではない。その流れで、焼き物業界では珍しかったパーツ販売を始めたのも同窯だ。

「小さな産地だからこそできることがあるはず」。長谷氏は静かに、そして強く語った。

年に一度、薪で火が起こされる登り窯。主に茶器や酒器、花器が焼かれる。

伝統技術を生かした今の食卓に映える土鍋

現代のライフスタイルに合う道具を作り続ける原動力とは? 土鍋作りの工程と、今なお受け継がれる歴史を振り返ってみよう。

「焼物の世界で職人というと、ろくろを回している人を想像される方が多いかと思いますが、長谷園では作業に関わっている全員を職人と呼びます」

長谷氏が話す通り、同窯では土鍋を作る工程は細分化され、それぞれ専属の職人が丁寧に仕事を施している。江戸時代から続く技術を受け継ぎながら。

「火にかけるものは、デザインだけ良ければいいというわけではない。江戸時代から作られてきた土鍋を見てみると、それぞれの形に理由がある。機能的な雪平鍋のように、いまでも受け継がれている形もあります」

しかし、ライフスタイルが変化している現代、ただ技術を受け継ぐだけではなく、“今かわいがってもらえるもの” を、伝統技術を使って生み出さなければいけないと長谷氏は考える。それに加えてモットーに掲げているのは “作り手は真の使い手であれ!”。先述の「かまどさん」 然り。燻製を30分で作ることができる「いぶしぎん」、魚焼きグリルで調理する「グリル鍋」といった道具は、使い手目線があったからこそ生まれた逸品だ。

伊賀土鍋の生産工程を拝見

1.粘土状にした伊賀の土を石膏型で成形する

粘土状にした土を石膏型で成形する。1時間半ほど置くことで石膏が粘土の水分を吸水し、型から外しやすくなる。土は、400万年前の古琵琶湖層が今も残る、伊賀の島ヶ原地域で採られたものを使用している。

2.石膏型から固まった土鍋を外してきれいに整える。

固まった土鍋を石膏型から取り出した後、鍋のふちなどをきれいに整えて、土鍋本体の基礎ができあがる。型を使うことで同じサイズの土鍋を早く量産することが可能になったが、それでも1日約200個が限度。

3.底面の粗い素地を起こす「削り出し」

底面をカンナで削って粗い素地を起こす「削り出し」の工程。こうすることで形を整えるとともに、鍋底の火に当たる表面積の凹凸を出し、熱効率を上げることができる。粗土を用いる伊賀土鍋にとって重要な工程である。

4.土鍋の持ち手を取り付ける「耳付け」作業

水でのばした土を糊にして、「耳」と呼ばれる土鍋の持ち手を付ける。土の管理が大変な工程で、乾燥度合いがアンバランスだと亀裂が入ってしまうことも。出荷の可否に関わるため、細心の注意が必要だ。

5.次の工程まで1週間ほど乾燥させる

ここまでの工程でできあがった土鍋を積み上げ、約1週間かけてゆっくりと乾燥させる。乾燥させるスペースは焼成窯の上階にあるため、夏場はかなりの熱気になり、職人を疲弊させる作業でもある。

6.美しく整えられ釉薬・素焼きの作業へ

次の工程へ向け、美しく整えられた土鍋。長谷園では土鍋の種類によって成形の仕方や厚さを微妙に変えており、 それぞれが持つ機能をフルに発揮するよう設計されている。

7.素焼きを経た後、釉をかける

乾燥した土鍋を窯に詰めて素焼き(下焼き)する。その後、土鍋に手作業で釉(うわぐすり)を施す。釉は濃度を厳密に測って調合したもので、チェックしながら仕上げていく。この時、品によっては絵付け作業が入る場合も。

8.本焼きに入る前にしっかりと「窯組み」

本焼きに備えた作業。均一に焼けるよう、窯の上から下まで隙間なく土鍋を詰め、窯組みをする。「かまどさん」の場合は、重ねて積み上げるなど、焼き上げる土鍋の種類によって、積み上げ方は異なる。

9.1250°Cに及ぶ高温のガス窯で本焼きする

丸2日は必要とする本焼きの作業。窯組みをした土鍋を約1250°Cのガス窯で20時間以上焼成する。そのまま窯の中で20時間以上かけて冷ます。それでも、窯出しをする際の土鍋は、まだホカホカの状態だ。

10.土鍋の完成! 検品・梱包・出荷へ

厳しい検品を通過したもののみ梱包し、出荷される。写真はビストロ蒸し鍋1万2960円。陶製すのこが付属され、蒸す・煮込む・焼くなど土鍋一つで多機能に使える。カラーはアメ(写真)のほかクロもある。

長谷園の伝統を鍋でたどってみる

江戸時代末期より窯元を営み続け、時代の流れと共に様々な変遷をたどってきた「長谷園」。 その作風にも、時代背景が投影されており、その様は伊賀本店の敷地内にある資料館で垣間見ることができる。

江戸時代

美しい茶道具をはじめ庶民向けの民具も生産
茶道向けの美しい茶器を作る一方で、庶民向 けの焙烙(ほうろく)などの民具も生産。釉 薬をかけない素朴な作風のものも見られた。

明治時代

現代も受け継がれている機能的な雪平鍋
取っ手、注口が付いた雪平鍋。美しい水色は、明治・大正時代に使われていた土の層だからこそ出せた色合いだとか。

大正時代

料亭で愛された 一人膳用の小さな土鍋
「料亭に可愛いがってもらった時代」という大正時代は、一人膳の小さな土鍋が見られた。現代でも使いたくなるモダンな形状だ。

戦時中

鉄の代用品として伊賀焼の羽釜が重宝する
鉄が不足した戦時中。日用品である羽釜さえも供出されてしまった頃は、その代用品として伊賀焼の羽釜が重宝された。

昭和時代

旧登り窯で焼成された洒落た模様の土鍋
1970年代まで稼働していた旧登り窯で焼成。柄物が流行ったようで、白に藍色の模様を施すなど、絵付けされた土鍋が多く見られた。

平成

ベストセラー商品「かまどさん」が発売
完成までに約4年を費やし、「かまどさん」が2000年に発売。それまでに1000個以上の土鍋を作り続け、ご飯も炊き続けたのだとか。

窯元に教わった、伊賀土鍋の正しい使い方

当然ながら、土鍋というのはいつかは割れる運命。しかし、手入れを怠らなければ永く使い続けることができ、一生ものの道具にもなりうる。ポイントは新しい土鍋を使い始める前のひと手間 “目止め”。難しいことではない。ただ粥を炊くだけだ。そうすることによって、でんぷん質が細かい気泡を埋めて水漏れを防ぐ効果をもたらすという。

「普段からシメの雑炊を楽しまれている家庭は、自然と土鍋が丈夫になっていきますよ」と教えてくれたのは、八代目夫人・長谷圭未(たまみ)さん。大切に使い込むうちに、土鍋が育っていくという。また、「食卓を囲んで楽しんでほしい」という思いから、窯元ではホームページや説明書でレシピ提案をする。最後にレシピを紹介する「春野菜の蒸し鍋」も、食卓で食べる分だけ少しずつ蒸すのがおすすめだ。

「事前に土鍋を洗っておいていただければ、目止め後のお粥は食べていただけますよ」と圭未さん。

「冷蔵庫の残り野菜でも、シャキシャキジューシーに生まれ変わります」と圭未さんが言う通り、いつもの野菜が甘みが十分に引き出されて別物に。調味料は塩だけで十分で、酒のアテにもなる。吹き出す蒸気を眺めての晩酌。この上ない幸せな時間を土鍋が与えてくれる。

使用前

使用前にお粥を炊いて “目止め” する
乾燥させた土鍋に8分目の水と、茶碗1杯程度の残りご飯を入れる。軽く混ぜながら吹きこぼれないよう弱火でゆっくりと炊きこんでいく。お粥が炊き上がったら火を止め、1時間以上放置。お粥を除き、土鍋を水洗いする。

使い方

熱した土鍋は、付属の道具などで扱う
蓄熱効果が高い土鍋。取っ手や蓋を触る場合は鍋つかみの使用がおすすめ。また、今回使用したビストロ蒸し鍋にはトング付きで、陶製すのこを上げ下げする際に便利。万が一、ふたなどが割れた場合は、パーツ販売も対応。

洗い方

よく冷ましてから、中性洗剤を使って洗う
使い終わった土鍋は、やわらかい素材のシュロたわしかスポンジを使い、中性洗剤でやさしく汚れを落とそう。その際、急冷すると割れる恐れがあるので、土鍋はよく冷ましてから洗うことをおすすめする。

お手入れ

風通しの良いところで裏底を乾燥させる
裏底に水気が残っているとひび割れの原因に。洗った後は水を含みやすい底面を上にして、風通しの良いところで十分に乾燥させる。万が一、土鍋に臭いが付いた時は茶殻をひとつかみ入れて10分ほど煮立てると良い。

春野菜の蒸し鍋

使いこなしの参考に、窯元おすすめのレシピを紹介しよう。「ビストロ蒸し鍋」の陶製すのこを使った春のレシピだ。伊賀土の遠赤外線効果と勢いのある蒸気が短時間で食材を蒸し上げるので、野菜の旨みをぎゅっと凝縮。 食卓を囲みながら春の味を満喫しよう。

材料(2人分)

好みの野菜や魚介類・肉類……各適宜 (写真は菜の花、春キャベツ、アス パラガス、スナップエンドウ、ズッ
キーニ、ミニトマト、むきエビ)
水または湯……500ml
白ワイン……100ml
塩、オリーブオイル、ディップなど好みの調味料
※この料理には「ビストロ蒸し鍋(大1万2960円)」を使用

作り方

1 ビストロ蒸し鍋に水または湯を入れ、白ワインを加える。

2 本体に陶製すのことふたをセットして加熱する。

3 ふたの穴から勢いよく蒸気が出るまで、中強火で十分に沸騰させる。

4 ふたを開け、陶製すのこの上に食材を入れる。再びふたをし、ふたの穴から勢いよく蒸気が出てから1〜3分で出来上がり。好みの調味料を添える。
※ズッキーニやアスパラガスなど時間がかかるものは最初から、トマトや菜の花などは残りの1分で蒸すなど、時間差で入れると素材の持ち味を生かすことができる。
※一度に食材を入れ過ぎず、食べる分ずつ蒸すと食感が楽しめる。

【ポイント】白ワインを加えて香りを楽しむ

蒸し水に白ワインを入れると、香りが立って変化が楽しめる。残った蒸し水には、ご飯を入れてリゾットにするのもおすすめ。

長谷園(ながたにえん)
住所/三重県伊賀市丸柱569
TEL/70120-529-500
営業/9:00〜17:00(展示施設)
休み/お盆、年末年始
http://www.igamono.co.jp/

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buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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