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筆とまなざし#190「クライミングパンツの修繕を‟ダーニング”で楽しむ」

破けてしまったクライミングパンツを遊び心ある修繕で楽しみました。

岩の下に潜り込んで掃除していると……

「ビシーっ」

お尻に当たっていた岩角でズボンが裂ける音がしました。もう何年も履いているクライミングパンツは生地がヨレヨレになってしまっていたのか、いとも簡単に鍵型に裂けてしまったのでした。

登っていればズボンが破れるのは当たり前。お尻のポケットや股の縫い目の糸がほつれたり鍵穴が開いてしまったり。膝も破れることが多い箇所で、その都度繕って使っています。持っているクライミングパンツのほとんどがどこかを修繕しているものばかりです。

これまでは黒い糸で味気なく繕っていたのですが、最近「ダーニング」というものを知りました。「darning」とは「繕う」という意味の英語で、衣類に空いた穴を糸と針を使って工夫を凝らして補修する、イギリスの伝統修繕技法なのだとか。インターネットで検索するとカラフルな糸を使ってさまざまな模様を作りながら楽しく修繕している写真が出てきます。靴下の穴を六芒星のデザインで塞いだり、縦糸と横糸で色を変えてモザイク模様のようにして修繕したり。せっかくなので、先日空いたズボンの穴も遊びながら繕ってみることにしました。

百円ショップで刺繍糸と刺繍針を購入。いろんな色の糸が1mずつ入っていて、色を選ぶのも楽しいところ。どうしたらきれいに修繕できるかわかりませんが、いちばん簡単そうなので鍵穴を色違いの糸で「×」になるように縫い合わせていくことにしました。まずは黄色の糸で生地を縫い合わせていき、端から端まで縫ったら今度は赤い糸で同じように縫ってみました。刺繍糸は太いので縫うのが楽です。しかし、あまりきつく縫うと生地が寄ってしまうし、緩いと弱くなってしまい、その辺りのさじ加減が難しい。そしてきれいに「×」になるように縫うのもなかなか難しいものです。とても上出来とはいえませんが、とりあえず縫い終わり、まあそれなりに修繕ができました。ついでに、ほつれていたポケットも左は焦げ茶色の糸で、右は水色の糸で縫い合わせてみました。うーん、どうせクライミングのときにしか履かないし、とりあえず良しとしましょう。

「ダーニング」はただ縫うだけではなくてほとんど絵を描くのと同じ行為。難しいですがおもしろい。次はどんなふうに繕ってみよう……これまで仕方なくやっていた服の修繕が楽しみになりました。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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