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「早月小屋」北アルプスの山小屋完全ガイド

登山者にとって快適な山歩きを楽しむための心強い味方、山小屋。館内施設や食事、成り立ちや売店メニューなど、山小屋の膨大な情報を集約しているので、山行計画に役立つこと間違いなし!

北アルプス三大急登の休憩地

剱岳周辺でもっとも外れた場所にある早月小屋は、急登で知られる早月尾根の中腹。登山口の馬場島からは1500mも登った場所にある。

苦労して標高を稼いできた登山者にとって、やっとひと息つけるオアシスのような存在だ。この小屋と併設されたテント場がなければ、馬場島から剱岳山頂までは一気に往復しなければならず、現代の登山者には早月尾根からの登頂は現実的に不可能だろう。じつにありがたい役目を果たしてい るのだ。

基本的な営業期間は夏であるが、この小屋はゴールデンウイークにも、スタッフ在駐時のみという条件付きながら宿泊が可能となっている。それは、国内屈指の難易度で知られる雪の剱岳登山をサポートするためであり、リスクの高い雪の剱岳に挑戦する登山者にとっては、とても心強い存在なのである。

ちなみに、登山口となる馬場島には、富山県警山岳警備隊の派出所がある。年末年始にも常駐している。ご主人の佐伯謙一さんも、この小屋に入る前は山岳警備隊で活躍していた人物。小屋の仕事に余裕がありそうなときを見計らって、ハードでタフな剱岳の話を聞いてみるのもよいだろう。

看板の「伝蔵小屋」ってなに?

早月小屋が建設されたのは、1971年9月。開設した佐伯伝蔵さんの名前から「伝蔵小屋」と命名された。だが経営母体が変わってから、剱岳山頂に至る尾根から「早月」の名をとって、現在の小屋名へとなったという。

小屋も当時のままではなく、現在は総2階の建物に改築されているが、開設当時の思い出が染み付いた看板はいまも健在。小屋の入口の上で、登山者をいまも迎え入れている。

小屋の開設前は営林署に務めていたという伝蔵さんは、昔から名ガイドを生み出してきた地元・芦峅寺の出身。遭難救助活動に加わる機会も多く、早月尾根に小屋があれば遭難が少なくなるのではと考えて、退職後にこの地へ山小屋を設立し、テント場も切り開いた。その結果、この周辺での遭難事故は激減したという。

すでに半世紀近く前のことだが、それでも早月小屋は北アルプスのなかでは比較的歴史が浅い小屋といえるだろう。この地の山岳文化の深さがわかる話だ。

小屋の前には、別々の名前が彫られたふたつの看板があり、一瞬とまどう。だが上のものは、あくまでも建設当時に思いをはせるための記念物。現在の名は、あくまでも早月小屋だ。

食堂に飾られていた伝蔵さんと剱岳の花々の写真。1987年のもので、小屋の名の元となった伝蔵さんの雰囲気が伝わってくる。

館内施設

2階の荷物置き場

階段を登ってすぐの場所。濡れた荷物で部屋が濡れないように、まとめてここへ。このときはブルーシートが敷かれていた。

1階の食堂

調理場と隣接した8畳程度の座敷。宿泊する人は、みんないっしょにここで食事。他の部屋の人と会話するよい機会に。

屋外のトイレ

小屋から少しだけ離れたテント場の脇。コンクリートの頑丈な作りで、臭気がこもらない。

2階の本棚

小説やマンガなどが充実。その前に張られた紙は部屋ごとのふとんの敷き方の説明だ。

入口横の乾燥室

玄関から入ってすぐ右。天気が悪いときは温風が入れられ、ウエアやブーツ類を干せる。

食事

朝食

焼いた鮭に卵焼き、きんぴら、そしてゴハンに味噌汁。味のりもついていて、いかにも「日本の朝ごはん」という雰囲気だ。

夕食

このときの夕食のメインは、ハンガーグカレー。カボチャやコンブの煮物、このほかに、刻んだオクラといった副菜がついていた。

お土産・売店

注目は、銀製のペンダントと錫杖タイタックだ。錫杖とは杖の先に付ける金具で、奈良・平安時代のものが剱岳山頂で発見された逸話に由来する土産。価格の2999円は剱岳の標高だ。

部屋

畳敷きのシンプルな部屋。ふとんは人数分そろえられているので、寝袋などを持参する必要はもちろんない。部屋を広く使うため、バックパックは部屋の外に置いておく決まりだ。

洗面所・トイレ

ここは水が貴重な場所。洗面台には手の雑菌を殺す消毒液が置かれ、手洗いの代わりに使える。

トイレの便器は新しくて清潔。ペーパーは別途、ゴミ箱へ。

テント場

小屋から見ると剱岳山頂方面にあたる広場。それほど広くはないので、早めに到着して場所をキープ。

DATA
設置数:30張
利用料金:700円/人
水場:なし
トイレ:あり
小屋からの時間:目の前

「早月小屋(はやつきごや)」の基本情報

設備

テン場:あり
水場:なし
個室:なし
自炊室:なし
乾燥室:あり
お風呂:なし
生ビール:なし

営業期間

GW期間、7月中旬〜10月中旬

電話・電波

ドコモ:通話困難な場合が多い
au:通話不可
ソフトバンク:通話不可
公衆電話:なし

収容人数

50人

標高

2,200m

宿泊料金

1泊2食:9,000円
素泊まり:6,000円
お弁当:1,000円

連絡先

090-7740-9233
http://www.net3-tv.net/~hayatsuki/

※2018年2月現在の情報です。営業時間や定休日などは変更となる場合がございますので、お出かけ前にご確認ください。

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PROFILE

PEAKS 編集部

PEAKS 編集部

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

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