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「だから、私は山へ行く」#22 河島春佳さん

山を愛し、山とともに生きる人に迫る連載「だから、私は山へ行く」。今回は、山を歩いて感じた「花が好き」という気持ちを出発点にフラワーサイクリストとして活躍する河島春佳さんに聞く山のこと、花のこと、自然と人のつながりのこと。

〝好き〞を仕事にしたくて

アトリエに入った瞬間、やわらかな花の香りに包まれる。不揃いな大きさのバラのつぼみや、少し曲がったカーネーション……。これらの植物は、生花店や結婚式場などで役割を終えて廃棄される予定だったもの。フラワーサイクリストの河島春佳さんは、その花々を「ロスフラワー」と名付け、空間装飾やアクセサリーの制作などに生かしている。その活動の原点にあるのが、山を歩いていて気づいた「花が好き」という気持ちだ。

子どものころの夢は、ファッションデザイナーになることだった。 「昔から刺繍や編みものなどの手芸が好きで、気がつけば6時間くらい制作に没頭することもあったほど。小学生のころから『私の特技はこれ!』という思いがあって、ファッションの世界に進みたいと考えていました。ところが、大学卒業がリーマンショックのタイミングだったこともあって希望する会社には入れず、とある玩具メーカーに就職することに。

ただ、その会社で、自分がものづくりやクリエイティブな仕事を続けていけるイメージをどうしてももてなくて……。もともと『好きなことで生きていきたい』という思いが強かったので、20代前半は『どう生きればいいんだろう?』と悩むことも多かったですね」

その後メーカーを退職した春佳さんは、いくつかの仕事を経験する。一方で、趣味として続けていた登山は、自問自答する日々を潤すリフレッシュの時間になっていたという。

「長野県生まれなので子どものころから山は身近な存在でしたし、大学時代には山岳部の友だちと雲取山に行ったことも。社会人になってからは、北アルプスや関東近郊の百名山に登ったり、山好きの母と鎌倉の山を歩いたり……。山頂に着いたときの達成感はもちろん、友人とすごす時間や下山後のビールのおいしさも大きな魅力。山に行くと自分がリセットされるような感覚になれるんです」

人と自然のつながりを山や花は教えてくれる

そんな春佳さんが「花が好き」という気持ちに気づいたのは、25歳のころ。ひとりで訪れたスイスの山旅がきっかけだった。

「マッターホルンのふもとを歩いたのですが、風景は素晴らしいし、人との出会いも楽しい。『ひとりでも海外旅行ができる』という充実感もありました。そんな旅で気づいたのが、高山植物の写真ばかり撮っていること。子どものころから花は好きだったけれど、心底好きなんだなぁ、って(笑)」

▲上・下)スイスアルプスでのトレッキングは「花が好き」という気持ちに気づくきっかけになった。「『自分の好きな場所に、自分の力で行ける』。そう感じられたことは、当時の私にとって大きな成功体験でした」

そんな発見もあって、帰国後は毎週一本の花を買って家に飾ることが習慣になった。自宅を彩る花は少しずつ増え、やがて枯れていく。「もったいない」と感じた春佳さんはドライフラワーを作って友人にプレゼントしたり、自宅でブーケ作りのワークショップを行なったりするようになる。

「その活動を喜んでくれる人が、予想以上に多かったんです。『また参加したい』と言ってくれる人やSNSに上げてくれる人……。そんな反響を実感したときに、自分のなかで稲妻が走ったような気がしました。『これだ!』って」

きっとそれは、「ものづくり」と「花」というふたつの〝好き〞が、結びついた瞬間だったのだ。

ロスフラワーに込めた想い

花と生きていこう——。そう決意した春佳さんは、生花店で短期アルバイトをしていたときに大量に廃棄されている花があることを目の当たりにしてショックを受ける。その経験から生まれたのが、廃棄される予定の花に新たな命を吹き込む「ロスフラワー」という視点だった。

「式場や生花店で役目を終えた花がきれいなうちにゴミとして扱われことが悲しかったし、農家で廃棄されてしまう規格外の花だって美しい。花は、人間と同じで一つひとつ個性が違う。だからこそ心惹かれるのだと思います。花を捨てずに長く楽しむような文化をつくれないかと思ったんです」

不揃いでも、枯れかけていても、花は美しい。そんな春佳さんの感覚は、野に咲く花を見つめるなかで育まれてきたものかもしれない。

花には人を幸せにする力があると思います

「ロスフラワー」には、花の廃棄に対する心苦しさやコストを減らせることや、循環型経済に貢献できること、売れ残った花を買い取ることで生花店や花農家を応援できることなど、さまざまなメリットがある。そのコンセプトに共感する仲間や企業は少しずつ多くなり、春佳さんの活躍の場は、大きく広がっている。現在の春佳さんはフラワーサイクリストとして日々どんなことを思い、花と向き合っているのだろう。

▲上)2020年には「街に咲くロスフラワー」をテーマにラフォーレ原宿の館内装飾を担当。下)ユニクロとのコラボでは、廃棄予定のサンプルにロスフラワー装飾を施した

「山や海などの自然のなかですごしていると、地球は人間中心にあるわけではないことを実感します。それは、都会では忘れてしまいがちだけれど、大切な感覚だと思うんです。家に切り花を飾るだけで、植物の生命力を感じたり、そこにやってくる虫の存在に気づいたりもする。一本の花が、人と自然とのつながりを思い出すきっかけになれば、と思っています」

▲上・下)高知県本山町の白髪山の中腹に広がる八段奈路(はったんなろ)は、忘れられない場所のひとつだという。「人の手が入っていない原生林には、美しい巨木や苔が広がっていました。自然のエネルギーを感じられた旅でした」

 

河島春佳さん

長野県生まれ。フラワーサイクリスト/ RIN 代表。2014年から独学でドライフラワーづくりを始め、「花のロスを減らし花のある生活を文化にする」を合言葉に活動を行なう

 

「だから、私は山へ行く」
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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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