焚き火マイスター 猪野正哉さん(中編)│低山トラベラー、偏愛ハイカーに会いに行く#15
ランドネ 編集部
- 2023年12月16日
低山トラベラーの大内征さんが山好きさんと山を歩く、連載「偏愛ハイカーに会いに行く」。山の愛し方は人それぞれ、とはいうけれど。十人十色の偏愛ワールドをのぞいてみれば、これからの山の愛し方とその先の未来が見えてくる、かもね。
今回の偏愛さん
焚き火マイスター 猪野正哉さん
焚き火マイスター、アウトドアライター、アウトドアプランナー、モデルなど多彩な才能をもつ。そのためTV、雑誌、イベント、YouTube などさまざまなメディアにゲスト出演し、アウトドアの魅力を伝えている。著書は『焚き火の本』『焚き火と道具』(いずれも山と渓谷社)
Instagram @inomushi75
どん底からの復活、転機の明神ヶ岳ハイク、そして高橋庄太郎さんとの出会い
18歳のとき、約3000人という応募者を勝ち抜いてメンズノンノの専属モデルとして活動を始めた猪野さん。ところが、信頼するスタイリストと立ち上げたアパレル事業に大失敗してしまう。金銭トラブルから思わぬ裏切りにも遭い、プライベートまでことごとくうまくいかない日々。極度のメンタル不調に陥ったという猪野さんを救ってくれたのは、家族との話し合いで囲んだ〝焚き火〞だったそうだ。
だれにも言えなかった多額の借金の悩みも、相手とのあいだで柔らかく揺れる炎がクッションとなって受け止めてくれて、嘘のように打ち明けやすくなることに気がついた。ゆくゆく「焚き火」を生業にする原点のひとつである。
そのいっぽうで、どん底でもなんら変わらない付き合いをしてくれる友人が少なからずいたのは救いだった。そのひとりである友人の堀井康裕さんに、なかばムリやり箱根の明神ヶ岳まで連れ出されたことが、これまた大きな転機となった。
初めての登山はしんどくて、ずっと歩き続けるのはとてもきつい。自然、ときおり立ち止まったり、ふり返ったり、深呼吸をしたり。日常生活では意識をしないこの動き、人生にも通じるという気づきにつながった。それから山のことが気になりは じめ、書店で手に取った『PEAKS』で高橋庄太郎さんを発見することになる。この流れ、運命そのもの。
PEAKS読者にはおなじみの庄太郎さん、じつは山岳/アウトドアライターとして独立される前は、メンズノンノの編集部員だった。メンズノンノの専属モデルを2年間務めた猪野さんにとっては、お世話になった編集担当者なのだ。そんな人が、なぜか登山誌でライターをやっていたのだから、それは驚いたことだろう。しかし、猪野さんは明確な目標をひとつもつことになる。それは「いつか庄太郎さんといっしょに登山誌に出る!」ということだ。
果たして「山にも登れるファッションモデル」というポジションを築いた猪野さん、山と渓谷社から当時出ていたワンダーフォーゲル(現在は惜しくも休刊)での山モデルデビューを皮切りに、アウトドアライターへと転身していくことになる。そして、目標としていた高橋庄太郎さんとの登山の仕事も『PEAKS』で実現。そこで交わした握手のことは、生涯忘れられないと語ってくれた。
低山トラベラー、山旅文筆家
大内征(おおうち・せい)
歴史や文化をたどって日本各地の低山を歩き、ローカルハイクの魅力を探究。NHKラジオ深夜便、LuckyFM茨城放送に出演中。著書に『低山トラベル』など。ライフワークは熊野古道
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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