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【発酵】北陸が生んだ知られざる美味「ふぐの子のぬか漬け」

石川県を代表する魚介類の発酵食品といえば、「ふぐの子のぬか漬け」だ。科学的裏付けこそないものの、伝統的な製法によって無毒化がなされている。その味わいと食べ方、食文化としての歴史、昔ながらの製造工程について紹介する。

猛毒のふぐの子(卵巣)が、伝統の味に変身!

ふぐの子のぬか漬けのお茶漬け。ふくよかな香りと旨みを味わいたい。

ふわりと鼻をかすめるぬかの香り。噛むとプチプチと弾け、ふくよかな旨みが口の中いっぱいに広がる。古くから発酵文化が根付く北陸。日持ちする魚介類の発酵食品は、冬場の貴重なたんぱく源として長く食べ継がれてきた。その中でも禁断の味として名高いのが、石川県の「ふぐの子(卵巣)のぬか漬け」だ。

手取川の伏流水を用いてふぐの子(卵巣)を洗う。

原料となるのは、能登半島の沖合で獲れたごまふぐ。卵巣は毒性が強いため、伝統的な加工法によって時間をかけて無毒化する必要がある。木樽の中で発酵したふぐの子は、黄金色に変化して現れる。そのままを軽く炙るだけでも十分おいしいが、お茶漬けに載せても良し、パスタに和えても良し。お酒のあてに、ご飯のお供に、さまざまな味わい方が楽しめる。

組織で守り続けてきた日本唯一の伝統

一つひとつに米ぬかをまぶし、米麹とともに木樽の中に隙間なく並べる。

石川県において、魚のぬか漬けはいつから食されているのだろうか。

1727年(享保12年)の租税覚書には、加賀藩にふぐの身のぬか漬けを献上したという記録がある。少なくとも江戸時代から食べられていたことは確かなようだ。この食文化の歴史は、過去に途絶えてしまう可能性もあった。

1970年代半ば、県がふぐの卵巣の廃棄を必須とする条例の制定に乗り出したことがあった。製造加工業者はこの動きに大反発。1977年に提出された陳情書には「我々加工業者を破局に追いやらんとはまったく無謀な条例」との記述が確認できる。

スタッフたちが手際良く仕込み作業をしていく。

その後、地元業者は1980年に社団法人ふぐ加工協会を設立し、地場産業の保護に尽力。結果、1983年には厚生省(現厚生労働省)が特例として石川県におけるふぐの卵巣の加工販売を認めることとなった。

また、2006年には「石川県ふぐの処理等の規制に関する条例」が制定され、現在はより安全な形でふぐの卵巣の取り扱いが行われている。

手間と時間をかけて食べられるように

漬け込んだ木桶は静かに時を重ね、発酵していく。小屋にも木樽にも発酵菌が棲みつくのだとか。

現在、県内でふぐの子のぬか漬けを製造している加工業者は8軒のみ。そのうち6軒は白山市美川地区に集中している。

今回は、天保元年(1830年)創業の『あら与』を取材し、仕込み方を解説してもらった。

「創業時から製造工程はほぼ変わっていません」。そう語るのは、7代目の荒木敏明さん。身から切り離された卵巣は、手取川の伏流水でよく洗ってから塩蔵する。その期間は約1年。

あら与7代目の荒木敏明さん。やさしい眼差しで発酵を見続けてきた。

塩漬けが終わったら、ぬか、麹とともに木樽で2年ほど漬け込む。ポイントは、差し汁としてイワシの魚醤を使い、味わいをより豊かにすること。科学的なメカニズムこそ解明されていないものの、この過程で確実に無毒化されるという。安全性を確保するため、決められた検査期間の毒性検査を経てから出荷・販売している。

北陸の風土と微生物の力によって完成するふぐの子のぬか漬け。ぜひ一度試してほしい一品だ。

 

■DATA

あら与
本店石川県白山市美川北町ル61番地
営業時間:平日9:00〜18:00、日曜・祝日10:00〜18:00
定休日:水曜日
TEL.076-278-3370
https://arayo.co.jp/

⽇本⾷の未来地図をデザインするために、発酵醸造に特化したシンポジウム。「Fermentation Future Forum(F3)」が2022年再始動します。
http://fermentationfutureforum.org/

当記事に掲載されている情報は、2017年にスタートした「F3|発酵醸造未来
フォーラム」の活動で取材された当時のものです。

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buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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