高千穂峰&韓国岳 霧島連山の山旅・前編
PEAKS 編集部
- 2021年10月20日
九州の鹿児島と宮崎の県境にそびえる霧島連山。飛行機で現地に向かえば、鹿児島空港の目の前に立つ存在感がある山塊だ。しかし、2011年の新燃岳の噴火以来、連山を貫く縦走路はいまもすべては歩けない。そこで今回は、人気が高い高千穂峰、最高峰の韓国岳へと、2日に分けて日帰りの火山歩きを楽しんだ。
文◉高橋庄太郎 Text by Shotaro Takahashi
写真◉亀田正人 Photo by Masato Kameda
取材日◉2016年9月22日、23日
出典◉PEAKS 2016年11月号 No.84
真っ白な霧のなか、いまも生きる火山
この1年で、すでに3回目。僕は鹿児島に行く機会が多いが、いつも楽しみにしているのが、飛行機で鹿児島空港に近付くと見えてくる霧島連山の雄姿である。
空港に降り立つと、霧島の山々はすぐ目の前にそびえているのがわかる。まっ平らな大地からそこだけが天へと盛り上がったかのような霧島連山は、あまりにも存在感があり、見ているだけでも惚れ惚れしてしまう。とくに連山のなかの一座、高千穂峰には神々しい独特の趣があり、「天孫降臨」の山と知られ、天照大神の孫である瓊瓊杵尊の伝説が残されているのも、なんとなく理解できるのだ。
だが、じつは僕が霧島連山に初めて登ったのは、やっと昨年のこと。以前から歩いてみたいとは思って計画はしていたが、2011年の新燃岳の噴火により、延期せざるを得なかったのだ。
しかしいまは噴煙も落ち着き、新燃岳付近こそ立ち入り禁止のままであるが、それ以外の場所は問題なく歩ける。そこで昨年の秋に連山最高峰、標高1700mの韓国岳に登ったのだが、あいにく真っ白なガスのなかなのであった。
次こそ火山らしい荒々しい風景を見たいと、再び僕は鹿児島空港に飛んだ。時期は9月下旬で、温暖な九州だけあって、いまだ夏のようである。だが、早い時間に空港に到着すると、霧島連山の上には曇がかかっているのだ。
高千穂はあいにくの曇り。だけど雰囲気はむしろある?
いやはや、どうしよう? 今回の目的は、高千穂峰と韓国岳。それらの間には新燃岳があるために一度に縦走することはできず、2日間でふたつの山にそれぞれ登るつもりだった。では、この曇り空の初日はどちらの山にいくべきか。
僕が選んだのは高千穂峰。昨年もガスで真っ白だった韓国岳に登っても、ほとんど同じ風景しか見られないだろう。それならば、韓国岳は明日にまわし、好天になることを期待したい。もちろん高千穂峰も晴れていてほしいのだが、今回は韓国岳が優先だ。それに高千穂峰は標高1574mと韓国岳よりも低く、時間が経てば雲が高く上がって、高千穂峰は韓国岳よりも早くマシな状況になるかもしれないという読みもあった。
しかしまあ、結局ダメだったんですけどね……。ビジターセンターがある登山口から歩き始めると、霧島古宮址の後ろに見えるはずの高千穂峰の姿はどこにもなし。そこから自然観察路、登山道と歩いていくにつれて白いガスのなかに突入し、足元がどんどん崩れていく砂礫のなかをなんとか標高を上げていったのに、一時は周囲がほとんど見えないほど。ガスが薄れた瞬間に荒涼としながらも美しい火山らしい景色はそれなりに楽しめたものの、満足できたとはいいがたい山歩きになってしまった。
とはいえ、山頂に着き、思いのほか小さな「天の逆鉾」を見ると、少しは感慨が深くなる。その昔、高千穂峰に登った坂本竜馬が、こいつを引っこ抜いたという逸話も残っているという、この山のシンボルなのだから。いや、現存するのはレプリカらしいのだけど。
高千穂峰にはいずれ再訪することにして、僕は駐車場に戻る。霧島連山は登山道中にテント場はないものの、山麓にはすごしやすいキャンプ場がいくつかある。そこで、えびの高原キャンプ場へ向かい、テントを張った。夜中にはシカが近くでうろついていてビックリさせられたが、それ以外は静かな夜だ。樹木の切れ間から見える空にはいくつもの星が輝いている。明日の朝はきっと晴れるに違いない。
>>>後編へ続く
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文◉高橋庄太郎 Text by Shotaro Takahashi
写真◉亀田正人 Photo by Masato Kameda
取材日:2016年9月22日、23日
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。