総重量5kgで1泊2日の山旅へ。ウルトラライトやってみました【中編】
PEAKS 編集部
- 2022年11月18日
荷物の軽量化に関心がある人なら、気になっているであろうはずの「ウルトラライトハイキング」。しかし自分が実践するとなると不安点も頭に浮かぶ。途中で壊れないだろうか。使い勝手が悪くないだろうか。軽くても快適性に欠けるのではないか……。そこで編集部がやってみました。極限に軽さを追求することで、なにが得られて、どういう問題があるのか?
文◉森山憲一
写真◉荒木優一郎
▼気になる前編はこちらをチェック
【歩く】まるで日帰り山行かと思うほどの軽快感!
歩き出して1時間。道の傾斜がきつくなってきたが、ニノミヤのペースが落ちない。中高年の森山と、軽量化が下手でなぜか20kg超も背負っているカメラマンがバテているのを尻目に、ニノミヤは平地のようなペースでずんずん登っていく。これはウルトラライトの効果なのか、それとも彼女の体力ゆえなのか判断はつかないが、どうですか?
「軽いです! テント泊装備を背負っていることを忘れそう。日帰り山行みたいなスピードで歩けちゃいますね、これ」
たしかに、後ろから見ていても、このバックパックにテント装備が入っているとは思えない。山で出会っても、普通に日帰りの人だと思うだろう。
ちなみに、私が背負っているバックパックは約10㎏。この重さだと、バックパックを背負うときに一瞬力を入れて担ぐ必要があるが、5㎏だと片手でひょいっと持ち上げられる。10と5。実際に持ってみると、この差は数字以上に大きく感じられる。さすがに私も、パック重量5㎏でテント泊をしたことはない。これがウルトラライトの威力か……。
しかし、数時間歩いているうちに、ニノミヤは少々不具合も感じてきたようだ。
「ウエストベルトがほしいですねー。体が左右に振られたときに、バックパックがズレる感覚があります」
バマーは、ショルダーベルトのみでウエストベルトはなし。そのため、体との一体感には欠けるようだ。背面がツルツルした素材のため、ウエアとの相性もあるようだという。このへんの機能の省略は、重量370ℊの代償というところだろうか。
【食べる】軽さとコンパクトさは最高。調理のしやすさは……
三条の湯のテント場に着いた。早速、夕食の準備だ。
ニノミヤが取り出した炊事用具は小さなアルミクッカーひとつだけ。燃料もコンロもカップもライターも、全部これに収納できている。熱源は固形燃料。それを乗せるコンロというかゴトクは、わずか15ℊ。これも笑っちゃうくらい小さくて軽い。ただの金属片のようだ。
「これ……、エスビットひとつ乗せればいいんですかね?」
「思うようにやってみて」
使用方法はアドバイスせず、とりあえずニノミヤにまかせる。が、かつて固形燃料でなかなか湯が沸かず苦労した経験がある私は、風防だけ貸してあげた。固形燃料バーナーは風にはまったく弱いのである。
クッカーを見つめて湯が沸くのを待つニノミヤ。そのかたわらで、最新のジェットボイルでスパッと湯を沸かして悠々と夕食を食べ始める私。
20分がすぎたがニノミヤは動かないまま。美味しそうに食事をするわれわれをうらやましそうに見つめるのみだ。
「沸騰しないけど、もうこれでやっちゃいます」
ついにしびれを切らして、沸騰前のお湯をアルファ米に注ぐニノミヤ。まあ、アルファ米は水でも戻せるくらいだから問題ないでしょう(実際問題なし)。
「火器類は軽量化しすぎないほうがいいかもですね……。固形燃料を使うなら、相応のノウハウも必要になることがわかりました」
▼続きは【後編】へ…
※この記事はPEAKS[2022年5月号 No.138]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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