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超高級な音を聞かせてもらって考える、感覚性能沼の話【Spectra X】

誰もがスマホで音を聞くようになってから、ずいぶんと安っぽい音に慣らされてしまったものである。CDの方が音はデータ量は多かったし、アナログレコード×高級オーディオの方がさらに音は良かったはずだ。

フォーカルポイントが新しく発売する、DACアンプ『Spectra X』の体験会で、『高級な音』を聞かせていただいて、そんなことを感じた。

ちなみに、『Spectra X』は、クラウドファンディングで出資を募って製品化するそうで、詳しくはこちら(https://greenfunding.jp/focal/projects/2907)を。パソコンやスマホに接続して、デジタルデータをアナログに変換するコンバーターだが、高品位なハイレゾ音源を扱える。

あなたは『高級な音』を感じられるか?

しかし、そもそもオーディオマニアでもない私が、『高級な音』というのを分かるかどうかである(笑)

果たして、発表会会場ではオーディオ雑誌やオーディオ評論家の方々が難しい話をされている。曰く『●KHz/●bitの音が云々』、『スケールが雄大で、切れ味がシャープ云々』。そういった方々と横に並んで音を聞いて、フォーカルポイントの広報さんに「いかがでしたか?」とコメントを求められるワケだが、はっきり言ってよく分からない(汗)

「ああ……場違いな場所に来てしまったなぁ……」と、脂汗が滲む。つらい(笑)。

取材をしていると時折こんな破目に陥るのだが、記者人生も長いので、なんとか逃げ出さずにやりくりしてする(笑)

誰でも『人間の感性』は、すごいのである

元々僕はバイク雑誌出身で、大排気量車だろうが、外車だろうが、高級車だろうが試乗してインプレッションを書いていた。そのバイクレビュアーの師匠が感覚性能についてこう語っていた。「人間の感性はすごくて、ベテランだろうが、アマチュアだろうが感じていることは感じているんだよ。ただ、それを経験として言語化できるかは別。普通は、ただ『怖い、不安』とか、『乗りやすい』とかしか表現できない。これを言語化できると、記憶に残せたり、人に伝えられたり、分析したりできるようになる」と言っていた。

その頃、僕らはバイクのタイヤの試乗記事なんかも書いていて、ただ黒くて丸いだけのタイヤについて(笑)何ページも(原稿用紙でいえば10枚も20枚も)書くことができた。

ちょっとバイクを軽く傾けた時に軽快に曲がるか? 粘る感じか? 前輪のステアするレスポンスはどうか? もうちょっと深く寝かせて曲がっていく感じはどうか? 攻めて走った時の滑り出しは? スルスルと早くから滑り出す感じか、ズルズルと粘る感じが、グッと粘って限界が来たら一気に滑る感じか……そういう感覚的なテストと、内部のカーカスの繊維やゴムがどういう性質を持ってるのか? レーヨンだからしなやかなのか? スチールだからグッと粘る感じのか? というリクツの部分を組み合わせていく。そうやって記事を書く。

その後、いろんな雑誌を作って来たが、ラジコン飛行機だろうが、熱帯魚だろうが、カメラのレンズの話であろうが、自分の感覚を正直に受け止め、ちゃんとロジックと組み合わせていく作業は同じだった。

良い方から聞くと、悪い方の欠点は見える

そのリクツでいえば、音のことも感じられることは、感じられるはずである。

ちなみに、聞き較べるのはCDレベルのもの(これだって、iTunesなどダウンロード販売のものよりは相当データ量が多いで、高音質なハズだ)と、リニアPCM 192KHz/24bit(たぶん、これが一般的なハイレゾ)、それにDXD 384KHz/32bitのものと、DSD11.2MHzというもの……最後の2者は、ものすごいこだわりをもって録音、変換された至上の音源なのだそうである。

試用するヘッドフォンも何十万もするような超々高級ヘッドフォンを数多く出しているULTRASONEのヘッドフォン。

CDの音から聞きはじめる……なんだ。十分にいい音じゃん。何の文句もないよ。

そして、段々に高級な方を聞いてみる。無音なところがちゃんと無音で、こもった感じがしなくてクリア。弦楽器の震える様子が見えるように小さな弦を弾く直前に、指を滑らせるような音も聞こえる。目をつぶると、音がどっちの方にあるか分かる。

高級な方を聞いてから、安い音源を聞くと、違いは明らかだ。

CDの音源では、あったはずの音がなくなっているし、天井の高い広い部屋で聞いていたような感覚がないし、すごく篭ったボンヤリとした音になっている。

なるほど、京都の呉服屋の丁稚奉公が、最初はあえて超高級な反物を扱わされる……という話に通じるものがある。安物をいくら触っても、高級はものの良さは分からないが、高級なものに触れると、安物の欠点はよく分かる。まったくその通り。

1本100万円もするような高級なサスペンションのバイクのしっとりしたグリップを味わったあとに、バイク自体が4〜50万円で買えるような安いバイクに乗ると、サスペンションをほぼスプリングが支えてて、複雑な油圧のダンピング機構が機能していないことは良くわかる。

それは、知らなければ気付かなかった世界を知ってしまうことでもある。

iTunesの曲の、100倍のデータサイズ!

というわけで、普段、iPhoneで聞いている音が(あるレベルで言うと)まったく貧相なものであることに気がついてしまった。

ちなみに、気になって聞いてみると、このSpectra Xが2〜3万円、ヘッドフォンが5万円ぐらいのシロモノということである。7万円でこの音が手に入るのならアリだなぁと思う。

もうひとつ問題があって、iTunesで扱っているMPEG-4が10MB前後だが、先ほどのCD音源が約50MB、192KHzのが約350MB、384KHzのとDSDが約1GB。つまりiTunesのデータのそれぞれ、5倍、35倍、100倍……のデータストレージを必要とするということである。

128GBモデルのiPhoneを買っても100曲入れたらいっぱい。アルバム10枚も入らない(笑)秋ローンチのiOS 13を入れて、外付けSSDを付けて曲を聞くたびにデータを出し入れするか……なんか昔のジュークボックスがレコードを出し入れしていたような話である。

良いモノを味わうと知らなかった時には戻れない。それを人は『沼』という

ともあれ、感じられるようになると感覚性能の世界は楽しい。

オーディオなら「音源の定位がいいよね」であり、バイクなら「しっとりとしたサスペンション」であり、ラジコングライダーなら「切れのいいターン」であり、海水魚飼育なら「キラキラした水であり」、カメラのレンズなら「自然なボケ味」である。

もしかしたら、ワインの「干し草の薫り」とか「濡れた子犬の匂い」とか、「深い森の奥に佇む泉に舞うつがいの蝶」(これは違うか)とかいうのもそういうものなのかもしれない。

そこには確かに上質なものがあるし、それを言語化し、味わうのは非常に豊かな時間だと思う。それならお金をいくら出しても惜しくない……かもしれない。少なくとも安い音、安いレンズには戻れなくなる。

それを人は『沼』というわけだが(笑)

●フォーカルポイント Spectra X
https://greenfunding.jp/focal/projects/2907
●ULTRASONE Signeture DXP
http://ultrasone.jp/products/signature-dxp/
●ONKYO Ultra Art Record
http://ultra-art.jp/

(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2019年7月号 Vol.93』

(村上タクタ)

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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