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筆とまなざし#178「かけがえのないクライミング。再開に向けて、新しいアイテムを」

精神的な安定と、生業として。ぼくにとって大切なフリークライミング。新しいアイテムを手に、再開の準備をしています

岐阜県では新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され、クライミングジムは限定的に営業を再開し、近郊の岩場も利用できるようになりつつあります。ぼくがホームにしている笠置山では「三密でない岩場でのクライミングは自粛対象ですので『新しい生活様式』を踏まえて、引き続き、自覚を持ってクライミングを楽しんでいただくようお願いします」とのことで、訪れるクライマーも少しずつ増えてきました。

けれども、これからしばらく、あるいはもっと長い間、これまでと同じように登るのは難しいでしょう。遠出はもとより、クライミング後のご飯、温泉などを気軽に楽しむのもはばかられ、クライミング中にも、例えばマスク着用、アルコール消毒して登る、極力ギアを共用しないなどさまざまな対策が必要となります。

クライミングスクールはぼくの大切な生業のひとつとなりました。講習会をしなければ収入は少ないし、なにより、クライミングに出かけることを心待ちにしてくれている人たちがいます。本格的に再開しようと準備をしていて、新しいアイテムを手に入れました。

一風変わったヘンテコメガネ。Y&Yというフランスのメーカーのビレイグラスです。クライミングのビレイ(確保)は登っていくクライマーを見上げて行なうのですが、長時間のビレイでは首がとても凝ってしまいます。ビレイグラスは特徴的な鏡によって映像を屈曲させるため、正面を向いたままでも上部が見えるという優れもの。しかし、これがなかなか値の張るもので手が出せずにいました。以前、フランスのセユーズという岩場の近くにある小さなクライミングショップで、手作りっぽいスペイン製のビレイグラスを買ったことがあります。けれど、とても重たくて逆に肩が凝りそうだと、そのままお蔵入りしてしまったのでした。最近は腰も凝るようになってきて、その原因は首にもあるだろうと、思い切って軽量なY&Yのものを買ったというわけです。前評判どおり軽くて違和感のないかけ心地。ポップな水色も元気が出そう。さっそく、次回の講習会から使ってみることにしましょう。

安全なクライミングなんてないけれど、近郊でのフリークライミングはぼくにとって散歩のようなもの。毎日の健康のためにも精神的な安定のためにも生活に彩りを添えるためにも、そして生活の基盤を得るためにもなくてはならない行為です。緊急事態宣言は解除されたものの、この状況は長期に渡って続くでしょう。そのなかでどのようにして登っていくのか。新しい挑戦は、もうすでに始まっています。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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