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モデル仲川希良の「絵本とわたしとアウトドア」#11 おきなぐさ

「うずのしゅげを知っていますか。」……そんな呪文のような言葉で始まる物語「おきなぐさ」。「うずのしゅげ」は、作者である宮沢賢治が暮らした岩手での、オキナグサの古い呼び名だそうです。

なんでも花はまるで「黒繻子ででもこしらえたような変り型のコップ」、葉や茎には「やわらかな銀の糸が植えてある」ようで、「うずのしゅげの花をきらいなものはありません」と書いてあります。物語のなかでやはりこの花が大好きだという蟻は、オキナグサを覆う柔らかな毛についてこう話します。「誰かが病気にかかったときはあの糸をほんのすこうし貰って来てしずかにからだをさすってやります」……ああなんて優しい世界。なんて美しい言葉で賢治はオキナグサを語るのかしら。

花咲き乱れる硫黄岳での一枚。歩く先に次々現れる花々に癒され、力をもらった。このときのお目当てはツクモグサ。おなじキンポウゲ科だというオキナグサにも、いつか実際に出会いたい

 

幼い私に、母はよく宮沢賢治の物語を聞かせてくれました。少し低い母の声で淡々と読み上げられる言葉の美しさと、頭に浮かぶ繊細で穢れない世界に惹かれ、少し大きくなってからは自分で本を広げて、賢治の物語のなかに出かけるようになりました。でもそれは、私の住む世界とは違う、存在しないと感じていたからこそ、うっとり浸れる場所だった気がします。

自然をモチーフにしたものが数多くある賢治作品ですが、山に登るようになると不思議と手に取らなくなりました。山で目にする自然は、そこにあるだけで完璧に美しい。ただ生きているその姿だけで、胸がいっぱいになるのです。賢治の世界のように沢蟹の兄弟にクラムボンと歌わせたり、気のいい火山弾をからかったりしなくとも、無言で語りかけてくることを知り、それで満足していたのだと思います。

「おきなぐさ」は、私に息子が生まれてあまり山に行けなくなってから、久しぶりに触れた賢治の作品でした。物語のなかでオキナグサにドラマは起こりません。太陽に感謝し風に揺れ光を愛でています。そうして、さようならありがとうと言って散っていく。私の人生もこうあればいい、と、せいせいするような気持ちで、変わらず美しい言葉が紡ぐ世界に浸りました。

そしてふと、私はこれを知っている、と思ったのです。私が山で目にし、感じていることだ。草や鳥や蟻がキラキラと愛らしく話すその向こうに書かれた、本当の賢治の世界に、じつはやっと少し触れられたのかもしれないと思わされた瞬間でした。

 

 

おきなぐさ
(宮沢賢治・作、陣崎草子・絵/ミキハウス)
私も山の花々をこんなふうに称えられたらいいのに、と思わされる賢治の言葉。その完成した世界に絵も文字組も優しく寄り添っていて、素敵な絵本になっていました。

 

モデル/フィールドナビゲーター
仲川希良
テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの12年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。新著『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』(枻出版社)が発売中!

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PROFILE

ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

ランドネ 編集部の記事一覧

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