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<世界一セクシーな50代のクライマー> シュテファン・グロヴァッツ 【山岳スーパースター列伝】#46

文◉森山憲一 Text by Kenichi Moriyama
イラスト◉綿谷 寛 Illustration by Hiroshi Watatani
出典◉PEAKS 2016年2月号 No.75

 

山登りの歴史を形作ってきた人物を紹介するこのコーナー。
世界の男子と女子クライマーの心を鷲づかみにしたイケてるオヤジを紹介しよう。

 

シュテファン・グロヴァッツ

『PEAKS』2015年10月号で、「私が登山雑誌編集者を志した5冊」なるものを紹介した。その筆頭にあげたのが、『ロックス・アラウンド・ザ・ワールド』というクライミング写真集。とにかくすばらしい本なので、古本で見かけたらぜひ買うように(いまAmazonで見たら、定価より高い5,000円以上していたけど)。

撮っているのは、ウリ・ヴィースマイアーというカメラマン。いまでこそ、アーティスティックなクライミングビジュアルを作るクリエイターは少なくないけれど、この本が出た1980年代後半、クライミング写真というと、ただ撮っただけのような単純なものしかなかった。そんななか、オフショットでもクライミングのエッセンスを感じさせるヴィースマイアーの写真は、レベルが二つも三つも違うように思えた。

撮られているのは、シュテファン・グロヴァッツというクライマー。今回の主役である。

ヴィースマイアーのセンスが卓越していたのはもちろんなのだが、それだけでは写真集は成り立たなかったに違いない。グロヴァッツという完璧な被写体がいたからこそ、『ロックス~』は語り継がれる名著になったのであり、「こんな本を作りたい」と山岳編集者を志す人間(私)が現れるほどのインパクトを持ち得たのだ。

1965年生まれのグロヴァッツは当時20代前半。コンペに出れば当たり前のように勝ち、岩場では世界中の難ルートを総ナメ。まさに完璧なクライマーだった。

同時代に活躍したクライマーのなかでもグロヴァッツの強さは格が違うというのは、クライミングを始めたばかりのハナたれ小僧だった私にもすぐにわかった。後年、世界のレジェンドとなる平山ユージも、グロヴァッツが憧れの存在であったという。

強いだけではない。グロヴァッツは長身で手足が長く、わずかに憂いを帯びた美形でもあり、スポーツマンというよりアーティストのイメージ。少女漫画に出てくる貴公子のようなルックスの持ち主だった。

当時、ヨーロッパで行なわれたコンペに出場した日本人クライマーが、雑誌にこんなことを書いていた。

「どうあがいても勝てっこない次元の違う強さに加えて、女にモテる。人間として勝てるところがひとつもない……」

輝かしい一時代を築いたあと、グロヴァッツは1993年にコンペシーンから離れ、レッドチリというクライミングシューズメーカーを立ち上げた。有名クライマーが道具メーカーを起こすのはよくあること。「世界一滑らないラバーソール」を開発したファイブテンのチャールズ・コール、クライミングパンツの元祖グラミチを作ったマイク・グラハム。古くは、パタゴニアのイヴォン・シュイナードだってそうだ。

しかし、そうした人たちのほとんどが、会社を起こして以降は本格的なクライミングから引退しているのに対して、グロヴァッツはいまに至るも精力的に登り続けている。活動の舞台をコンペからビッグウォールに移し、南極大陸や南米のジャングル、中東の洞窟など、辺境のアドベンチャラスなクライミングでは、世界の第一線にいるといってもいい。

登り続けているせいか、50代になるいまでもルックスは衰えていない。それどころか、若いころにはなかった野性味も備えて、魅力はさらに増しているようにさえ見える。グロヴァッツに勝るとも劣らない美男子だったマイク・グラハムが、いまでは見る影もないアメリカン・デブになってしまっているのとは対照的である。

興味がある人は、グロヴァッツの公式サイトを見てみてほしい。大人の男のシブさ満点の写真をいくつも見ることができる。一部では、「世界一セクシーな50歳」などと呼ばれてもいるらしい。

そのグロヴァッツ、この2月上旬に来日する(注・2016年)。モンベル御徒町店で一般公開のスライドショーも開催するそうなので、生グロヴァッツを体感しに行ってみることをおすすめする。小川山の伝説の課題「NINJA」や「グロヴァッツスラブ」の開拓秘話なども披露するとのことなので、クライマーにはたまらない時間になるだろう。オジサマ好きの女性にもおすすめだ。ぜひ、鋭くセクシーな彼の眼光に撃ち抜かれていただきたい。

 

シュテファン・グロヴァッツ
Stefan Glowacz
1965年生まれ。ドイツ出身のロッククライマー。20代は競技クライマーとして活躍し、当時世界最高の大会といわれた「アルコ・ロックマスター」を3度制覇。岩場でも、当時の世界最高難度(5.14a)のルート「パンクス・イン・ザ・ジム」を初登。クライミングシューズメーカー「レッドチリ」創業者。
https://www.glowacz.de

 

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PROFILE

森山憲一

PEAKS / 山岳ライター

森山憲一

『山と溪谷』『ROCK & SNOW』『PEAKS』編集部を経て、現在はフリーランスのライター。高尾山からエベレストまで全般に詳しいが、とくに好きなジャンルはクライミングや冒険系。個人ブログ https://www.moriyamakenichi.com

森山憲一の記事一覧

『山と溪谷』『ROCK & SNOW』『PEAKS』編集部を経て、現在はフリーランスのライター。高尾山からエベレストまで全般に詳しいが、とくに好きなジャンルはクライミングや冒険系。個人ブログ https://www.moriyamakenichi.com

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