笠ヶ岳 登山ルート「北アルプスの秀麗で大らかな山容に魅了される2泊3日の山旅」
PEAKS 編集部
- 2019年10月12日
INDEX
北アルプスのなかでも、特徴的な形で知られる笠ヶ岳。ほかの縦走路からやや外れているため、登山者もそれほど多くない。今回は北アルプス三大急坂と呼ばれる、笠新道を通って山頂に至る二泊三日の登山ルートを紹介。
笠ヶ岳 登山ルートの概要
笠ヶ岳の魅力はたくさんある。他県と接しない岐阜県の山の最高峰であり、また、信仰登山の歴史が古く、1683(天和3)年、独特な仏像を残した円空上人が初登頂、1823(文政6)年と翌年、播隆上人が登頂し、遙拝した槍ヶ岳の開山を決意したとされる。
コース中の山小屋は3軒。
わさび平小屋は1泊2食9,000円、TEL.090-8074-7778。
鏡平山荘は1泊2食10,300円、TEL.090-1566-7559。
わさび平小屋と鏡平山荘の営業期間外はTEL.0577-34-6268。
笠ヶ岳山荘は1泊2食10,500円、TEL.090-7020-5666。
わさび平小屋と笠ヶ岳山荘はテント場あり。
ルートプランと所要時間目安
日程:2泊3日
歩行時間:17時間5分
歩行距離:30km
高低差:1,800m
笠ヶ岳は、双六岳から槍ヶ岳、穂高岳へ連なる北アルプス南部の主稜線からはずれてそびえ、この山だけを目的としても通常、夜行1泊2日を要する。最短コースとして最も多く利用される笠新道は北アルプス三大急登に数えられることもあるが、アルプスの登山道としては歩きやすく、技術的な難易度は高くないので、季節と天候を見定め着実なペースで登れば、とくに心配ない。
新穂高温泉バス停
↓1時間25分
わさび平小屋
↓6時間30分
縦走路分岐
↓1時間10分
笠ヶ岳
↓1時間
縦走路分岐
↓3時間10分
鏡平
↓3時間50分
新穂高温泉バス停
笠ヶ岳 登山ルートの詳細ガイド
玄人好みの味わいがある山
いぶし銀という表現がある。もとは銀の表面の光沢を意図的に曇らせたもので、転じて、渋くて味わいがある人や物を形容するようになった。笠ヶ岳は、まさにいぶし銀の名山といえるだろう。登山を始めたころは、槍ヶ岳や穂高、剱岳のようにダイナミックな岩峰、白馬岳のように大雪渓やお花畑を擁する山々に注意が向きがち。笠ヶ岳の秀麗で大らかな山容、槍・穂高連峰と蒲田川の谷を隔てた孤高のたたずまいなどにひかれるのは、そのあとだろう。
『日本百名山』で、深田久弥はその山容の美しさを第一に挙げながら、ふつうの縦走路から外れているからか「その頂上に立った人は案外少ないようである」と記している。自身の山行時、笠ヶ岳の支脈に入るとほとんど人影がなく、静かな道が続き、蒲田川を隔てて3000mの山並みが、ほかに例のない大自然の壁を創っていたとも。笠ヶ岳に登る最短コースは笠新道の往復だが、深田久弥を魅了した縦走路も歩き、その魅力を満喫したいところだ。
北アルプス指折りの急登をこなして
朝、東京や名古屋などからの出発なら、1日目は、わさび平小屋で宿泊、2日目は笠新道を登って笠ヶ岳山荘、笠ヶ岳山頂へ。3日目に鏡平を経て新穂高温泉へ下山する日程が順当だ。
新穂高温泉でバスを下りたら、登山指導センターと奥飛騨温泉郷総合観光案内所がある建物に向かって左手へ入り蒲田川に沿って上流へ向かう。途中、笠ヶ岳山頂方面や穴毛谷の岩場の展望に期待が膨らむ。笠新道登山口と水場を見送り、10分ほどで、わさび平小屋に到着。翌日は、北アルプス三大急登に数えられる笠新道を踏破して笠ヶ岳までの行程が待っている。早めに就寝して英気を養おう。
2日目は、行程に余裕をもち、涼しいうちに急登をこなせるよう、なるべく早発ちしたいところ。笠ヶ岳山荘に早く着けば、夕立に遭うリスクも避けられる。
笠新道登山口からは、すぐブナなどの落葉広葉樹林に入り、杓子平まで標高差1100mに及ぶ急登が続く。とはいえ、わさび平小屋泊まりで早い時間から登り、あせらず一定のペースを保てば、実働4時間あまりで登りきれるでだろう。標高を記した指導標が随所にあるのも助けとなる。
登っていくと、樹間に焼岳などが眺められ、落葉広葉樹林がシラビソなど亜高山性の常緑針葉樹林に移っていく。林がまばらになり「標高約1920m、 杓子平までの約中間地点」の指導標を過ぎると、展望や花を楽しめるように。
やがて、森林限界を越えると、槍ヶ岳が鋭角的な姿を見せる。ハイマツの斜面をジグザグに登って、枝尾根に出たところが杓子平で、笠ヶ岳の全容を望めるので休憩していこう。
杓子平からは少し尾根を登ったあと、草原とザレの斜面を左へトラバースして登っていく。さらに岩混じりの急斜面を登って尾根に出た先で縦走路に登り着く。笠ヶ岳は縦走路を左へ1時間あまり。ハイマツの尾根を登り下りする縦走路は、正面に端正な笠ヶ岳を眺められ楽しい道だ。右手から後方には黒部五郎岳や薬師岳、左手には槍・穂高岳などのパノラマに目を奪われるだろう。
あたかも門のような抜戸岩を過ぎ、テント場が目に入ってくるようになれば、すぐ上に笠ヶ岳山荘が待っている。山荘付近の槍・穂高連峰などの展望はすばらしく、夕焼けや日の出も楽しめる。天気や時間を見て、笠ヶ岳に登ってみよう。往復30分足らずだ。
登り着く山頂は北峰で、その先の南峰に三角点がある。ともに槍・穂高連峰をはじめ薬師岳、立山、剱岳、鷲羽岳などの北アルプス、御嶽山、白山や中央アルプスなどを見渡せる。
岩峰群を眺めるハイライトの縦走路
最終日のコースタイムは8時間近くのボリューム。しかも絶景の稜線歩きが続くので、余裕をもって楽しむためにも、できるだけ早出したいところだ。
昨日、登ってきた道を戻り、杓子平への登山道を見送って、縦走路を進む。背後に笠ヶ岳を見て、抜戸岳の西面を巻き、槍・穂高連峰の「壁」の絶景が広がる縦走路をたどる。ハイマツと砂礫のなだらかな尾根を進んで、急下降し、秩父岩を見て、槍ヶ岳を目の前に急下降を続けると秩父平に下り着く。
尾根道を登り返して大ノマ岳、弓折岳を越えると弓折分岐に到着。ここで縦走路と別れて東へ下り、小池新道に入りる。眼下に広がる鏡平に着くと、鏡池に槍・穂高岳が姿を映し、池畔に鏡平山荘が建っている。ここもコース中指折りの絶景スポット。鏡平からはダケカンバなどの疎林に入り、浅い谷から斜面をトラバース気味に下りる。途中、秩父沢を渡り、30分ほど急下降すると左俣林道に出合う。林道を20分ほどでわさび平小屋に着いたあとは、初日に歩いた道を新穂高温泉へ戻る。
山を降りたら
新穂高温泉へ下りたら、温泉で汗を流したり、地元の食事を楽しむのもおすすめだ。編集部が愛する食事処&お土産屋さん、温泉、登山口情報を確認しておこう。
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笠ヶ岳 登山ルートへのアクセス
公共交通機関
新宿駅からJR中央本線・大糸線で松本駅へ。ここで松本〜高山・新穂高線のアルピコバス・濃尾バスに乗り換え、新穂高温泉・新穂高ロープウェイへ。名古屋方面からは高山本線高山駅から高山・新穂高線の濃飛バスを利用する。
車
東京からは長野自動車道松本ICで下り、安房トンネル経由、名古屋方面からは東海北陸自動車道飛騨清見ICからアクセス可能。登山適期の週末や連休は新穂高温泉の駐車場が満車になることもある。もちろん路上駐車は厳禁だ。
笠ヶ岳 山データ
山名と標高:笠ヶ岳(かさがたけ)2,897m
登山適期:7月上旬〜10月上旬
営業小屋:わさび平小屋、笠ヶ岳山荘、鏡平山荘
避難小屋:なし
テントサイト:わさび平小屋、笠ヶ岳山荘
水場:笠新道登山口、鏡平、秩父沢
トイレ:わさび平小屋、笠ヶ岳山荘、鏡平山荘
ビューポイント:杓子平、笠ヶ岳山頂、鏡平
笠ヶ岳 登山カレンダー(該当月の1日)
登山を楽しむ皆さんへ
ここに記載している所要時間はあくまでも目安。自分の経験や体力と相談しながら、前日に麓で宿泊したり、山小屋に宿泊するなど、ゆとりある計画を立てよう。また、天候や自分の体調によっては、中止することも検討すること。山はいつまでもそこで待っていてくれる。「家を出てから帰宅までが山登り」ということを忘れずに、存分に山を楽しんでほしい。
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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