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岩を自由に登ることは創造的で芸術活動に近い行為に感じられる。|筆とまなざし#275

クライミングと絵を描くこと。どちらも本質的にはとても似ている。

つくしがぐんぐん背を伸ばし、日当たりの良い草地にわらびも生えてきました。コシアブラもあともう少し。アトリエの周りには紫がかったピンク色のツツジが満開となり、初々しい新緑に囲まれています。

そんな風景のなかで、先週の親子スケッチ&クライミングのことを考えています。自分にとってとても大切なふたつの事柄。これらは、子どもたちにとってどんな意味を持つのでしょう。そう思うと、いろいろな考えが頭のなかに浮かんでくるのでした。

今回、子どもたちに登ってもらったのは高さ10mほどの岩。横幅は15mほどあり、最初の数メートルのところに小ハングがあって、その上にホールドの豊富なスラブが続いています。ところどころにあるクラックや傾斜の緩いところが登りやすいラインとなっています。大体5.5~5.8くらいの難易度。そのラインが登れるように岩の上部3カ所にトップロープ用の支点が打ってあります。

子どもたちには、垂れているロープから左右に行きすぎると落ちたときに振られて危ないので注意して、あとは自由に登っていいよ、とだけ伝えました。決められたルートはありません。登りたいところ、登りやすいところを自分で考え、選んで自由に登ってほしかったからです。途中にボルトが打ってあれば多少なりともボルトに誘導されますが、この岩には打っていません。

登り始めると、迷いながらも予想どおりの弱点をついていく子どももいれば、思いがけないラインで登っていく子どももいました。そして終了点にたどり着くと満面の笑みでピース。この過程に、どんなエッセンスが含まれているのか……。そう思ったとき、午前中に描いた絵を思い出したのです。

真っ白い画用紙に、目の前の風景を描く。どこを描くのか、どのように描くのか、すべて自由。風景と対峙し、観察し、自分のなかに受け入れて画用紙の上に一枚の絵として表現します。いっぽう、この岩でのクライミングはどうでしょうか? 岩と対峙し、形状を観察し、岩と自分の身体感覚との折り合いをつけながら登っていく。一見異なるこのふたつの行為は、本質的にとても似ている。クライミングは絵を描くよりもより身体的ではあるけれど、どちらも芸術活動だとは言えないでしょうか。

一般的にクライミングはスポーツだと思われています。子どもたちにとって、インドアクライミングは習いごとのひとつとして親しまれる時代になりました。決められたホールドを使ってどのように登るのかを考えることは創造的ではあるけれど、やはり身体運動としての側面が大きい。けれどもそれが自然の岩になった場合、さらに決められたルートがない場合、岩によじ登るということはもっともっと創造的な、スポーツというよりも芸術に近い行為になるのではないでしょうか。しかもそこには恐怖などの精神的要素も大きく、より複雑な要素が絡み合っています。

岩を自由に好きなように登る行為(それはクライミングのもっともピュアな部分なのだけれど、いつの間にか既成のラインどおりに登り、グレードを追いかけることになりがちです)。それは子どもたちの教育にとって、とても大切なものを含んでいるのかもしれない。そしてそんなクライミング活動を実践することは、なにかしら大きな意味のあることなのかもしれない。新緑の若葉を眺めながら、そんなことに思いを馳せています。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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