
笠置山クライミングエリアでクリーンアップイベントを開催して|筆とまなざし#420

成瀬洋平
- 2025年05月14日
岩場の清掃活動を主軸に、笠置山をまるっと楽しめるイベント
5月11日日曜日に「クライマーも笠置町民も 笠置山clean up & 笠置山の魅力を再発見!」と題して、ひさしぶりに笠置山クライミングエリアでイベントを行なった。
2年前から、東海地方のアウトドア関係者有志で笠置山で清掃活動を行なってきた。クライミングを楽しみながらゴミ拾いをするというもので、イベントというほどのものではなかった。3年目の今年は、笠置山へ登りに来るクライマーやクライミングをしない地元の方にも笠置山の魅力を知ってほしいと、コンテンツを増やして企画。山麓のおにぎり屋さんや特産の柚子製品、近くのパン屋やカフェなどにも出店をお願いし、さらにラ・スポルティバのクライミングシューズを岩場での試し履きも開催。以前から行ないたかったクライミングシューズの試し履き。メーカー担当者がイベントの趣旨に共感してくださり実現することができたのだ。また、地元在住の女性が笠置山の地質に関してのジオツアーを企画してくれ、ぼくはボルダリングとトップロープクライミングの体験会を行なうことにした。清掃を主軸に、参加者の皆さんにまるっと笠置山を楽しんでもらえますように。
とはいえ、昨年までは有志で行なっていたため、どのくらいの人が集まってくれるか皆目見当がつかない。おにぎりやさんは「60個で大丈夫かしら? 余ったら、近所のおじさんに買ってもらおうかな……」と。しかも前日の朝まで雨。岩の乾きの遅い笠置山である。コンディションの悪い岩場に果たして来てくれるかどうか……。
蓋を開けてみれば大盛況。みんなにとってホームエリアになってくれたらと願う
朝、湿気ったボルダーの前で準備をしていると、顔馴染みの友人、初めましての人、集合時間の9時になるとみるみる人だかりができ、蓋を開けてみれば総勢70名近くの方々が集まってくれたのである。朝早くから崩れたボルダーの下地の整備を自主的に行なってくれた人。家族で崩れたアプローチ道を石を退けたり生い茂った草木を刈り取ってくれた人。ゴミを拾いながら宿題だったボルダー課題を完登した人。ノーエッジシューズの試し履きは人が途切れることがなかったし、ジオツアーは2回のところ3回も行なう盛況ぶり。ぼくのクライミング体験会も満員御礼で、とくに子どもたちが楽しそうに登ってくれたことがうれしかった。おにぎりは60個では足りず第二弾を握りに行ってくれて合計109個売れた。パンもカフェのクッキーもイベント開始すぐに完売。ぼくなんかは昼食の当てにしていたおにぎりやパンがなくなってしまったので友人から恵んでもらった「トッポ」で飢えを凌いだ。新緑の笠置山に、コーヒーの香りと共に流れる穏やかな時間。みんなが思い思いに、まるっと笠置山を楽しんでくれたに違いない。
笠置山はぼくにとってホームエリアである。けれど、みんなにとってもホームエリアになってくれたらと願う。ここにやってくるひとり一人にとって大切な場所になれば、岩場はさらに魅力に満ちたすばらしい場所に変わっていけるはずだ。
著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平
1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。
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