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競技歴4年で表彰台に立った新星 下島将輝【La PROTAGONISTA】

大学2年からレースを始め、たった4年でプロ入りした新星、下島将輝。
今季那須ブラーゼンを背負って立つ存在にまで成長した。
そのフィロソフィーをプロタゴニスタは追った。

■■■ PERSONAL DATA ■■■
生年月日/1993年3月13日 身長・体重/180cm、63kg
スポーツ歴/バスケットボール6年、自転車競技8年 趣味/カフェ巡り

那須ブラーゼン 下島将輝

【HISTORY】
2012〜2014  大阪経済大学自転車競技部
2015     コラッジョ川西
2016〜     那須ブラーゼン

 

アタックの末に勝者は1人厳しい世界に生きていく

2019年6月 Jプロツアー那須塩原クリテリウム。この地を拠点とする那須ブラーゼンにとっては勝負への期待のかかるホストレース。

今季絶好調のチームブリヂストンサイクリングの窪木一成、マトリックスパワータグのオールイス・アルベルト、宇都宮ブリッツェン岡篤志などスピードマンがそろうスタートラインに下島将輝は並んだ。「このコースはコーナー立ち上がりの連続。追手となっては勝負のチャンスをつかむことはできない」

号砲と同時に、めまぐるしく選手が入れ替わり進んでいく高速の展開が始まった。急激に伸び縮みするプロトンの中で、五感を研ぎ澄まして反応しチャンスをものにする。レース序盤の先行グループに下島のチームメイトの西尾勇人が乗った。スプリントポイントを過ぎた直後、後続との差が開いた流れに乗じてエスケープグループが強烈にリードする展開に。「レースは動いた!」メイングループから宇都宮ブリッツェン阿部嵩之、チームブリヂストンの今村駿介がアタック。同時に下島の身体は瞬間的に反応した。先行していたグループを捉えた!

勝負のときが近づいてくる……。

しかし12人の選手たちの勝利へのシナリオが交錯したタイミングで、後方から窪木一成を送り込めなかったブリヂストンが強烈な追い上げを開始した。これぞプロレース、手に汗を握る展開にファンは痺れた。この動きで先行グループはさらに活性化、勝負は6名の選手に絞られた。「苦しい、勝負が目の前から遠のいていく……」下島選手は脱落した。このとき彼の身体にかかる重圧はピークを越えていた。

レースを重ねて学んできたこと

「脳裏には2年前の那須ロードレースでの無念がよぎりました。『勝ち逃げ』に乗りながらも最後に脚が攣り12位でゴール……。ほんのひと摘みの勝負のチャンスを目の前に、ほとんどが失敗に終わってしまう現実。自分の走りでいろいろな想いをパーにしてしまう、悪いことをしているわけでもないのに罪悪感にかられる……」こんな葛藤は幾度も味わってきた。

しかし今年は那須ブラーゼン4年め、失敗を重ねても次につなげていく強さも身につけた。「ごまかしがきかないプロレースの世界。ひとつのレースの出来事に一喜一憂しすぎると身体も心も持たなくなる。気合いと根性でも越えられない壁、これは練習で乗り越えていくしかないんです」

レースを振り返り少し空を仰いだ目線の先には、那須ブラーゼン先代のキャプテン吉岡直哉選手(現 チーム右京)の背中が重なった。

競技歴4年でJプロツアーの表彰台へ

2016年、那須ブラーゼンに入団してまもなく、清水良行監督(当時)にスプリント能力を見出された下島は、レースをきっかけにその能力を開花させた。「僕がスプリンターとして自信をつけたレースを振り返れば、捨て身でチャンスを作ってくれた吉岡さんのリードがありました。Jプロツアーで勝利する実力がありながら、ときにキャプテンとしてチームを育てる走りに徹する彼に感銘を受けました」

記憶に深い勝利は那須ブラーゼン1年め、2016年の京都美山ロードレース。愛三工業、キナン、シマノなどJプロツアーの一線級の選手たちがそろったレースでシマノの入部正太朗らを含む11名のエスケープに乗ることに成功した。「最終局面のメンバーを見ればJプロツアーで活躍する選手ばかり。一度は危険な逃げを吉岡さんが捨て身で潰して、僕に与えてくれたこのチャンス……負けるわけにはいかない!」

コーナーを抜けると、現れるゴールラインまでの距離を測り、仕掛けるタイミングを確信し一気に腰を上げた。野中竜馬選手(キナン)を捲り、大きく手を広げた初勝利は新星スプリンターとしてメディアに大きく取り上げられた。スプリントに自信をつけ、続くJプロツアーおおいたいこいの道クリテリウムではとうとうJプロツアーの表彰台に乗った。「このときも勝ち逃げに吉岡さんと乗り、吉岡さんは僕のスプリントに賭けて、危険な動きにすべて対応しゴール前に押し上げてくれました」

試合巧者の鈴木譲の先行は強力で、抜くことはできなかったが、入部選手と肩をぶつけながらゴールし3位に入賞した。「競技経験が浅かった僕に大きなチャンスを託してくれたことがどれだけありがたかったか……。僕が強い選手を倒していくことが成長の証であり、期待してくれる方々への恩返しでもありました。『マサがそこまでやるとは思わなかった』僕がプロであるためにはまわりの期待を越えていけばいいという思いで着実に歩んでいました」

那須クリテリウムでは、今村俊介に続き、アタックを決めた下島選手

ロードレーサーになりたい

クリテリウムなどの高速で展開するスプリントレースでは自分の能力を感じていたが、2017年はレースの展開に対して気持ちにギャップが生まれていた。「この年、強豪チームによるレース運びが強力で、トレインのはるか後ろで位置取り争いをしている自分に歯がゆい思いでいました。僕のスプリント力を人数が絞られるロードレースの最終局面で発揮したい……。『ロードレーサーとしてのフィジカルが欲しい』と次第に感じるようになりプロ3年めのオフは〝虎の穴〟として知られるタイでのトレーニングキャンプに参加しました。ここに来る選手たちは僕より若い世代のプロを目指す選手ばかり、それでも自分を変えたいという気持ちが前にありました」

しかし、3週間で2700kmのトレーニングを終えて那須に戻ると、ヒザに違和感を覚えるようになっていた。頑張るのが正義と唱え続けてきて初めての故障。少しよくなっては走り出し、また痛みに止まるを繰り返していた頃、たまたまとおりかかったクルマから声がかかった。「出かける途中の吉岡さんでした。いつもは走れないと『手ぇぬいているだけだろ』と叱咤する彼の口から『無理をしてはダメだ』と言われたときにわれに返りました。練習に絶対に手を抜かない彼の言葉は深かった。これまで『2つ道があるとすれば厳しい方を選べ』と言い聞かせて歩んで来た僕のイデオロギーに変化が起きました」

徐々に故障からの復帰を果たし、6月の全日本選手権ロードでは2度の機材トラブルに遅れるも19位と確実に走力は増していた。「タイでのオーバーワークも結果として休んだことでプラスに転じました。そして精神的にもひとつ厚みが増しました。今僕は憧れのプロ選手を生きている。ガムシャラから冷静に……、また次のレースを戦うためにキバを磨き、練習を重ねていくのが人生だと……」若くして那須ブラーゼンを背負って立つ下島選手。その表情は厳しいレースの世界で生きていく気概にあふれていた。

あの那須クリテリウムの敗北、しかし勝機に賭けた彼の全力の疾走は、身を削りながら戦うプロの走りであり、彼の生きざまでもあった。

 

REPORTER

管洋介

アジア、アフリカ、スペインと多くのレースを渡り歩き、近年ではアクアタマ、群馬グリフィンなどのチーム結成にも参画、現在アヴェントゥーラサイクリングの選手兼監督を務める
AVENTURA Cycling

 

La PROTAGONISTAの記事はコチラから。

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管洋介

Bicycle Club / 輪界屈指のナイスガイ

管洋介

アジア、アフリカ、スペインなど多くのレースを走ってきたベテランレーサー。アヴェントゥーラサイクリングの選手兼監督を務める傍ら、インプレやカメラマン、スクールコーチなどもこなす。

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