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筆とまなざし#233「『吉田博展』を訪れて。水彩絵具について考える」

吉田博の山岳水彩画を見て。不透明水彩絵具の再発見。

静岡市美術館で開催中の「没後70年 吉田博展」に行ってきました。春に東京で行なわれていたものの巡回展で、吉田博研究の第一人者として知られる安永幸一氏の講演に合わせて出かけたのです。

ところが当日は熱海で大きな被害をもたらした豪雨の日。高速道路もいたるところで通行止めになり、3時間ほどで到着する予定が7時間近くかかってようやくたどり着きました。ずいぶん余裕を持って出かけたものの講演には30分ほど遅刻。けれども、安永さんから直接吉田博の作品、そして人となりについて聞くことができたのは貴重な時間でした。

緻密な多色刷りの木版画で知られる吉田博。しかし、木版画を手がけるようになったのは40歳を過ぎてからで、それまでに数多くの水彩画、油彩画を描いています。ぼくにとっての大きな興味はやはり水彩画で、画学生時代の水彩画を含めてその卓越したテクニックと描写には感嘆しかありません。中でも「雲表」という、北アルプスのどこかを描いたものである大作は吉田博の山岳水彩画を代表する傑作として知られています。

吉田博の水彩画を見て、かねてから気になっていることがありました。それは、どんな絵具を使っているのだろう?ということ。水彩絵具にはいくつかの種類がありますが、代表的なものが「透明水彩」と「不透明水彩」です。どちらも成分は同じで顔料とアラビアゴムが使われています。違うのはその配合量で透明水彩はアラビアゴムが多く、不透明水彩は少ない。また、顔料の粒の大きさにも違いがあるようです。ちなみに両者の違いは読んで字の如く「透明」さがあるかないか。具体的に言えば、下地の鉛筆や色が透けて見えるか見えないかということです。ぼくはずっと透明水彩を愛用し、不透明水彩の白だけ部分的に使っています。それは、透明水彩独特の透明感が好きで、滲みやぼかしといった水彩らしい効果を使って描きたかったからです。けれども、いつのころからか透明水彩の限界も感じていました。それは、その透明感故の弱さだったり、塗り重ねがしにくいということです。

同じメーカーでも、色によって透明性のもの、半不透明のもの、不透明のものがありますが、透明水彩、不透明水彩と完全に別れているメーカーもあります。吉田博の水彩画を見ると、色の深みや光の具合から不透明水彩も積極的に使っているのではないかと感じていました。今回の展覧会では、近年見つかった上高地の水彩画が展示されており、梓川の白瀬には油絵具のようにモリモリと白い絵具が盛られていました。これは不透明水彩の白をチューブからそのまま出して使っているのかもしれません。

展覧会から帰宅してから、先日登った宝剣岳の写真を元に透明水彩と不透明水彩を併用して描いてみました。すると、見た目にはわかりにくいかもしれませんが、期待した通りの効果を実感。可能性が一気に広がったような気持ちになり、ふと、透明水彩を使って初めて絵を描いた高校3年生の夏を思い出したのでした。不透明水彩を使うことで、鉛筆での下描きをそこまで緻密に行なわなくてもよく、絵の具で対象(岩など)を描きわけることができます。さらに透明水彩より乾くのが早い。山で絵を描く際は描く速さも重要で、その点でも大きな助けになってくれそうだと思いました。

さて、静岡市美術館での吉田博展では、7月31日に、恐れ多くも「吉田博の山旅」と題した講演を行わせていただくことになりました。10年ほど前から吉田博が描いた風景を探して北アルプスを歩いており、登山者の視点で吉田博の山旅についてお話しします。ご興味のある方はぜひご参加くださいませ。

お申し込みは静岡市美術館HPにて→https://shizubi.jp

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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