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ラッセル・ブライス 【山岳スーパースター列伝】#25

文◉森山憲一 Text by Kenichi Moriyama
イラスト◉綿谷 寛 Illustration by Hiroshi Watatani
出典◉PEAKS 2016年9月号 No.82

 

山登りの歴史を形作ってきた人物を紹介するこのコーナー。
「世界一の山岳ガイド」とはだれなのか。ひとつの答えがこの人物である。

 

「世界一の山岳ガイド」というとだれになるのか。なにをもって世界一とするかにはいろいろな観点があるのでひと口にはいえないが、「世界最高峰をガイドする」ことはそのひとつといえるだろう。

世界最高峰、すなわちエベレスト。その山頂まで案内する世界的な第一人者が、ニュージーランドのラッセル・ブライスである。

かつてはごくひとにぎりの登山家の挑戦の場であったエベレストだが、1990年代から一般化が進み、いまでは、エキスパートというほどの体力・技術がなくても登れるようになっている。

それはなぜか。ひとえにガイド登山が発達したことがその理由である。

ブライスは1952年の生まれ。すでにエベレスト山頂までのガイディング自体は引退しているが、遠征隊のオーガナイザーとして毎年エベレストの現場で指揮を振るっている。

ブライスの真骨頂は、この遠征プロデュース能力にあるといわれている。ガイドやシェルパの割り振りはどうするか、登頂までのプランはどうするか、クライアント(客)の体調管理はどうすればベストか。

エベレスト登山ともなれば、多くの人間、多くの物資、多くの日数が必要になるが、そのすべてをどのように組み合わせるかによって、登頂の可能性は大きく変わってくる。それは個人のガイド技術より重要な要素で、ブライスはそこにこそ長けているというのだ。

ブライスの会社「ヒマラヤン・エクスペリエンス(Himex)」のガイドとして何度もエベレストに行っている倉岡裕之は「ベースキャンプの設備は過剰とも思えるほど」と語る。清潔なトイレやシャワー、充実した医療のバックアップはもちろん、リビングテントやバー、ゲームルームやパソコンルームまであるらしい。

しかしこれはたんなる豪華趣味ではない。ただでさえ身体的・精神的ストレスの多い高所で、できるだけふだんと同じような生活空間を作ることで、クライアントに余計な負担を与えないことが目的。その結果、万全な体調で頂上に向かえるようにしているのだ。

それだけではない。ブライスのチームは、いつも先頭に立ってルートを拓いてフィックスロープなどの整備をする。チームをサポートするシェルパの育成にも力を入れ、シェルパが安定した生活ができるよう待遇向上にも気を配っているという。

こうして完璧な登山環境を整えることで、Himex隊は高い登頂率を誇ってきた。ブライスが作り上げてきたこの洗練された登山システムは、ほかのガイド会社のお手本ともなり、結果として、エベレストの登頂者数は、右肩上がりの急カーブで増え続けている。

2016年春、19歳の南谷真鈴がエベレストに登頂して日本人最年少記録を更新した。彼女はハードな登山経験が豊富にあったわけではない。2013年には、三浦雄一郎が80歳で登頂して最高齢登頂記録を作った。こうしたことはガイド登山のシステムが整っていなかった時代にはあり得なかった。

山岳ガイドの近藤謙司によれば、ブライスは人格者でもあるという。プロデューサーやビジネスマンとして優秀である一方、ジェントルマンでもあるというのだ。

「かなわないよ」

自身もエベレストガイドを行なう会社を経営する近藤がそう言う。この人望も、世界一の秘訣であるのだろう。

 

ラッセル・ブライス
Russell Brice
1952年生まれ。ニュージーランド出身の山岳ガイド。1994年に初めてエベレストのガイド登山を行なう。1996年にヒマラヤン・エクスペリエンスを設立。ガイド登山で自身ものべ14回、8,000m峰の山頂に立っている。2020年に会社の代表をステファン・ケックに譲り、ガイド業からの引退を発表。
https://www.himex.com

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PROFILE

森山憲一

PEAKS / 山岳ライター

森山憲一

『山と溪谷』『ROCK & SNOW』『PEAKS』編集部を経て、現在はフリーランスのライター。高尾山からエベレストまで全般に詳しいが、とくに好きなジャンルはクライミングや冒険系。個人ブログ https://www.moriyamakenichi.com

森山憲一の記事一覧

『山と溪谷』『ROCK & SNOW』『PEAKS』編集部を経て、現在はフリーランスのライター。高尾山からエベレストまで全般に詳しいが、とくに好きなジャンルはクライミングや冒険系。個人ブログ https://www.moriyamakenichi.com

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