The Creator『ラリー・アリソン』~飽くなきフィンへの探究心を持つフィンノロジスト~
FUNQ
- 2019年05月29日
世界中のサーファーやシェイパーから支持されるフィンマンのラリーアリソン、ハンドフォイルで一つ一つのフィンを仕上げる古き良きメイドインアメリカを牽引している。
フィンマンからフィンノロジストへ
シングルフィン、ツインフィン、トライフィンとサーフボードの目紛るしい進化が起こり、次から次へと斬新でユニークなコンセプトを各地のシェイパー達が創り出したサーフィンムーブメント発祥の地カリフォルニアで育ったラリーは、コンテストで活躍してスポンサーも期待する生粋のカリフォルニアサーファーだった。
そんな彼が惹かれたのは花形のサーフボードシェイパーではなく、それをサポートするフィンだった。サーフボード工場で雑用をしながら、魚や海藻、鳥や飛行機、あらゆるモノのデザインを研究して独自のフィンを創り始めた。サーフボードだけに留まらず、ウインドサーフィン、スタンドアップパドル、それぞれのボードにマッチすフィンは、瞬く間に南カリフォルニアで話題になり、シェイパーにサーファー、誰もが彼のフィンを求めてファクトリーを訪ねて来るようになった。
80年代からフィンマンとして頭角を現したラリーはロスアンジェルスの南にあるガーデナのインダストリアルエリアのファクトリーで様々な機械に囲まれながら、フィンノロジストとしての日々を過ごしている。フィンのアウトラインをプログラミングして積層版をカットする水圧カッターはエンジニアと共に開発したという。より良い効率でフィンを生産させる為に、新たな機械を発明する精神は古き良きメイドインアメリカを継承している。
こだわりが、人を惹きつける
サーフボード、ウエットスーツ、アパレル、フィンの全てがアジアで大量生産される中、ハンドクラフトに拘りを持ち、「微妙なフォイルの違いで水の流れやフレックスが変わるから、仕上げのフォイルだけは30年前と変わらない自分の手の感覚を頼りに仕上げているんだ。」という純粋なクラフトマンとしての姿勢と、その手から生み出される美しいプロダクツが世界中のサーファーやシェイパー達に愛される理由でもあるのだろう。
ラリーはフィンノロジストという言葉を考えて、自身をフィンノロジストと紹介している。日本語ではフィン学者と訳せばいいだろうか。30年以上フィンを研究して創り続け、数多くのプロジェクトを成し遂げて来た彼を表す最高な言葉だ。
創り手のエネルギーがこもったフィンを
ラリーのサーフィン用のフィンの代名詞はフレックスである。絶妙にハンドフォイルと調整された厚みがターンの時に撓りの効いた気持ち良いドライブ、撓りからの跳ね返りによる加速は、硬過ぎず柔らか過ぎない往年の匠だから成せる技術は日本刀の刀鍛冶と同じである。かつカレーや天丼など、週2日は日本食を食べるというラリーの前世は日本の刀鍛冶だったのかもしれない。
長年に渡りフィンを創り続けて来た今も、海にパドルアウトして、新しい発見やインスピレーションを受け、それを試行錯誤しながらフィンの創作に情熱を燃やすフィンノロジストのラリーは、今日もフィンにフォイルを入れていく。
(出典『NALU 2019年4月号 No.112』)
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