BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

コルブレッリがパリ~ルーベ初制覇! マッドコンディションでの歴史的死闘を制す

クラッシュ、メカトラ、パンク……前日から降り続いた雨によってマッドコンディションとなったパヴェで、アクシデントが次々と選手たちに襲いかかった。そんな中、大きなトラブルを回避しながら前線へと進めた3人による優勝争い。いずれも初出場の選手たちによる勝負は、ルーベのヴェロドロームで決着。ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)が、フロリアン・フェルメールス(ロット・スーダル、ベルギー)、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)との死闘を制して、イタリア勢としては22年ぶりとなるパリ~ルーベ制覇を果たした。

降り続いた雨によって「北の地獄」色濃く

本来であれば4月に「北のクラシック」最終戦として行われるパリ~ルーベだが、今年はルーベを含むオー=ド=フランス地域圏における新型コロナウイルス感染状況が拡大していたこともあり、10月に開催を延期。昨年も一度は延期としながら中止としていたこともあり、時期を動かしながらも2シーズンぶりの開催にこぎつけた。

レースは、フランスの首都パリの北約80kmの街・コンピエーニュをスタート。東西へジグザグに針路を変えながら少しずつ北上し、ベルギーとの国境が近いルーベの街を目指す257.7kmのコースが設定された。

パリ~ルーベといえば、何といってもパヴェの存在が絶大。今回もスタートからおおよそ3分の1は舗装路を走り続けて、96.3km地点から全30カ所・全長55kmのパヴェセクションへと突入していく。それぞれのパヴェには主催者によって難易度がつけられており、アランベール(162.4km地点、セクター19)、モン=サン=ペヴェル(209.1km地点、セクター11)、カルフール・ド・ラルブル(240.5km地点、セクター4)の3カ所が最大の5つ星。とりわけセクション距離や石畳の粗さが際立っており、脚やテクニックの差が明確になりやすいポイントといえる。

さらなる要素として、前日から降り続く雨によって舗装路はウェット、パヴェはマッドなコンディションに。102日に行われた初開催の女子レースでは、いたるところでクラッシュが発生。荒れた路面に滑りやすさが、大会の別称「北の地獄」に飛び込む選手たちを試すこととなった。

クラッシュ、パンク、メカトラが多発

強い雨の中でスタートを迎えたレースは、コースコンディションのさらなる悪化が見込まれたこともあり、リアルスタートともに先行狙いの選手たちが次々とアタックを試みる。選手たちがひしめく集団より、人数の少ない先頭グループでパヴェ走行の負担を減らしたいとの狙いが多くのライダーから見受けられた。

早々にマッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ、イタリア)らが集団からリードを得るシーンが見られたが、しばし活発な状況が続いたメイン集団へと引き戻される。その後もアタックが散発したが、60kmほど進んだところで最大31人の先頭グループが形成。大多数のチームがメンバーを乗せたことにより、逃げとメイン集団との構図がはっきりとした。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

先頭グループはメイン集団に対して2分ほどのリードを得て、いよいよパヴェセクションへ。石畳の上は泥が覆い、走りながらバランスを保つのにどの選手もひと苦労。自然とグループがいくつにも割れたほか、パヴェ・舗装路問わずあちこちでクラッシュが発生。何人もが地面に叩きつけられたが、その中にはコーナーでのクラッシュに巻き込まれたペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ、スロバキア)の姿も。シュテファン・キュング(グルパマ・エフデジ、フランス)にいたっては、短時間に3度も落車する不運に見舞われた。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

先頭グループは、セクター27・サンピトン(110.1km地点)でフェルメールス、ルーク・ロウ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)、ニルス・エーコフ(チームDSM、オランダ)、マキシミリアン・ヴァルシャイド(チーム クベカ・ネクストハッシュ、ドイツ)の4人に絞られる。しばらくこのまま進んだが、ロウがメカトラブル、ヴァルシャイドがパヴェでクラッシュし、やがて先頭はフェルメールスとエーコフに。この2人を見送った選手たちが第2グループとして追走し、さらに2分ほどの差でメイン集団が続いた。

1つ目の5つ星パヴェであるアランベールを前に、メイン集団ではワウト・ファンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)がバイクを交換。マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)もメカトラブルで一時的に集団後方に下がったが、少しずつポジションを上げてくる。

そしてアランベール。問題なくクリアした先頭2人に対して、追走グループはトラブルに見舞われた選手が現れ分断。その後ろからやってきたメイン集団でも目の前でのクラッシュを避けたファンアールトが後ろに取り残されたほか、トラブルによって立ち止まっていたロウに数人が追突するなど、慌ただしい状態が続く。ここを抜けて、ファンアールトは何とか集団復帰。しかしこの直後にジェレミー・ルクロック(B&Bホテルズ KTM、フランス)の動きに合わせたコルブレッリが集団から飛び出し、さらにギヨーム・ボワヴァン(イスラエル・スタートアップネイション、カナダ)とバティスト・プランカールト(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、ベルギー)が合流し、4人による新たな追走パックが生まれた。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

先頭でも変化があり、第2グループの12人が最前線を走っていた2人に合流。さらに、セクター17・オルネン~ヴァンディニー(175.2km地点)通過をきっかけに分裂し、6人による先行態勢へと移った。

めまぐるしく変化するレースの流れに大きな局面が訪れたのは、ルーベまで70km以上を残したタイミングだった。4つ星のセクター15・ティヨワ~サール=エ=ロジエールで、メイン集団からファンデルプールが猛然とペースアップ。この直前にはバイクを交換しており、満を持しての仕掛けだったか。これを追った数人をすべて振り切り、集団後方を走っていたファンアールトは対応すらできないまま見送ることに。ファンデルプールはあっという間にコルブレッリらのグループに合流。結果的に、この動きが後に優勝争いへとつながっていくことになる。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

ヴェロドローム決戦はコルブレッリに軍配

ファンデルプールは、コルブレッリ、ボワヴァン、プランカールト、ルクロックを引き連れたまま追走。パヴェを越えるたびにファンアールトらを含むメイン集団との差を広げていく。同時に前を走っていた選手たちをキャッチしながら順位を上げていく。タイミングを同じくして、先頭は人数が絞り込まれ、フェルメールス、トム・ファンアスブロック(イスラエル・スタートアップネイション、ベルギー)、ジャンニ・モスコン(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)の3人となる。

セクター12・オシー=レ=オルシ~ベルシー(203.6km地点)で、先頭はモスコンの単独に。フェルメールスとファンアスブロックを引き離して独走態勢へと持ち込む。それからは快調にペースを刻んで、後ろとの差を広げていった。モスコンから遅れた2人には、ファンアールトらが合流。プランカールトが後方へと下がったこともあり、残り40kmを切ったところで5人がモスコンを追走する格好になった。

ここまで順調に走ってきたモスコンだったが、残り30kmで後輪がパンク。バイクを交換して再出発したがフィーリングが変わったか、セクター7・シソワン~ブルゲル(230.8km地点)で後輪を滑らせ落車。すぐに立ち上がって走り直すが、パヴェのたびにバランスを保つのにひと苦労。かたや、追走グループはペースを上げてモスコンが見える位置までやってきた。セクター5・カンファナン=ペヴェル(237.8km地点)でボワヴァンが落車し脱落するが、追撃の勢いは変わらず。最後の5つ星パヴェであるセクター4・カルフール・ド・ラルブルの途中でついにモスコンをキャッチ。残り16kmとしたところでコルブレッリがペースを上げるとモスコンは遅れ、これに対応したファンデルプールとフェルメールスの3人で先を急いだ。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

残り10kmで先頭3人とファンアールトらのグループとの差は1分以上の開き。3選手の中から優勝者が出るのは濃厚になった。早くから先頭を走り続けたフェルメールスに対し、驚異の追い上げで優勝争いに持ち込んだファンデルプールとコルブレッリ。勝利を賭けて一番に仕掛けたのはフェルメールスだった。残り3kmでのアタックは失敗となったが、隙あらば攻撃しようというムードを漂わせる。それからはアタックこそ出なかったが、最後のパヴェまで走り抜いて、勝負はヴェロドロームへとゆだねられた。

ルーベのヴェロドロームを1周半してフィニッシュを迎える。ファンデルプール、コルブレッリ、フェルメールスの並びで最後の鐘を聞いた。そして残り半周、またも先に加速したのはフェルメールス。これで先頭に立つと、コルブレッリとファンデルプールもスプリント態勢へ。最終コーナーを抜けてフィニッシュラインを前に3人横一列に並んだかに見えたが、最後はコルブレッリがわずかに前に出てトップでフィニッシュラインを通過。初出場3人による激闘は、現・ヨーロッパ王者に軍配が上がった。

新王者誕生、将来有望なパヴェ巧者も

初優勝を飾ったコルブレッリは、1990317日生まれの31歳。スプリント力と登坂力を兼ね備えた万能スピードマンとしてトップライダーの地位を築いてきたが、今季はキャリアハイの大活躍。イタリア選手権を制したほか、9月にはヨーロッパ選手権でも勝つなど、ここまで6勝を挙げていた。チームとしても今シーズンは絶好調で、勢いそのままにパリ~ルーベも制した。

夢だったこの大会の勝利に、フィニッシュ直後に大声を上げて号泣したコルブレッリ。シーズン最終盤に新たな勲章を手にした。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

大金星まであと一歩まで迫ったフェルメールスは、プロ2年目の22歳。1週間前にはロード世界選手権のアンダー23カテゴリーを走り、個人タイムトライアルでは銅メダルを獲得。ここまでプロレベルではビッグリザルトを挙げたことがなかったが、ここへきて大躍進。初出場のこの大会でも2位となり、将来有望なパヴェ巧者がまた1人誕生した。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

東京五輪で負った背部の負傷を乗り越えて今大会に臨んでいたファンデルプールは3位。追走態勢に入ってからの走りを見るに、このレースで最も強かった1人と言っても良いだろう。レース直後には悔し涙にくれたが、表彰台では気持ちを切り替え笑顔を見せた。

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

174人が出走したレースは、96人が完走。10人が最後まで走り切ったもののタイムアウトとなり、68人がリタイアした。

優勝 ソンニ・コルブレッリ コメント

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

「私にとって初のパリ~ルーベだった。伝説のレースで雨が降っていたので、とても興奮していた。ジャンニ(モスコン)は前線で200kmを走り続けて、とても強かった。アランベールでファンデルプールを追うことになったが、とてもハードだった。最初のパヴェセクターでクラッシュしてしまい、それからはメイン集団でレースを進める判断をしていた。最後はスーパースプリントだったね。ロット・スーダルのライダー(フェルメールス)には驚かされたが、最後の25mで何とかトップに立つことができた。本当にギリギリだったよ! 私の夢はロンド・ファン・フラーンデレンで、それに並んでパリ~ルーベが挙がる。今年は最高の年になり、とても満足している」

2位 フロリアン・フェルメールス コメント

©︎ A.S.O./Pauline Ballet

「スプリントで実績のある2人との勝負だったので、アタックを試みるしかなかった。2回トライしたが、彼らを振り切ることはできなかった。スプリントもベストなタイミングではじめられたが、脚が痙攣していてコルブレッリに勝つことができなかった。ただ今日のレースには悔いがない。またチャレンジしたい。

パリ~ルーベは私に合ったレースだが、まさか初出場で2位になるとは思わなかった。レースを通して先頭付近を走っていて、ベルギーからの多くのファンが応援してくれた。そのすごさは鳥肌が立つほどだった」

パリ〜ルーベ(257.7km)結果

1 ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)6:01:57
2 フロリアン・フェルメールス(ロット・スーダル、ベルギー)ST
3 マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)ST
4 ジャンニ・モスコン(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)+44
5 イヴ・ランパールト(ドゥクーニンク・クイックステップ、ベルギー)+1’16”
6 クリストフ・ラポルト(コフィディス、フランス)ST
7 ワウト・ファンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)ST
8 トム・ファンアスブロック(イスラエル・スタートアップネイション、ベルギー)ST
9 ギヨーム・ボワヴァン(イスラエル・スタートアップネイション、カナダ)ST
10 ハインリッヒ・ハウッスラー(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)ST

SHARE

PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

No more pages to load