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恵那山富士見台高原で、スケッチハイキングイベントを行ないました。|筆とまなざし#281

遮るものがなにもない山頂でのちょっとしたエクストリームスケッチ。

 五月晴れの空が広がった土曜日、恵那山富士見台高原でスケッチハイキングイベントを行ないました。今回の参加者は8名。5名は県内からで、3名はなんと兵庫県から。聞くと、よく笠置山へクライミングに来ており、友人を誘って参加してくださったとのこと。朝3時に出発して駆けつけてくれたのでした。

 富士見台高原は恵那山の登山口のひとつ、神坂峠の北に位置する標高1,739mの小高い山です。頂上付近は笹原に覆われ360度の大展望が広がっています。ちなみに、富士見台といっても富士山は見えません。「富士山が見たい」という願望からその名がつけられたとか……所以は定かではありませんが、登山口から30分ほどのハイキングで登ることができ、かつ眺めが良いのでスケッチハイキングには最適な場所なのです。

 朝9時に登山口の萬岳荘に集合。

「今日は風が強いから気をつけて」

小屋の管理人をされているガイドの原さんにそう言って見送られ、さっそく富士見台の頂上へ向かいました。開放的な気持ちの良い登山道をたどると、ほどなくして真っ平な頂上に到着しました。遠くわずかに残雪のある御嶽山や乗鞍岳、稜線をたどった先には中央アルプスの主稜線が眺められ、振り返ると恵那山が大きく横たわっていました。水彩画の技法のレクチャーしたあと、各自好きな場所で好きな風景を描いてもらうことにしました。

多治見市から母子で参加してくださったKさん。息子のハル君は絵を描くのが好きで、小学校で絵の具を使い始めたばかりだそうです。岩の上に腰を下ろし、登山道の先にそびえる恵那山を描いていました。ここから眺める山々はなだらかで、横への広がりを感じる風景です。ぼくも含めスケッチブックを横長にして描いていたのですが、彼だけは縦。なるほど、それによって真っ直ぐ伸びる登山道を表現していたのでした。

遮るもののなにもない頂上は風が強く、のんびり絵を描くというよりはちょっとしたエクストリームスケッチ。がんばって昼まで描き、一段落したところで風当たりの弱い場所へ移動することにしました。街の最高気温は30度を超える真夏日だというのに、薄手のダウンを着ていても寒いくらい。カンカン照りだと暑いので快適といえば快適ですが、スケッチブックが風に煽られるのには苦労しました。

午後から2時間ほど描き、風が強くなってきたところで萬岳荘へ下りました。振り返ると、風を受けた笹原が漣のようにうねり、頭上には澄んだ青空と午後の日を受けて若干黄色に染まった白い雲が広がっていました。そんな風景のなかで静かにすごす時間をほかのだれかと共有する。それがまた、スケッチ山行の魅力でもあるのです。

「この先、五竜山荘で働く予定があり、せっかく揃えた画材や今回の体験を活かしていきたいと思います」

 翌日、参加者の方からそんなメールをいただきました。仕事の合間に、小屋の近くの岩に腰を下ろし、日々変化する風景を眺めながらどんな絵が描かれていくのだろう。

 今回のスケッチハイキングはガイドオフィス「山志」の企画として行ないました。また秋にも計画したいと思いますので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。

山志→https://guide-yamasane.com

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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