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4年ぶりに復活。富士山型のおみこしが行く!(富士山開山祭り)│ 神様百名山を旅する 番外編がやってきた!

自分らしく自然を楽しむ女性を応援する隔月誌『ランドネ』で連載中の「神様百名山を旅する」。今回は番外編として、7月1日に富士山五合目で行なわれる開山祭にランドネ読者のみなさんと参加してきました。

富士山開山祭

富士山の概要

山梨県/2,300m
御祭神◎磐長姫命、桜大刀自命、苔虫命
ご神徳◎登山安全、家運隆昌、縁結び
タイプ◎うっかり霊山

お祭りの概要

富士山ではふもとの富士浅間神社でも6月30日と7月1日には開山祭が行なわれますが、じつは山梨県側の富士山の五合目でもお祭りが行なわれています。小御嶽神社の富士山開山祭です。このお祭りでは富士山型のユニークな形をしたおみこしが出ることで有名。また、標高2,300mの五合目でのおみこしは、全国でももっとも標高の高いところで担がれるおみこしでもあります。

巡礼度 ★★★★★
歴史度 ★★★
登山度 ★★
温泉度 ★★

旅をするのは

広田勇介さん

山岳ガイド/フォトグラファー。富士山を300回以上登って信仰登山に興味をもち、各地の霊山の取材を続けるサスライの山岳お遍路

山開きのお祭りで、 山のおみこしを担ぐ

今回は、いつもの神様百名山とはうって変わって、富士山で行なわれた山開きのお祭り、開山祭のレポートです。夏山シーズンまっさかりですが、7月1日には各地の高い山々で「山開き」が行なわれました。でも、少し考えてみると、冬や春にも山に登っているのに、なぜ、夏になると「山開き」というイベントが毎年行なわれるのでしょうか?

その答えは、じつは神様百名山のテーマでもある山岳信仰の世界と深い関わりがあります。その昔、日本のほとんどの山は「霊山」といって神様が住む世界として、登山が禁止され、山のなかに入ることすら許されない時代がありました。そういう時代でも、修行のためや「登拝」といって山の神様にお詣りに行く人々のために、夏の限られた期間を巡礼者のために開放していました。これが「山開き」の由来と言われています。山開きのタイミングは登山道から残雪が自然となくなる時期が多く、3月から始まり、標高の高い山で7月に行なわれます。

富士山では7月1日に山梨県側でも山開きが行なわれますが、ふもとの浅間神社のほかに、五合目にある小御嶽神社でも開山祭が行なわれました。小御嶽神社は神様百名山の第一回でご紹介した小御嶽山の上に建っている神社です。

え? 今回は富士山の話じゃないの? と思われる方もおられるかもしれませんが、富士山というのは、最近の研究では4回の大きな爆発でいまの形になったとされており、いま見えている3776mの富士山の中には、マトリョーシカのように、ミニチュアの富士山が三つ隠されているのです。

今回、お話させていただく小御嶽山は富士山の中にしまわれている一番古い富士山で、いわばオリジナルの富士山ともいえる山。しかし、その大部分は富士山の下に埋まってしまっているのですが、山梨県側の五合目、つまり小御嶽神社のあたりには小御嶽山の地層が露出していることが知られています。富士山はパワースポットとしても知られている山ですが、その富士山を作ったパワーの源はここ小御嶽山にあるという訳ですね。

しかも、この話のすごいところは、昔の人もこの事実(小御嶽山が富士山よりも古い山であること)を知っていたと思われ、その証拠に、小御嶽神社には富士山の神様(コノハナサクヤヒメ)よりも年上でお姉さんの神様(イワナガヒメ)が祀られているところです。まだ科学や地質学が発達する前から、昔の人々が直感的に富士山の成り立ちを知っていて、それを神様の家族構成にまで当てはめていたことが驚きですね。

▲お祭りのあとに神社で直会(なおらい)と言って、神様への贈りものをいっしょにいただく

さて、この富士山開山祭では、毎年、富士山型のおみこし、通称「御影」が出ることが知られています。富士山型の「御影」は、噴火して燃えている富士山を表すかのように朱で真っ赤に色づけされていて、とても情熱的。さらにこのみこしは全国でもめずらしい女みこし。女性しか担ぐことが許されないガールズみこしであり、男子は触ることすら許されません。

また、通常、お祭りのときにおみこしを担げるのは「氏子」といって、神社のある町内に住み、普段から神社にお参りに来ているいわばローカルだけで、アウェイの人間がいきなりやってきても、担ぐことが許されないのです。今回は宮司の小佐野さんの計らいで、ランドネツアーに参加してくださったみなさんや、あとでご紹介する和太鼓奏者の千代園剛さんのお仲間も、富士山型の「御影」を特別に担がせてもらうことができました。

▲おみこしは五合目をめぐり、富士山コーヒーをいただいた

このお祭りは朝10時に始まりました。残念ながら天気予報は雨。関東はそれほどでもないものの、実際に五合目に到着した際には風雨ともに激しく、おみこしは絶望的と思われるような天気でした。ご神事に参加し、宮司さんが神様の前で祝詞を唱えているあいだもおみこしがでますように、無事に開山祭ができて、安全な夏山シーズンが始まりますようにと、心の中でお祈りを続けました。

すると、ご神事が終わるころには、屋根を激しく叩く雨音は遠ざかり、先ほどまでビュービューと唸っていた風も、爽やかなそよ風に変わっているではありませんか。これには参加者のみなさんもサプライズで大喜び。

▲祈りが富士山に通じたのか、雨がやみ、大天狗が注連縄を勢いよく断ち切って山が開いた

そこから毎年恒例の神社の鳥居にかかった太い注連縄(しめなわ)を、小御嶽神社の神様のお使いである大天狗が斧で「えいや!」と断ち切り、無事に山が開かれました。その後、「わっしょい! わっしょい!」と声をあげながら、いましがた開いたばかりの鳥居の下の登山道をおみこしが通っていくのでした。コロナ禍で中止になっていたお祭りもじつに4年ぶりに復活したわけです。うれしいですね。何しろ日本一の山の開山祭ですから。このお祭りがなければ日本の山の登山道も開かないんじゃないか? と思われるような大切なお祭りです。

▲ご神事には消防、警察、環境省レンジャーなど夏山に欠かせない人々が集う。宮司が祝詞を唱える あいだ、雨が激しく屋根を叩いていた

ちなみに、おみこしとはお祭りの期間、一時的に神様の魂をおみこしに乗せ、氏子さんのいる町内をめぐってもらうための乗りものでもあります。おみこしは五合目のロータリーをひと通りまわり、五合目のレストランや売店をめぐり、ツアー客や海外から観光に来ている外国人のみなさんにも大人気。五合目やレストランをめぐり、雨にも降られず、無事におみこしを神社に戻すことができました。

千代園剛さんの太鼓の音が響くと
雲を破って、富士山が姿を現した

その後は、小御嶽神社の鳥居前で、和太鼓奏者の千代園さんの奉納演奏です。千代園さんは紅白歌合戦にも出場された和太鼓奏者で、以前、ランドネでもご紹介した愛知県豊田市の足助飯盛山でのお祭りにも参加して、山頂で和太鼓を 演奏しました。

▲「外で演奏します」。微妙な天気をものともせずに演奏を始めると、空から光が差し始めた

昨年は富士山の山頂でも演奏され、帰りに小御嶽神社にお礼参りに立ち寄って太鼓を演奏されました。そのご縁から今年の開山祭で演奏することになり、青空の下(ついに光が差し始めました!)、富士山に向かって大きな音をとどろ かせたのでした。

雨が上がって、お中道を行く

お祭りの終了後、ツアー参加者のみなさんは、私、広田勇介のガイドで、小御嶽神社から富士山のお中道からお庭の天狗社という神社を目指して、ミニハイキングツアーに出発。

富士山のお中道とは富士山の五合目付近の標高をぐるっと一周するルートですが、現在は西側の大沢崩れの崩壊がひどく、一周はできない状態になっています。富士山というと、草も木も生えないイメージがありますが、五合目の標高2300m付近は森林限界の下なので、雨のあとで潤いのある樹木や草花が迎えてくれました。

▲上)富士山の噴火によって出来た溶岩流の跡。下)小さなコケモモの花が咲いていた。実をつけるのはあと1 カ月後くらいだろうか

普段は見ない角度から富士山を眺め、遠くに見える御坂山塊、河口湖など眺望もバッチリ。天気予報をいい意味で疑って、現場で天気を見ながら判断できるようになると、思わぬご褒美をもらえることがあります。

参加者のみなさんも、先ほどまで担いでいた富士山みこしの重さを肩に感じながら、青空の下、足をすすめていきます。

▲富士山の下に埋もれる小御嶽山の頂上。目には見えない古代の富士山を感じる

お祭りっていいなあ。とくに山の神社のお祭りっていいなあ。とそれぞれ想いながら。これぞ日本にしかない山の楽しみ方。今後も神様百名山では、日本各地の山の神社のお祭りに参加して、日本ならでは山の楽しみ方をご紹介していきます。ご期待ください!

小御嶽山~御中道~御庭 ガイド

Course

小御嶽神社
↓40分
御中道
↓10分
御庭
↓20分
御庭バス停

Advice

御中道と御庭ハイキングであれば、ローカットの靴でも歩くことができる。ただし、完全な山道なので雨具などの万が一の雨対策は必要

Access

JR新宿駅バスタ新宿より直通バスで約2時間半。富士急富士山駅よりバスで約45分。マイカーの場合、中央道河口湖ICより車で五合目まで40分

Information

◎富士吉田市富士山課
TEL:0555-22-1111
◎小御嶽神社
TEL:0555-72-1475

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PROFILE

ランドネ 編集部

ランドネ 編集部

自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

ランドネ 編集部の記事一覧

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