KEIRINグランプリはBMX出身の古性優作が勝利、賞金額約1億はツール・ド・フランス超え
山崎健一
- 2021年12月30日
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日本競輪界の年間総決算大会「KEIRINグランプリ」が、2021年12月30日(木)に静岡競輪場で開催された。静岡県といえば、東京2020大会でも自転車ロード&トラック、MTB競技の会場だったため、2021年グランプリの開催地としてはうってつけの場所。2020年初頭に始まったコロナ禍の影響で有観客としては実に2年ぶりの開催となり、会場観客の熱気は例年よりも高まった(*三密防止のため、入場は抽選&人数制限あり)。
注目の本レースは<波乱の結果に!>となり、大盛り上がりの中、華やかに幕を閉じた。ここでは熱いロード&競輪ファンで、UCI公認代理人の山崎健一さんが静岡競輪場からレポートをお届けする。
日本スポーツ界の最大級の大会であるKEIRINグランプリ、賞金総額はツール・ド・フランス以上
KEIRINグランプリの凄さを物語るポイントの筆頭は、優勝賞金の高額さ。たった数分間で決着がつく1レースの勝者賞金がなんと約1億円(2位は2,000万円)。世界最高峰の自転車ロードレースである「ツール・ド・フランス」の個人総合優勝者賞金でさえ3週間走って約6,500万円なので、その飛び抜けた高額さが際立っています。
大会全体で動く金額も別格。ギャンブルということでファンがお金を賭けるわけですが、KEIRINグランプリ(=12月30日第11レース目)1レースのみの売上総額(ファンが賭けた金額総額)は約56億円。これは世界最大のプロロードレースチーム「イネオス・グレナディアーズ」の年間チーム予算とほぼ同等です。
レースは民放TV局(日本テレビ系)でも生中継され、自転車メディアのみならず一般スポーツメディアでの露出も高く、まさに日本のすべての自転車競技における頂点と言える大会なのです。
男子プロ競輪レースは、約2,150人の選手たちによって、日本中にある43の競輪場でほぼ毎日開催。そして競輪界の頂点であるKEIRINグランプリに出場できるのはたった9名。さて、その枠を勝ち取るのはどのくらい難しいのでしょうか?
まずは2月〜11月に開催される計6つの競輪界最高カテゴリー「G1(グレード1)」大会の優勝者に出場権が与えられます。G1レースは通年での成績上位者約100〜160名で争われる4〜6日間で争われるトーナメント戦。よって、予選を勝ち抜き、精鋭がしのぎを削る決勝で勝たねばならないため、偶然で優勝することはまずなし。
G1レース勝者で埋まりきらなかった残り枠(例:同一選手が複数G1レースで勝利)は、G1勝者を除いた獲得賞金総額上位選手が埋める事となります。
つまり、年間を通した試練を潜り抜け、実力を証明した選手のみが立つことのできる文字どおりの頂上決戦なのです。
KEIRINグランプリのレース展開の特徴
競輪といえば、出身地や競輪学校の同期生などが組んで、自転車ロードレースのスプリントトレインに似たライン戦をイメージする方が多いかと思いますが、KEIRINグランプリに関しては少々様相が異なります。まずレース距離が2,825m(400mバンクx7周)、時間にして5分未満の一発勝負で1億円が手に入るとあって、一応は競輪のセオリーに沿ったライン戦ながら、各選手自らの勝利を目指す傾向が極めて強いレース運び。そして出場選手の強弱が比較的明白な通常開催レースとは異なり、グランプリは全員強い。よって、誰が勝っても全くおかしくなく、予想が極めて難しいのが特徴。
実際、2019年は9選手中8〜9番人気の佐藤慎太郎選手(44歳)が、翌2020年は7番人気の和田健太郎(39歳)が優勝。活きが良いとされる若手トップ選手たちを、ベテラン選手が粉砕する大波乱となりました。どれくらいの波乱だったかというと、上位2選手の順位をずばり言い当てた「2連単」的中者の獲得金は、2019年大会で191.1倍(64番目人気の予想)、2020年大会では200.2倍 (55番目人気の予想)となりました。いかにKEIRINグランプリが波乱に満ちた大会かがわかる数字です。
通常レースのオッズ表
KEIRINグランプリのオッズ表
つまるところ、競輪を知らない方によるフィーリングでの予想でも、競輪予想のベテランに勝ちうるのがKEIRINグランプリと言えるかもしれません。
さて、注目の2021年大会の結果やいかに!?
2021年大会出走表
2021大会は、日本競輪界を代表する新田祐大(福島/35歳)&脇本雄太(福井/32歳)が、東京五輪のトラック競技に集中した関係でグランプリ出場権獲得が叶わず、比較的オープンな大会に。
まず主軸となったのは、グランプリ12回目で悲願の初優勝を狙う平原康多(埼玉/39歳)を筆頭とした、共に初出場となる宿口陽一(埼玉/37歳)&吉田拓矢(茨城/26歳)の関東勢3名。次に、今シーズンは特に前半戦で大暴れした郡司浩平(神奈川/31歳)の後ろに、2019年大会覇者の大ベテラン佐藤慎太郎(福島/43歳)+佐藤を慕う守澤太志(秋田/36歳)が付く3名の北関東+神奈川ラインも怖い存在。
そして比較的目立たない時代が続いた中国選手勢の期待を背負う、グランプリ出場3回目の松浦悠士(広島/31歳)&4回目の清水裕友(山口/27歳)も強力。
最後に、グランプリ初出場&ジュニア時代にBMX全日本王者経験もある、近畿勢唯一の古性優作(大阪/30歳)が、単騎でどうレースを掻き回すのかに注目が集まった。
単騎の古性優作(大阪)がゲリラ戦略で初出場にして初勝利!
さて、レース結果をずばり書きますと、主導権を握る関東勢を他の地域ラインが厳重警戒してレースが進む中、最終局面で先頭の関東勢3名直後から単騎でズドーン!と仕掛けた古性優作がそのまま逃げ切り勝利。孤軍奮闘で、連携を組む他地域ラインを出し抜いた形の見事な勝利で、2021年度の競輪を締めくくるにふさわしいレースとなった。
古性はレース後に「近畿勢の先輩からレース前に応援の電話をたくさん頂きプレッシャーにもなったが、近畿勢代表の責任感をもって走った。来年以降はそのプレッシャーをバネにしつつ楽しめる選手になりたい。1億円賞金の使い道は……欲しいものが全くないので(笑)、さらに強くなるための身体への投資に使っていきたいですね。」
結果「KEIRINグランプリ2021」
1位:古性優作(大阪/30歳) 捲り
2位:平原康多(埼玉/39歳) 差し
3位:郡司浩平(神奈川/31歳)
<払戻金>
2車単:「④>③>」=2,380円(11人気)
3車単:「④>③>②」=10,520円(32人気)
※公式結果はJKAWEBサイトよりご確認ください。
Keirin総合サイト
http://keirin.jp
ガールズグランプリは高木真備、ヤンググランプリは小原佑太が勝利
なお、女子競輪&若手男子選手の頂上決選である「ガールズグランプリ」「ヤンググランプリ」もKEIRINグランプリ前の28日&29日に開催され、ガールズは下馬評を覆した高木真備(27歳・東京=106期)が、ヤングはトラック競技でのパリ五輪出場を目指す小原佑太(25歳・青森=115期)がそれぞれ栄冠に輝いた。
おまけ:筆者 山崎健一の予想
さて蛇足ですが……筆者が購入した車券はこのとおり。この③と④を逆に買っていれば……と悔やむのがまた競輪の醍醐味!? まだまだ修行が足りないようです……。
動画、観客席からのゴール風景
静岡競輪場サイト
https://www.shizuoka38.jp/
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