
Keishi Tanaka「月と眠る」#25 より道をして見えたもの

ランドネ 編集部
- 2023年04月23日
ランドネ本誌で連載を続けるミュージシャンのKeishi Tanakaさん。2019年春から、連載のシーズン2として「月と眠る」をスタート。ここでは誌面には載らなかった当日のようすを、本人の言葉と写真でお届けします。
Keishi Tanakaさんの連載が掲載されている最新号は、こちら!
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より道をして見えたもの
ランドネ最新号では、登る予定のなかった山に吸い込まれていったときのことを書いた。しっかりとした準備をしていないということは、近くに危険が潜んでいる可能性があるということだ。どのような山で、天気はどうか。スマホで情報を調べつつ、周りの人を観察しながら決めた低山ハイク。そのようすをここに残しておく。きっと安心してもらえるだろう。

本誌にも書いた通り、少し忙しかったスケジュールがひと段落した3月のとある日に、神奈川県にある梅園に行ったときの話。梅と桜が入れ替わるように咲く日本の春は、毎年それだけで嬉しい気持ちになる。

広過ぎない敷地でしっかりと梅祭りを楽しんだあと、駐車場までの道を歩いているとき、ふと横を見ると神社の鳥居が見えた。

この階段を登るべきか。上はそんな場所になっているのか、どの程度の展望があるのか、一瞬迷った自分がいたが、結局は登ってみることにした。なんとなくその先があるような気がしたのだ。
階段を登りきると、「牡龍籠山」や「龍籠山」の文字があった。ここから軽い山道があると思われた。少し悩んでいると、犬の散歩をしている人がその道を進んでいった。普段着だった。

少しスマホでも調べたあと、その山道に入ることにした。山を登っている感覚もあるが、危険な感じはなく、散歩の延長という感じだ。

梅を見に来て、桜も楽しみだなと思っていたところに、椿の花が鮮やかに咲いていて、その展開がなんだかおもしろく、記憶に残っている。


展望台に到着し、東の方角を眺める。そこには近くの暮らしと、遠くの大都会が見えた。

近くいた男性ふたりが話しているのが聞こえた。「スカイツリー、見える?あそこにあるでしょ。今日はちょっと雲があるかな」と一生懸命に教えている。僕もその方向を見たが、よくわからなかった。それでよかった。よくここへ来ているであろう人の暮らしを想像して、少し羨ましく思った。

牡龍籠山の山頂に到着。山頂といっても、特に何があるわけでもない。本当に裏山に遊びに来ているような感覚だ。何人かとすれ違ったが、登山者や観光客という感じの人は少ない。よく知った道を歩き、自然の変化を感じる。街を見下ろして、何かを考えている。この場所は近くに住む人たちにとっての日常であり、眼差しなのだ。

★今月のニューフェイス
レッドレンザー/ML4
今回は使用していないが、少し前に誕生日プレゼントでいただいた小型ランタンを紹介。3段階の調光と点滅に加え、瞬間的にマックスまで明るくなるブースト機能や赤色点灯機能も搭載。カラビナ付きで、アウトドアではもちろん、自転車に装着して街使いもしやすそうだ。
〇Keishi Tanaka
1982年11月3日、北海道生まれ。ミュージシャン。作詞家。作曲家。Riddim Saunterを解散後、2012年よりソロ活動をスタート。ライブハウスや野外フェスでのバンドセットから、ホールやBillboardでの11人編成ビッグバンド、さらには小さなカフェでの弾き語りなど、場所や聴く人を限定しないスタイルで年間100本前後のライブを続けている。最近はV6への楽曲提供が話題となる。5枚目のアルバム「Chase Aftrer」をリリース。
Keishi Tanaka Official Site
https://keishitanaka.com
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PROFILE

ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。