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MacBook必携で、Slackで交流、G Suiteでプレゼン。N高がリアル社会で役立ちそう!

N高のモダンな教育、レベルの高さに驚いた

『N高』ご存じだろうか?

学校法人角川ドワンゴ学園が始めた『N高等学校』という通信制の高校で、ネットを使った新しい時代の学校を目指しているということぐらいは報道でご存じの方が多いと思う。

機会があって、そのN高の通学コースの授業、代々木キャンパスで行われた『プロジェクトN』の6〜7月のテーマである『ICTサービスで身体的なハンディキャップを抱える人々を支援するアプリの立案・提案』という課題の発表会を見学にうかがった。

実際に足を運んで驚いたのは、授業に参加する生徒のレベルの高さと、活気、ICTデバイス・サービスの使いこなし。設備も良いように思えた。

彼らが使うのは入学時に購入を指定されるアップルのMacBookシリーズ。学内の連絡にはSlackを使い、G Suiteや、Adobeのクリエイティブクラウドなどが使えるという。古いWindowsパソコンがあって、ITをよく知らない先生がWordの使い方を教える公立高校などより、現実のモダンなオトナが使っている環境にずっと近い環境で勉強ができている。

筆者もドワンゴがN高というネットを使った通信制の高校を始めていたことは知っていたが、VRゴーグルを使った入学式を見て、ちょっと奇をてらった通信教育? ぐらいにしか思っていなかった。

1万人の通信教育、13教室に1500人が通学

しかし、N高は4年目に入って1万人もの生徒を抱えており、通学コースは全国13の教室で1500人もの生徒が通っているという。そんな規模になっているとは知らなかった。

必須の授業は映像学習を使ってこなし、その不明点をキャンパスで解決。ひとりひとりがやりたいことを見つけるプロジェクト型学習『Nプロジェクト』では、生徒自らが課題を見つけ、探求する。大学受験に特化した大学受験講座ではプロの講師が大学受験に特化した授業を提供、プログラミングコースでは、ドワンゴのトップエンジニアによる授業を受けられるし、英語や中国語の専門講座もある。

なんか、これはもう現在の学校教育が、時代の変化に追付けていない部分をカバーした進化した学校に思えてくる……が、僕らが取材させていただいたのは、1500人の通学コースのTop of Topかもしれないので、全貌が見えているわけではない。少なくとも、我々が取材させていただいたクラスでは、Googleスライドを使いこなし、見事なプレゼンテーションと、活発な議論を行える生徒たちがいた。本当に驚いた。

今回の授業は、Zoomで心斎橋、名古屋、千葉、京都など、11の教室を繋いで行われており、それが普通に行えるというだけで、現代の社会人としてレベルの高いスキルをひとつ身に着けているといえるのではないだろうか?

今回のテーマは、前述した通り『ICTサービスで身体的なハンディキャップを抱える人々を支援するアプリの立案・提案』。

実際にサービスを稼働させたり、アプリを作ったりする必要はないが、実際に身体が不自由な方に話を聞いたり、マーケットリサーチを行って、どういうサービスが必要とされているかを調査し、どんなサービスを作るべきかを考えて、プレゼンする。事前に審査があって、その後先に進む許可を得たチームだけが今回プレゼンを行っているとのことだ。

実際に課題に向き合う吉藤オリィさんが審査

また、今回にイベントでは審査員として人型分身コミュニケーションロボット『OriHime』を開発し、オリィ研究所を主催する吉藤オリィさんが審査員として参課した。OriHimeは実際に身体に不自由な人が、家を出ずにコミュニケーションをするために使われているという。

 

生徒の行ったユニークで、しっかりしたプレゼン

実際にプレゼンテーションされたもんをいくつかご紹介しよう。

たとえば、視覚障害者の方は、どんな課題をお持ちか考えたチーム。

日常生活の不自由はもちろんだが、テレビ、映画、ゲーム、読書など、娯楽は案外と視覚を使うものが多く、楽しみが少ないことが課題だったという。

また、メッセージ、メールなども行えないので、コミュニケーションを取る機会が減ったという。

それを解決するために、目の不自由な人が楽しめる、脱出ゲームを考えたという。障害物や出口に近づくと、それを表すBGMが鳴り、それを頼りに出口を目指すという。ゲーム画面を消した状態で行えば、健常者の人も視覚に障害がある人も対等に楽しめるゲームになるはずだ。

彼らはMacBookを開き、時にメモを取りながら発表を聞いている。

また、たいくつで辛く継続が難しい、筋電位バンドを使った義肢の操作のトレーニングを、いつでもどこでも行えるアプリの提案もあった。

障がい者の方が、就職活動を行うための、就職活動アプリもあった。なかなか、一般の方のように就職活動ができないという話を聞いたからだという。

 

使われるのはMacBookシリーズ

ちなみに、生徒の方が利用しているMacBookシリーズは、一定のスペックを満たしてさえいれば自由に選択して購入すればいいのだという。

今回の発表は2〜3年の生徒が多く、2〜3年前に購入したモデルが多いせいか旧MacBook Air(非Retina)とMacBookを使っている生徒が多かった。プログラミングや音楽、映像編集を行うために性能が必要だと判断した生徒はMacBook Proを使っていた。

生徒の発表は吉藤オリィさんの作ったOriHimeを通して、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病患者のMASA(武藤将胤)さんも、生徒の発表を見て、コメントを提供した。

実際に身体の不自由な方の目線でのコメントが聞けて、生徒の側もおおいに参考になっていたようだった。

 

現実に不登校の生徒をカバーするなら、素晴らしい教育

筆者も2児の父であるが、子供たちの友達の中からもちょっとしたキッカケで不登校になる子がいる話をよく聞く。感覚値でいえば、一クラスに2人か3人はいるのではないだろうか? 小さい頃に、普通に一緒に遊んでいた友達がちょっとしたきっかけで学校に通えなくなるのはなんとも辛い。通信教育もそうだが、もっと多彩な教育のカタチがあってもいいと思う。

テクノロジーを使って、それが解決されるのなら、解決した方がいい。

Googleスライドを使って積極的にプレゼンし、その間もSlackで遠隔地の会場の生徒たちと感想をやりとりしている彼らを見ていると、今の生徒たちの可能性を縛っているのは、学校教育なのではないかと思えてくる。

もちろん、一般の学校でも良い先生はいっぱいいて、良い授業もいっぱいあるのだろうけれど、N高のようなスタイルの学校も本当に必要だと感じた。

また、先生が使命感に燃えて、行き行きとされているのにも驚いた。一般の学校で、制度に縛られ、思い通りの教育、ICTの活用ができず、忸怩たる思いに苦しんでいる先生の話をよく聞く。N高の存在は、ある意味そういう先生たちの向かうべき場所を指し示しているのかもしれないとも思った。

 

もう、実際に社会で活躍する生徒も

今回プレゼンを行った生徒の中から、イースターウッド海歌さん(左)と、田邊快哉さんに話をうかがった。

イースターウッドさんはお父さんもMac好きということで、子供の頃からMacを使っていたとのこと。興味のあることがコロコロと変わるので、どんなことにでも対応できるようにとMacBook Proを選んだという。今後はコミュニケーションを学びにアメリカの大学に進学を希望しているという。

田邊さんは自宅ではiMacを使って映像製作を行っており、モバイル環境でも自由に映像製作が行えるようにMacBook Proを使っているという。すでにインターンとして大手レコード会社でも働いており、フリーの映像ディレクターとしても活躍しているという。

ふたりはMacに詳しく、学内でも友達に使い方を聞かれることが多いという。デバイスがMacに統一されているため、アドバイスもしやすいとのこと。

生徒間でよく使われるのがAirDropで撮った写真はもちろん、作ったプレゼン資料を渡したり、課題のドキュメントを渡したりと、非常に頻繁に使われているという。iPhoneを使っている生徒も多く、そういう意味でも非常によく使われているそうだ。

今回の取材で見られた側面がすべてだとは思えないが、受験戦争の激化、英語教育、プログラミング教育の遅れなど、一般的な高校の抱える課題も多い。N高が成功している側面があるのなら、こういう学校をもっと増やすべきだし、一般の高校も学ぶべきことは多いだろう。

(出典:『flick! digital (フリック!デジタル) 2019年8月号 Vol.94』

(村上タクタ)

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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