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バブルの緩和や観客のノーマスク、通常開催が見えてきたツール・ド・フランス

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大の最中で開催された、ツール・ド・フランス2021。決してフランスも世界的に見て例外ではなく、一時は劇的な減少傾向にあった新規感染者が大会期間中にリバウンド状態になるなど、高いリスクの中での大会だった。それでもツールは“ロードレースの正常化”を目指して日々進み続けた印象だ。いまなお部分的なコロナ対策は強化されつつも、本来あるべき姿に戻る…いや、アフターコロナを視野に前を向き始めているというべきか。そんなツール現場の実際をレポートする。

レースバブルからのPCR検査陽性者はゼロ

世界的な新型コロナ感染拡大で2カ月遅れで開催された昨年と比較し、大きな違いの1つとして、レースバブル内からの陽性者が発生しなかったことが挙げられる。

選手・チームスタッフだけが入ることのできるレースバブルは、原則としてはプレス(報道関係者)や一般客との接触はなく、感染予防に努めながらレースに臨むことが求められる。このバブルの内外はバリケードで隔てられ、バブル外の者は物理的にも入場は不可能になっている。

ただ、実際はバリケード越しにバブル外の者との接触は容易にできるような状況にあった。バリケードはあくまで内と外とを分けているだけで、子供でも上半身を乗り出して中を覗けてしまうくらいの高さ。昨年の一部ステージのような壁で四方を囲むような強固さではなかったのだ。何より、内外の隔たりのない接触に対するガードが、ステージを追うごとに大会側も、そしてチーム側も緩やかになっていった、という点も大きい。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

主催者からは、大会前にプレスに対して「選手への取材はミックスゾーンで、指定されたメディアのみ可能とする」との通達がなされていたが、それも大会の進行とともに“自然軟化”。スタート前のチームパドックでは、取材陣の求めにできる限り応じようという一部選手の姿もあった。

そうした状況でありながら、レースバブルからの陽性者はゼロ。昨年は数チームのスタッフが大会期間中のPCR検査で陽性となり大会から引き上げていたが、今回はそのような事例はなかった。

新型コロナ禍でレースが進む中で、各チームの感染予防や対策が奏功していると見てもよさそうだ。どのチームも、チームバス内に消毒液設置は当たり前。なかには、チーム単位でのワクチン接種を行ったケースもあり、そうした取り組みが今回の感染者ゼロへの要因の1つとなっていると考えられる。

チームバスには消毒液が設置されるのがスタンダードになっている ©︎ Syunsuke FUKUMITSU

沿道ではノーマスク、「密」での観戦も当たり前に

ガードの緩和が関係してか、はたまたこちらが大会そのものに影響を与えたのか、沿道にも多くのファンが戻ってきた。

昨年はスタート前後100m、フィニッシュ前300m(ステージによっては500m)への一般客の立ち入りは原則禁止とし、ステージによっては山岳区間への入場に時間制限を施し、実質観戦を不可能にしたりとさまざまな策を講じた。

ただ、今年は開幕日・第1ステージのスタート地点からファンが密集。日々、大会スタッフを配備できるスタート・フィニッシュ地点ではマスクの着用呼びかけや、昨年に引き続いて「消毒隊」の出場などで感染対策を図ったが、途中のコース上では「密」は当たり前。ノーマスク、大声での声援も随所で見られ、さすがに1日あたり200km前後が基本のレースコースすべてでスタート・フィニッシュ地点同様の措置は不可能な状況だった。

感染対策・予防の観点から見れば確かに危険極まりないシチュエーションではあるが、一方でツール本来の姿に戻りつつあることも実感できる光景ではあった。日本人である筆者からすると、すべてを肯定できるものではなかったとはいえ、現場にいる以上は実情に則した対応を心掛けた次第である。

©︎ A.S.O./Charly Lopez

ノーマスクでいえば、大会が進むにつれてポディウムに上がった表彰対象選手が意識的にマスクを外していたことも印象的だった。元をたどれば、フォトグラファーからの求めに応じたところから始まりだったとみられるが、日を追うごとにできるだけマスクを外して笑顔を見せようとする選手たちの姿勢が高まっていたように感じられる。このあたりにも、「ツール本来の姿」を取り戻す要素が現れている。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

ちなみに、アンドラからフランスへ戻る際に必要とされていたPCR検査の受検、ならびに陰性証明は、アンドラ入りする日の直前に「特例」として免除された。プレスを含む大会関係者向けにPCR検査会場を設定することを、一度は対象となる人に向けてアナウンスされていたが、数日後にそれを取りやめるとの決定が下され、ツールが通過する期間に限って特別に無受検で両国を行き来することができた。

前述のチームバブル内での対応や、スタート・フィニッシュ地点を含むレースコースでのファンの観戦、表彰対象選手のマスク外し、大会途中のPCR検査の免除などは、ツールを主催するA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)が新型コロナ禍でのレース運営・ノウハウを心得たことや、前記したチーム独自の取り組みによるプラスの面が効果的に表れている証拠だといえるだろう。

ツールの正常化=国の正常化、ではない

とはいえ、フランスにおける新型コロナウイルスの感染状況が芳しいわけではないことは理解しておきたい。

ツールが開幕した6月下旬の1日あたり新規感染者数は2000人を割る数字だったが、7月に入って急上昇。大会閉幕前日の717日には10949人の感染が確認されている。要因としては、バカンスシーズンを前にいくつもの規制を解除したことで、人々の移動が容易になったことが挙げられる。こうしたことを受けて、712日にはマクロン大統領が国民に対して夏の間のワクチン接種を呼び掛け、8月からはレストランや商業施設などへの入場には衛生パスポート(陰性証明書またはワクチン接種証明)の提示を必要とする考えを表している。

そんな中で開催されたツール。フランス国内情勢への直接的な原因ではないとしても、大勢の人が動き、ところによってはノーマスクや「密」が発生していることを考えると、遠因にはなっていたのでは?と思わずにはいられない部分もある。イベントとしての正常化は近づきつつあるが、国の感染状況に沿ったレース運営を進めていく必要性が今後出てくるかもしれない。

©︎ A.S.O./Charly Lopez

日本でもまもなく東京五輪の開幕を迎えるが、大多数の競技が無観客で実施される。24日から決勝種目が始まるロードレースにおいても、沿道観戦自粛の要請が出されている。日本とフランス、五輪とツールそれぞれに規模や国内情勢が異なるゆえ単純比較は難しいが、それら呼びかけの効果や人々の対応によって吉と出るか凶と出るかは興味深いところである。

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2020年07月18日

 

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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