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キャンバスに安曇野の旅で出逢った入道雲を描く|筆とまなざし#341

ある作品との出逢いから、新しい試行錯誤が始まった。

 スケッチではなくタブローを、小品ではなく大きな絵を描こう。そう思うようになったのは、有楽町や安曇野で行なわれていた日本山岳画協会展を訪ねたことがきっかけだった。展示されていた作品はどれも大きく、その迫力と存在感に圧倒された。時間をかけて、じっくり描く。そんな絵を描いてみようと思うようになったのである。

 安曇野山岳美術館をあとにし、近くにある「絵本美術館 森のおうち」を訪れた。この美術館には度々足を運んでいて、ちょうど好きな絵本作家の展覧会を行なっていると知ったからだった。その絵本作家はいせひでこさん。もっとも好きな絵本は『絵描き』という一冊で、自身を主人公の絵描きの少年に見立て、描きながら旅し、旅しながら描くというもの。今回の展示でも原画が飾られていた。

 主に水彩を使って描くいせさんの作品のなかに、どうも雰囲気が違うものがあった。画面をよく見ると網目模様がついている。額の側面を見ると少し厚い。それらは水彩紙ではなくキャンバスに描かれていた。キャンバスにも、こんなにしっかりと水彩絵具がのるのか。それは思ってもみない発見だった。

 透明水彩の特徴として、塗り重ねると色がくすむことが挙げられる。一度塗った色はほとんど拭うことができないし、何度も塗り重ねると紙の表面が剥離する。いせさんの作品を見ると、色を複雑に塗り重ね、さらに水で拭って描いたように見える部分もあった。なるほど、キャンバスならそんな描き方ができるのか。これなら描き直しながらじっくりと描くことができるかもしれない。さらに、現場に持っていくスケッチブックや水彩紙は大きさは限られるが、ロール状のキャンバスならくるくると丸めて持ち運ぶことができる。油彩と違い、水彩なら絵の具がポロポロと剥げ落ちることもないだろう。

旅から帰った翌日、さっそく近くの画材屋でキャンバスを買ったのだが、それからいろいろと仕事が重なり、ようやくその試みを具現化してみたのはお盆をすぎてからだった。描いたのは安曇野の旅で出逢った入道雲。夏の青空にもくもくと沸き立つ雲を描こうと、旅の途中で決めていたのだった。

塗り重ねたり拭ったり。これまでできなかった描き方を繰り返し、一枚の絵を描いた。この手法が新しい表現となり得るか。よくよく調べると、水彩用のキャンバスというものが売られていることがわかった。さっそく注文、どんな描き心地だろうか。まだ描き方の特徴が掴めないけれど、新しい試行錯誤が始まった。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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