筆とまなざし#191「冬を越すのがひと苦労な我が家。今年こそ引っ越しを考える」
成瀬洋平
- 2020年09月02日
おもしろいところもあるけれど、冬を越すのがひと苦労な我が家。今年こそ冬が来る前に引っ越しを。
早い田んぼではすでに稲刈りが始まりました。まだまだ日中は厳しい暑さが続くものの、季節はたしかに秋へと移り変わっています。
いま住んでいる家は明治時代に建てられた、築120年ほどの古民家です。隙間だらけで床と柱は平衡感覚を失うほど傾いています。日当たりが悪く、お風呂に難があるので冬を越すのがひと苦労。毎年冬が来る前に引っ越したいと思いつつ、なかなか空き家が見つからないので住み続けているのです。そんな我が家ですが、おもしろいと思うこともあります。
そのひとつが台所の裏手に湧く小さな池に住んでいる赤い金魚。前の住人が飼っていたのか、ぼくが引っ越したときには小さかったものの、いまでは10cmほどに成長しました。ときどき姿が見えなくなるのだけれど久しぶりに生きていることを確認するとほっとします。寒い冬をいっしょに耐え忍んで越える仲間でもあります。
そしてもうひとつが、毎年この時期になると実をつけるキウイフルーツ。家の東斜面に生えた木に蔓を絡ませ、今年もたわわに小ぶりな実をつけました。ちなみに、調べてみると国産キウイの旬は冬から春にかけてらしく、どうしてこの時期に実をつけるのかは不明です。
いつ、だれが植えたのかはわかりません。古民家には柿の木が付きもので、およそキウイなどは似つかわしくないのですが、自由奔放に蔓を蔓延らせているようすを見るとずいぶん前に植えられたのでしょう。収穫してからリンゴといっしょにガラス容器に入れてしばらくおくと黄色味を帯びた果肉が甘酸っぱく美味しくなります。家で果物が収穫できるのはなんとも贅沢な気分で、毎朝のヨーグルトに入れて食べるのが楽しみです。
梅雨が明け、駆け足のようにすぎ去った8月。うかうかしているとあっという間に秋も深まり冬がやってきます。お盆明けに空き家の情報がもらえるはずでしたがまだ連絡がもらえません。今年も金魚といっしょに冬を越すことになるのでしょうか。少し寂しいけれど、それはなんとか避けたいところ。とりあえず、今年もキウイを収穫して空き家探しを続けたいと思います。
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