【ロングボーダーズ・ムーブメント】JPSA特別戦 オッシュマンズ スタイルマスターズ
FUNQ NALU 編集部
- 2021年11月19日
今、世界のロングボードシーンで同時多発的にあらゆるムーブメントが巻き起こっている。仮にロングボードのスタイルを大きく2分するならば、クラシックとプログレッシブ……いや、はたしてそんな簡単な括りで片付けられるのだろうか? もはやロング乗り達の想像力と行動力は次なる段階へと突き進み、波に乗るというサーフィンの本質を同志らと共に昇華させる域にきている。ロングボーディングならではのスタイルを魅せ合うのか、同じ土俵で戦うことの少なかった2大勢力の競演なのか、ある技にのみこだわり続けるのか、それとも、ボードのスタイルにこだわるのか……。いずれにせよ、それらは視野を広く、もっと大きな世界でロングボードのすばらしさを捉えようというムーブメントに他ならない。そして華麗に波間をダンスするというロングボーディングらしさは不変だ。おそらくはそのアプローチの部分にそれぞれの個性が内包されている。
これらを読み解くカギとして、今回の我々は“コンテスト”に注目した。真のサーファーであればサーフィンを一つのスポーツという括りで片付けることにはいささか違和感を感じずにいられないわけだが、単に滑った転んだでどっちが勝った負けたということを言いたいわけではない。トッププロから一般サーファーのローカルコンテストまで、独自の解釈でロングボーディングを突き詰めようとする彼らのカルチャーは、まさしく今世界で起こる同時多発的ムーブメントの一つなのである。つまるところ、それぞれに明確な答えを見出すことはおそらく難しいだろう。しかし、これから紹介する国内外で昇華された“コンテスト”というカルチャーを読み解いていくと、その先に世界のロングボーダー達の突き進むムーブメントの一端が見えてくるに違いない。
2004年から開催されているシングルフィンログの祭典「JPSA特別戦 オッシュマンズ スタイルマスターズ」。トッププロたちのスタイリッシュなライディングを間近に見られるとあって、例年多くのオーディエンスを集めている。今回は、波、天気ともにパーフェクトなコンディションに恵まれ、シングルフィンログの魅力を存分に感じられる最高のステージとなった2019年の大会を紹介する。
◎出典: NALU(ナルー)no.114_2019年10月号
シングルフィンログの祭典
ロングボードの魅力のひとつといえば、重たいシングルフィンでの優雅なライディング。その魅力を発信しつづけるコンテストが、2010年にスタートした「JPSA特別戦 スタイルマスターズ」だ。これまで湘南や静岡などで開催されたことがあり、2015年以降は毎年5月頃、ロングボードの聖地といわれる千葉・太東ポイントで開かれている。例年太東のあるいすみ市主催の「岬サーフタウンフェスタ」内での同時開催で、今年も会場である太東ビーチパークにはたくさんのブースが出揃い、週末を楽しむ大勢の観覧客で賑わった。
▲会場には多くの飲食ブースも。試合を観覧しながらビーチでの時間を楽しめる
▲試合に出場する傍ら、家族とともにブースを出展していた吉川広夏プロ
「スタイルマスターズ」は年間を通して行われている通常のツアー戦と違い、使用できるボードが、長さ9’4”以上のシングルフィン(オンフィン、またはセンターボックスで、サイドフィン及びサイドフィン用のプラグ付きのボードは不可)のみという独自のレギュレーションを持つ。評価対象となるライディングもクラシックスタイルが中心だ。JPSAが主催のコンテストだけに、見所はなんといっても日本のトッププロによるシングルフィンのライディングが間近に見られること。普段の試合ではハイパフォーマンスボードをアグレッシブに乗るコンペティターたちや、クラシックスタイルのロングボードシーンを引っ張ってきたシングルフィンロガーたちが一堂に会するのだ。
▲使用できるボードは9’4”以上のみ。実際に長さを測り、合格したボードに大会ステッカーを貼る
2010年当時、JPSA理事としてこのシングルフィンのコンテストを発案し、現在同組織の理事長を務める細川哲夫氏は、「スタイルマスターズ」開催の背後にある思いをこう話す。
「普段のコンペティションでは、選手たちがアグレッシブなライディングでハイパフォーマンスなロングボードのレベルをどんどん押し上げていってくれています。一方で、ロングボードには重たいシングルフィンで波に乗る良さというものもありますよね。スタイルマスターズは、そんなクラシックなスタイルを表現できる舞台も用意できたら、という思いで毎年開催しているんです」
▲JPSA理事長・細川哲夫氏。大会当日はMCとしてもコンテストを盛り上げた
▲(右上)太東をホームとする森大騎プロ。普段はパフォーマンス系のライディングが持ち味だが、シングルフィンでもさすがのノーズライドを披露、(右下)決勝をリラックスしたムードで待つファイナリスト、(左下)試合はメンズ・ウィメンズ混合。今回ウィメンズサーファーは3人の選手が出場し、田岡なつみプロがセミファイナルまで進んだ、(左上)クラシックスタイルのボードさばきでロングライドをメイクした吉田泰プロは、決勝で2本の5点台をスコア
クラシックなロングボードの魅力を存分に堪能できる一日
5月中旬に開かれた今年の大会は、腹から胸近いサイズの波に恵まれ、クラシックなロングボードにはまさに絶好のコンディションとなった。出場選手は日本を代表するトップロングボーダー全20人。スタイリッシュなライディングが次々と繰り出されていくなか、印象的だったのは試合という形式でありながら、匕ートを終え海から上がってくる選手たちの顔に笑顔が浮かんでいたこと。年に一度のシングルフィンコンテストを選手たち自身も心から楽しんでいる様子がうかがえた。
▲パフォーマンス、クラシックスタイルともに定評のある秋元祥平プロ。ヒートの最高得点をマークしたが、バックアップを揃えることができず、惜しくも2位となった
▲日本を代表するシングルフィンロガーのひとり、中村清太郎プロ。終始安定したノーズライドを繰り出し観客の目を奪った
▲宮内謙至プロによるダイナミックなピボットターン。どの瞬間を切り取ってもそこにスタイルを見せるいぶし銀のライディング
ファイナルへと駒を進めたのは、かつて6度のグラチャンを獲得した宮内謙至プロ、現役のトップコンペティターで過去に2度このイベントで優勝した経験を持つ秋元祥平プロ、クラシックなノーズライドを信条とし、2012年度に優勝した中村晴太郎プロ、そして記念すべき第1回大会で優勝を飾った吉田泰プロ。このそうそうたる選手たちが同じヒートで戦う姿を見られるというのが、「スタイルマスターズ」ならではの光景だろう。ヒートでは、誰もが巧みなボードコントロールとスタイルのあるノーズライディングの妙技を見せたが、優勝は際どいセクションでソウルアーチ・ハングテンをメイクし、2本の5点台を揃えた吉田泰プロが勝ち取った。世代やスタイルを超え、日本最高峰のトップロガーたちが一堂に会する「スタイルマスターズ」。そこではクラシックなロングボードのスタイルを目の前で堪能することができる。
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FUNQ NALU 編集部
テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。
テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。