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テント泊を快眠へと導くスリーピングマットの選び方

テント泊装備の要なのが、快眠を支える寝袋とマットだ。山歩きの疲れから身体を回復させることが、翌日のパフォーマンスを左右するから、自分の登山スタイルに合わせたものを選びたい。そこでスリーピングマットの選び方をさかいやスポーツの松本知雄さんに教えていただいた。

文◉編集部 Text by PEAKS
写真◉廣瀬友春 Photo by Tomoharu Hirose
出典◉PEAKS 2020年8月号 No.129

寝心地を決める点では寝袋と同じく重要

中綿のボリュームなど差が目に見えやすい寝袋に比べ、マットは脇役に見られがちな地味な存在。だが、寝心地を左右するという意味では同等であり、選ぶ際はしっかりと特徴を見極める必要がある。一番にチェックすべきは使い勝手が大きく変わってくる構造。

以前はセルフインフレータブルが主流であったが、現在はエアータイプの種類が増え、空気を注入するバルブの作りもより便利になってきた。使い勝手の良さも考慮するとセルフインフレータブル、クローズドセルにもさまざまなメリットがあり、行く場所、時期などによって使い分けるという手もある。

構造

エアー

ニーモ/テンサー レギュラー マミー
寝心地が良く持ち運びもしやすい

中に空気を入れる構造で、近年種類が増えている。他のタイプに比べると一番コンパクトになり、厚みがあるので寝心地が良いというのがメリット。従来は夏向きのものが多かったが、熱を反射するシート、あるいは中綿などを入れて保温力を高めたモデルもある。

セルフインフレータブル

サーマレスト/プロライト レギュラー
バランスの良い使い勝手

中にスポンジ状のフォーム材が入っており、バルブを開けると自動で空気が入る仕組み(最後は自分で空気の量を調整する)。エアータイプよりは収納サイズが大きくなるが、パンクしてもある程度の保温力、クッション性を保ってくれるというメリットがある。

クローズドセル

ビッグアグネス/サードディグリーフォーム レギュラー
使いやすいがかさばるのが難点

フォーム材のみでできたシンプルな構造。空気を入れる手間がないので圧倒的に使い勝手が良く、パンクなど故障の心配もなく、さらには安価であるが、かさばるのが弱点。薄いものであればバックパック内に入れることもできるが、携行は基本的に外付けとなる。

収納サイズ

構造によって収納サイズは大きく異なる。最小はエアータイプ、次に大きくなるのがセルフインフレータブル。両者に極端な差はないが、軽量な装備で揃え、バックパックも小さめにするならエアータイプがベストだ。

クローズドセルになると一気にかさが増える。バックパックには入れにくいのでたいていは外付けになるが、そうなると行動中にマットが引っかかりやすい。滑落の恐れがあるような場所では使用しないほうが良い。

左から、エアー、セルフインフレータブル、クローズドセル(上記の製品)。セルフインフレータブルまでならパッキングも容易。

厚み

樹林帯では路面状況が悪い場所はそこまで多くはないが、岩稜帯のテント場などでは大きな石がゴロゴロして地面が凸凹な場所もある。そんなときに寝心地を大きく左右するのがマットの厚み。悪条件に対して強いのは、一番厚みがあるエアータイプ。多少の地面の荒れであればあまり気にせず眠ることができる。

セルフインフレータブルとクローズドセルの場合、厚みが断熱効果の差にも直結しており、厚いほうがより寒さに強い。だが、これらのマットは厚みが出ると収納サイズも大きくなるので注意。

上がセルフインフレータブル、下がエアータイプ。セルフインフレータブルは2.5㎝程度、エアータイプは6~8㎝程度が多い。

内部の作り

断熱効果で大きな差を生むのが内部の作り。セルフインフレータブルの場合は軽量化のために部分的にフォーム材をカットした「肉抜き」をされていることが多い。当然、抜いた箇所から冷気が伝わってきやすいが、最近はカットする場所や方法を工夫して断熱効果を下げないようにしたものも目立つ。

エアータイプの場合、空気が対流しにくい構造にする、熱を反射するシートを複数枚入れる、ダウンや化繊中綿を入れるなどして、より断熱効果を高めたモデルが増えている。

上で紹介したプロライトの女性用モデル。写真の右上にあたる身体の胴の部分は肉抜きを少なめにするなど、工夫が凝らされている。
「INSULATED」と書かれているとおり、サーモライトという中綿素材と反射フィルムが入っており、断熱性が高められている。
シートゥサミット/ウルトラライト インサーレーティッドマット レギュラー

サイズ

マットは基本的には183㎝程度のレギュラーサイズをベースに、モデルによって120㎝程度のショートサイズ、90㎝程度のミニマムサイズ、160㎝程度のミディアム・女性用サイズなど、各種サイズが展開されている。

短いサイズを選ぶメリットは荷物の軽量・コンパクト化。セルフインフレータブルやクローズドセルなら、短くすることでかなり容量を削減することができる。なおエアータイプの場合はショートサイズによる収納サイズ、重量削減効果はそれほど高くない。

上で紹介したプロライトのレギュラー(183㎝)とショート(119㎝)。ショートの場合、マットからはみ出る脚部分はバックパックなどでカバー。

空気の入れやすさ

エアータイプ、セルフインフレータブルタイプは、バルブの構造によって空気の入れやすさ、抜きやすさが大きく変わってくる。最近は入れるときは空気が逆流せず、抜くときだけスムーズに空気が排出される便利な構造のバルブが増えている。

エアータイプは入れる空気の量が多く膨らませるのが少々面倒だが、多くのモデルでバルブに繋げてラクに空気を入れられるスタッフバッグが用意されている。付属の場合と、別売りの場合があるので事前に確認しておこう。

プロライトのバルブ。黒と赤の2種類のパーツを使うことで、空気の封入、排出が効率的にできるように工夫されている。
マットやバッグのサイズにもよるが、スタッフバッグで空気を入れる場合、おおよそ3回分程度空気を入れるとマットが膨らむ。

R値とは?

マットの断熱性を表すのが、測定によって算出されるR値と呼ばれる数値。メーカーによって表記のありなしがあるが、選ぶ際のひとつの指標となる。寒さに対する各人の耐性、使用する寝袋などにも大きく影響されるのであくまで参考程度だが、下記のようにメーカーでおおよその目安を出しているところもある。

サーマレストによるR値の目安
  •  ~2/夏
  • 2~4/3シーズン
  • 4~6/オールシーズン
  • 6~ /厳冬

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PROFILE

PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

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