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筆とまなざし#156「瑞浪の岩場へ。気になっていたクラックに触れて」

自宅から30分ほどの瑞浪の岩場は昔からクライマーに親しまれてきた場所です。標高の低い里山の南面に位置するため、ぼくにとっても大切な冬の岩場。結晶の粗い花崗岩で、スラブやクラックが多いことでも知られています。

コア中のコアにもかかわらず、賑わう岩場にて

先週土曜日、今シーズン初めての瑞浪クライミングに出かけました。フリークライミングのなかでもコアなクラッククライミング、そのなかでもマニアックなワイドクラック。だというのに、この日は「アームロックききますか」というルートの周辺は総勢15人ほどのクライマーで賑わっていました。そのなかにいたIさんが、近くのクラックを登りませんか?と誘ってくれました。岩の上からスタートし、長さはせいぜい6m程。じつは以前から気になっていたクラックでしたが、苔がすごかったり濡れていたりで触れることはありませんでした。ところが、久しぶりに見ると苔がずいぶんきれいになっていて、詰まっていた土も掻き出されてきれいになっているようです。聞くと、最近トップロープで触っているクライマーがいるのだとか。まだリードで登った人はいないのでは?とのこと。とりあえずトップロープで登ってみることにしました。

最初は初手のハンドジャムがなかなか止まらなかったのですが、硬めのクライミングシューズにしてみると止まり、そのまま甘い溝状のフィストクラック、ボロボロの岩を登って「アームロック」の終了点へ。次にリードして完登しました。短いけれどもなかなかおもしろいルートでした。

翌日の講習会にて。30年の年月に、思いを巡らせて

あとで知ったことですが、このルートはすでに何人かのクライマーに登られているようでした。翌日、講習会の合間にこれまた気になっていたクラックの苔を掃除して登りました。このラインは1987年のクライミング雑誌に掲載されていたことはその夜に知りました。やはり、目をつけるところは時代を経ても同じなのでしょう。クライミングをしていると、そのルートがいつごろだれによって登られたかについて思いを巡らせることがあります。同じクラックをめぐって80年代から30年の年月が交錯し、そこにいまもクライマーの思いが息づいているような気がしました。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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