アップルのゲームサブスクArcadeを体験。ゲーム機を買いたくない親の良い選択
- 2019年11月08日
ようこそ、ガチャや追加課金のない世界へ!
3月のApple Eventで発表されたアップル謹製のゲーム・サブスクリプション、Apple Arcadeが始まった。
Apple Arcadeは、月額600円の定額で遊び放題。家族6人までのすべてのアップル製デバイス……iPhone、iPad、Mac、Apple TVで遊べて、それぞれスコアなどの共有できる。広告もないし、追加の課金もない。
中毒性が最適化されすぎていないゲーム
実は、筆者の家では、子供たちにゲーム機を買い与えなかった(もう高校・大学なので子育ても終わりに近いので、昔話だが)。DSも、Wiiも、PSPも、PS4も。もちろん、本記事でゲームがお好きな方の趣味を批判する気はまったくないし、他のご家族のご事情に立ち入ろうという気は毛頭ない。
ただ、我が家ではゲームをする時間を、一緒に絵を描いたリ、本を読んだり、レゴで遊んだり、砂場で遊んだり、木に登ったり、竹馬をしたり、コマを回したりすることに費やしたかったのだ。そして、その通りにした。
自分だって、ゲームは嫌いではない。ただ、ハマり過ぎるから避けてる。
昔、X1 turboでXanaduだってやったし、BASICで潜水艦ゲームのプログラムを入力して遊んだりした。むしろ、ひと一番熱中するする方だ。ただ、熱中するあまり他のことができなくなるからやってない。今のところ他にやりたいこともある。
我が家以外にもそんなご家庭もあるかもしれない。その場合、今後はApple Arcadeがひとつの選択肢になると思う。
現在用意されている約100本のゲームは、アップルらしい知的好奇心をくすぐってくれるものが多く、いずれも美しいグラフィックに彩られている。
定額制だから、いらずらに射幸心をあおるガチャのような仕組みはなく、エロくもないし、暴力的でもない。エスカレートという言葉から遠いゲームが多い。
また、家族でファミリーアカウントを運用しているなら、スクリーンタイムの機能を使って、24〜8時はゲームをしないとか、『ゲームは1日1時間』というような設定もできる(無論、親が仕組みとして一方的に規制するべきではなく、話し合いの上で、子供が自主的に時間をコントールすべきだが、助けにはなる)。特定のアプリを時間制限することはできる。
開発者にとっても、収益性というKPIだけではエスカレートするばかり
とある方が話して下さったのだけど、開発者側にとっても今のゲーム業界は、課金を促進させるためにガチャなどの仕組みをエスカレートする必要があり、広告は過剰にエロくせざるを得ず、ゲームの仕組みとして中毒性の高さが要求されるのだそうだ。収益性をKPIにすれば、そこに最適化されるのは当然だ。
Apple Arcadeにあるアプリは追加課金を追求する必要がないから落ち着いた作りにして、作品性を追求することができるという。細かい利益配分は公開されていないが、定額制だからアップルからあるていどまとまった開発費が提供されるのかもしれない。そうでなかったとしても、比較的開発者が落ち着いて、純粋にエンターテイメントや作品性を考えて開発できるような利益配分が考えられているようだ。
定額制で十分にお金が回るようになったから、あらためて作品性の高いものや、社会的意義の高い映像を作れるようになったNetflixの映像作りに似てる。
もちろん、以前のGame Centerが成功してるのかどうかわからないし、アップルがあまり上手くゲームビジネスを運営できるとも思えないから、この仕組みが今後も上手く行くのかわからないが、現状、良質な、やってみたい、子供たちにもやらせてみてもいいかな……と思えるゲームが集まっていることは確かだ。
月額課金は600円。初月は無料だから、興味のある人は一度試してみてもいいと思う。
Apple Arcade
https://www.apple.com/jp/apple-arcade/
では、ここからは、体験してみたいくつかのゲームについてご紹介しよう。
Spek
https://apps.apple.com/jp/app/spek/id1378064826
我が家が一番ハマりそうなのがこのゲーム。立体パズルのようなもので、文章で説明するのは難しいが、物体のシルエットのフチを移動していく○丸を、設定された□四角に当てるというゲーム。フリック!で物体を見る向きは回転させられるので、シルエットだけ見て物体の形状を推測するセンスが必要になる。
このゲームの面白いのはARモードがあること。
ARモードでは、実際の空間上に物体が浮いているカタチになるので、デバイスを持ってその架空の物体の周りを回ってパズルを解かねばならない。我が家のリビングでは少し窮屈だったが、それでも身体を動かしてパズルを解くというのは新しい体験で楽しかった。
Takeshi and Hiroshi(11月中に公開)
実は今回一番感激したのがこのゲーム。
取材している間に、目がウルウルしてきて、「何をオレはゲームに泣かされてるんだ……」って思ったほど。
タイトルは、『Takeshi and Hiroshi』実にゲームらしくない(笑)
Takeshiはゲームデザイナーを目指す中学生で、『天才プログラマー』だと豪語するが、実はまだゲームはキャラクタしかできていない。
お兄ちゃん大好きの歳の離れた弟であるhiroshiは、お兄ちゃんのゲームで遊びたがる。そこで、Takeshiは、MacBook ProっぽいパソコンでiPadっぽいタブレットの映像を動かして、ゲームが動いているように操作する。
ちなみに、このクレイアニメ、CGではなく、本当に粘土でコマ撮りして作っているそうである。それもすごい!
プレイ画面はこんな感じ。左の勇者の方をHiroshiが操作しているという設定で、プレイヤーはTakeshiに成り代わって、モンスターを登場させる。
画面にはHroshiの『ドキドキ』と『楽しさ』が表示される。あまり強いモンスターを登場させると、ドキドキは上がるが、楽しさが減ってしまう。うまく怖いモンスターを登場させつつも、Hiroshiが気持ちよく勝てるようにするのがポイントだ。
ちょっとネタバレになってしまうが、シナリオが進むとHiroshiが病気になってしまう。そこでTakeshiは……。う、目から汗が(泣)これより先はプレイしてみて下さいとのこと。
現代のゲームは、無限にプレイさせ、課金してもらうために終わりないシナリオが要求されるのだそうだ。このTakeshi and Hiroshiの作者さんは『ちゃんと、終わる物語』を書きたかったのだそう。これも、Apple Arcadeだからこそ作れたアプリだといえるだろう。
Guildlings(11月中に公開)
『Three』というゲームをご存じだろうか? 一時大流行したパズルゲームである。その『Three』と同じ作者が作った新感覚のRPGがGuildlingsだ。
パーティを作ってフィールドを冒険するアプリなのだが、ご覧のようにご覧のようになかなかユニークな雰囲気。一応敵も出てくるが、戦闘して物語を進めるというよりは、対話して謎解きをするアドベンチャーゲームのような作り。
ご覧のように、チャットアプリのようなUIでかなり自由度のある会話が楽しめそうだ。会話してフィールドを移動して探索を深めるという感じで、世界観を楽しむ冒険ができそうだ。
さよならワイルドハーツ
https://apps.apple.com/jp/app/sayonara-wild-hearts/id1441675161
Arcadeのキラータイトルとして、よく登場するのがこの『さよならワイルドハーツ』。ちょっと不思議な世界観で、バイク、スケボー、馬などに乗ってスピード感のあるライディングを楽しむ。説明書きによると『濃いに敗れ傷ついた少女の心がバラバラに砕けた瞬間、世界のバランスが崩壊する……』ってちょっとよく分からないが(笑)ポップなスピード感のあるオリジナルサウンドトラックをBGMにアクションを楽しむ。
タブレットのフリック!だけだとちょっと操縦しにくかったので、これはコントローラーがあった方が操作しやすいと思う。熟練したら、スピード感のある気持ちいいプレイがクセになりそうだ。
Various day life
https://apps.apple.com/jp/app/various-daylife/id1439754817
なんと、スクエアエニックスからも『Various day life』というRPGが登場。
驚くのは、ご覧のよに緻密で、雰囲気のある世界のグラフィックだ。そして、タイトルの通り、戦闘よりも世界の冒険を楽しむRPG。
文字通り、生活を楽しむという不思議なテイストのRPG。なんでも20以上の職業(ジョブ)と、100以上の仕事があり、プレイヤーキャラクタはさまざまな職業の仲間を集め、仕事をこなしていく。
肉体労働をしたり、頭脳労働をしたりすると、それぞれの能力を鍛えられる。そして、数多くの仕事をこなしていくのだ。
戦う時もそれぞれの職能を活かす。技を使って、敵の状態をCHANGEして、CHAINを溜めてから、CHANCEで大ダメージを与えられるという感じで、給仕の技で水をぶちまけてから、雷撃の技を使うと電気がよく通って大ダメージを与えられるというような具合だ。
ちゃんと冒険には食料やキャンプ道具を持っていかねばならず、テントを張って食事を作れば、ダメージがちゃんと回復できるが、食料がないと疲れは癒えないと、生活感ある。悪天候に遭ったり、長期間持っていると食料が腐敗したりと、『冒険という生活』を体験できる。
D&Dなど、昔のテーブルトークRPGを上手なゲームマスターのもとでやっているような感じで、なかなか楽しそうだ。
深世界into the depth
https://apps.apple.com/jp/app/%E6%B7%B1%E4%B8%96%E6%B5%B7-into-the-depths/id1465048285
自分ひとりが生き残った世界で、水の中の世界を探検し、打開策を探すという不思議な世界観のゲーム。酸素ボンベの空気が刻一刻と減っていく中、深海用のスーツを来て、水の中にどんどんと沈んでいく。独特の浮遊感がユニーク。なんかだんだんと息苦しくなってきて、酸素だまりを発見して酸素を補給できた時の嬉しさといったら……。
ソニックレーシング
SEGAからはソニックのレースゲーム。Apple TVだけでなく、iPadやiPhoneも交えて4人までのマルチプレイでレースゲームが楽しめる。複数の画面が遅延なく動くのが不思議だ。
PAC-man party royale
ナムコからはパックマン。40年近い歴史を持つパックマンは、Apple Arcade版になっても面白い。こちらもマルチプレイが可能。フリック入力だと、タイミング良く角を曲がるのが難しいので、こちらもコントローラがあった方が上手にプレイできるはず。
Frogger in toy town
https://apps.apple.com/jp/app/frogger-in-toy-town/id1464883929
こちらもApple Arcadeのデモでプレイされたゲーム。往年の傑作FroggerをiOSデバイス用にリニューアルしたもの。すべて3Dオブジェクトとして動いており、ミニカーやブロックなどの動く中をピョコピョコ跳ねて冒険していくカエルを応援したくなる。
冒険の舞台は家の中で、あらゆる家の中のオブジェクトが敵になる。ミニカーに轢かれても死ぬし、流し台の水に浸かっても(カエルのクセに)短時間で溺れて死んでしまうので、なかなか難しい。
ちなみにこちらが元のFroggerをそのままiPhoneで動くようにしたもの。
収益性というKPIだけじゃない世界で、どんなゲームが生まれるか?
以上のゲームを触ってみたが、それもゆっくりとプレイしたくなるアプリばかりだった。
今のゲーム文化は素晴らしいものなのだと思うけれども、我々のように少し(30年ほど)遠ざかっていた人間には敷居が高いし、お金的にも、難易度的にも、エスカレートの一途をたどって部外者からは困った世界になっているようにも見える。
特にガチャのような集金システムを良しとするような世界に、子供を立ち入らせたいとは私は思わなかった。このAppleがArcadeに揃えたラインナップはゲーマーの人からすると、「それほど面白そうには見えない」のかもしれないが、ゲーム機を買わなかった家族としては「このぐらいの中毒性ならやってもいいかな」と思う感じではある。
もちろん、ゲームをやりたい子供たちは、友達もやっている話題のタイトルをプレイしたいのだから、Arcadeではどうにもならなにのかもしれないが、「我が家はゲーム機は買わないが、これならプレイしてもいいよ」と、スクリーンタイムで管理しながら許可してみるのも方法論としてアリかも。
今のゲーム業界が収益というKPIをちゃんと追求した結果だとしたら、そうでない世界で、どんなゲームが生まれていくのか見ていきたいと思う。
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(村上タクタ)
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PROFILE
flick! / 編集長
村上 タクタ
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。
デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。