コルトがスプリントを制して今大会2勝目、ログリッチやイェーツ落車も総合変わらず|ブエルタ第12ステージ
福光俊介
- 2021年08月27日
ブエルタ・ア・エスパーニャは現地8月26日に第12ステージを実施。2つの峠を越えて古都コルドバへのフィニッシュは、マグナス・コルト(EFエデュケーション・NIPPO、デンマーク)が集団スプリントで勝利。第6ステージでは激坂を逃げ切り、前日の第11ステージでもその再現まであと一歩に迫っていたが、今度はスプリントで2勝目を挙げるマルチぶりを発揮。個人総合順位には変動がなく、オドクリスティアン・エイキング(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、ノルウェー)がマイヨロホをキープ。プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)やアダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)ら上位陣が途中で落車に巻き込まれたが、その後立て直して無事にレースを終えている。
ハイペースのレースは39人の集団スプリントに
3日連続の丘陵ステージ。その最後は、ハエンからコルドバまでの175kmに設定された。
中盤までは下り基調と平坦路が続き、後半に入るとコルドバを基点とする周回コースへ。残り70kmからの1周目では、3級山岳アルト・デ・サン・ヘロニモを登坂。いったんコルドバへ戻って、残り約30kmからの2周目では、2級山岳アルト・デル・14%へ。「14%」の名がつくが、実際は頂上前1kmで最大勾配16%と、峠の名前以上の急坂。これを上ると、あとはフィニッシュまで約19km。ダウンヒルと平坦を走って、コルドバへと到達する。
ここ数日と同様に、リアルスタートから激しい出入りとなった。一時は15人が先行する場面があったものの、集団へと引き戻される。その後も数人単位のパックがたびたび前をうかがうが、集団が容認せず。最初の1時間は50.2kmとハイペースで進んだ。
残り100kmを切ってプロトンはさらに活性化。アタックとキャッチが繰り返される中、残り84kmでようやく8人の逃げが決まる。ただ、メイン集団はこの逃げを完全に容認したわけではなく、2分以内のタイム差を保ったまま進行。こうした状況で、一度コルドバを抜けて迎えた3級山岳アルト・デ・サン・ヘロニモでリチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)がメイン集団から遅れ始めた。
さらに、残り54kmではメイン集団前方でクラッシュが発生。左コーナーから複数の選手がコースアウトし、有刺鉄線が張られるオリーブ畑へと飛び込んでしまう。ネルソン・オリヴェイラ(モビスター チーム、ポルトガル)が最もダメージを負い、ログリッチやイェーツといった個人総合上位の選手も巻き込まれてしまった。両者は何とか集団復帰を果たしたものの、UAEチームエミレーツによる牽引が続いていたこともあり、前線へ戻るのに脚を使う格好になった。
この頃には1分台と少ないリードになっていた逃げグループ。2級山岳アルト・デル・14%に前後してミケル・イトゥリア(エウスカルテル・エウスカディ、スペイン)やマキシム・ファンヒルス(ロット・スーダル、ベルギー)が独走を試みたが、いずれも流れを大きく変えるまでは至らない。ファンヒルスがメイン集団に捕まると同時に、ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)とジャイ・ヴァイン(アルペシン・フェニックス、オーストラリア)がアタック。ロマン・バルデ(チームDSM、フランス)とセルヒオルイス・エナオ(チーム クベカ・ネクストハッシュ、コロンビア)も合流し、4人で逃げ切りを狙った。
頂上通過後の下りでは、マッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ、イタリア)とヨン・イサギレ(アスタナ・プレミアテック、スペイン)が追走を図るが決まらず。最終盤の平坦区間に入って、人数を多数残したチーム バイクエクスチェンジがメイン集団を牽引。マイケル・マシューズ(オーストラリア)でのスプリントを狙って態勢を整えていく。一方、先頭4人は30秒前後のタイム差で粘りの走り。ローテーションを繰り返しながら残り距離を急いだ。
しかし、フィニッシュが近づくにつれてメイン集団の勢いが増していった。残り1kmを前にヴァインが単独で先頭に立って逃げたが、フラムルージュ通過直後に集団がキャッチ。これを計ったように、チーム バイクエクスチェンジから集団先頭を奪ったのがEFエデュケーション・NIPPO。イェンス・クークレール(ベルギー)が一気にスピードを上げると、続いたのはスプリントを狙うコルトとアンドレア・バジオーリ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イタリア)。その後ろはわずかに差がつき、マシューズ自らそのギャップを埋める状況になった。
そして残り200m、コルトがスプリントを開始。バジオーリが番手から迫ったが、コルトはトップを譲らず一番にフィニッシュラインを通過。ここまでは逃げで魅せてきたが、今大会2勝目はスプリント。器用さを見せつけて、ブエルタ通算5勝目を飾った。
39位までがコルトと同タイムフィニッシュとなり、個人総合上位陣はいずれもこの中に含まれた。エイキングは問題なくマイヨロホを守り、落車に見舞われたログリッチやイェーツもステージ完了。順位に変動はなかった。
新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は、山岳でチームメートを集団前方へと引き上げるなど重責を果たして、78位でステージを終えている。
27日に行われる第13ステージは、ベルメスからビリャヌエバ・デ・ラ・セレナまでの203.7km。ひたすら平坦路を進んでいくルートは、フィニッシュ前約11kmに置かれた中間スプリントポイントと最終局面とで、終盤に2度のスプリント機会が待ち受ける。ここまで数日間はスペイン南部を走ってきたが、この日から針路を北にとって大会後半の重要区間を目指していく。
ステージ優勝 マグナス・コルト コメント
「チームでの話し合いでスプリントは狙わないと決めていた。ただ、集団の人数が減った状況を受けて試してみたいと思った。チームメートもそんな私を信じてくれた。多くの選手が逃げを狙っていたレース前半は集団後方に待機していた。前日の逃げで疲れを感じていたが、2つの山岳区間を上手く越えることができたのも大きかった。最後はイェンス・クークレールが引き上げてくれて、スプリントに最適なポジションにつけることができた。マシューズやトレンティンらスプリントに強い選手たちにトライして勝つことができたので本当にうれしい」
マイヨロホ オドクリスティアン・エイキング コメント
「集団スプリントを想定していて、そのとおりのシナリオで終えられた。最後の上りで個人総合上位陣が動くことはなかったし、私とルイス(メインチェス)はチームメートのおかげで終始よいポジションを確保できた。大方の予想では次の平坦ステージでも総合に変化がないと見られているが、何が起こるかわからないので注意深く走っていきたい。マイヨロホの着用は本当に良い気分、次のステージが今から楽しみだ」
ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第12ステージ 結果
ステージ結果
1 マグナス・コルト(EFエデュケーション・NIPPO、デンマーク)3:44’21”
2 アンドレア・バジオーリ(ドゥクーニンク・クイックステップ、イタリア)ST
3 マイケル・マシューズ(チーム バイクエクスチェンジ、オーストラリア)ST
4 マッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ、イタリア)ST
5 アンドレアス・クロン(ロット・スーダル、デンマーク)ST
6 フェリックス・グロスシャートナー(ボーラ・ハンスグローエ、オーストリア)ST
7 アントニオ・ソト(エウスカルテル・エウスカディ、スペイン)ST
8 アントニー・ルー(グルパマ・エフデジ、フランス)ST
9 ジャンルーカ・ブランビッラ(トレック・セガフレード、イタリア)ST
10 マーティン・トゥスフェルト(チームDSM、オランダ)ST
78 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+9’12”
個人総合(マイヨロホ)
1 オドクリスティアン・エイキング(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、ノルウェー) 45:33’18”
2 ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)+0’58”
3 プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)+1’56”
4 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+2’31”
5 ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、コロンビア)+3’28”
6 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)+3’55”
7 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+4’46”
8 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+4’57”
9 セップ・クス(チーム ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)+5’03”
10 フェリックス・グロスシャートナー(ボーラ・ハンスグローエ、オーストリア)+5’38”
128 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+1:56’29”
ポイント賞(プントス)
ファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ、オランダ)
山岳賞(モンターニャ)
ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)
新人賞(マイヨブランコ)
エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)
チーム総合成績
イネオス・グレナディアーズ
ブエルタ・ア・エスパーニャ2021スタートリスト&コースプレビューはこちら↓
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。