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ないものは自分で作る。作品展示用の額と木製ホールドを自作|筆とまなざし#313

自分で知恵を出して手足を動かし工夫する。それは幼いころから父が教えてくれたこと。

この冬いちばんの寒波がやってくるというので、木工をしている父のストーブの効いた工房で木工作業に勤しんでいる。作っているのは展覧会用の額と木製のクライミングホールドだ。

2月と3月に展覧会を計画していて、昨年訪れたイタリア・オルコ渓谷の絵も展示予定。オルコには普段使っているF4サイズのスケッチブックのほか、ミドリの「トラベラーズノート」(の水彩紙リフィル)と風景画用の横長スケッチブックを持っていった。トラベラーズノートと横長スケッチブックは展示したことがなく、額を持っていない。それなら自分で作ろう。経済的だしそっちのほうがおもしろい。そう思い、父に協力を仰いで自作することにしたのだった。

トラベラーズノートは105×210mmとちょうど1:2の横長。工房で埃を被った材のなかから欅の板を引っ張り出してきて寸法を測り、木工機械でカットしてもらう。四隅をボンドで接着するのだが、このままだと弱い。L字の金属板で補強したいのだけれど木の幅が足りなくて使えない。ホームセンターで物色していると波釘というものを見つけた。板と板を繋ぎ合わせるときに使う波型の釘である。試験材でテストしたところ、そのまま使うと木が割れてしまう。釘が大きいことと波部分に木が押し潰されてしまうことが問題で、波釘をペンチで半分に切って波部分を潰して平にし、L字に折り曲げて試してみた。これなら割れない。額の裏に絵を止めるためのトンボと紐を通す金具を取り付け、別注していたアクリル板とマットを入れて完成。欅は木目が力強く、小さな額でも存在感がある。横長スケッチブックは254×411mmと大きめ。こちらは別の作り方で制作してみようと思う。

額作りの合間に木製ホールドをふたつ作った。これから工場跡地に制作するプライベートウォール用だ。ホールドは少し持っているのだけれど数が足りない。昔と比べて市販ホールドが非常に高く、おいそれと買えない。自作の木製ホールドはフリクションに乏しいけれど指皮と財布には優しくて良い。歪な富士山のような欅の材は非常に硬く、削るのも苦になるほどだったので角を滑らかにするだけにした。もうひとつはピンチで持てるように加工。ボルト穴にワッシャーを入れられるようにし、回り止めのビス穴を空けた。ホールドは手の空いたときに増産しよう。

ないものは自分で作る。それは幼いころから父が教えてくれたこと。お金に頼る(そもそもそんなゆとりはない)のではなく自分で知恵を出して手足を動かして工夫する。既製品に囲まれた生活は仮初めのようでどこか虚しい。自分の生活は自分の手で作っていきたい。物作りをする時間は自分が自分であることを強く感じる時間でもある。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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