ロード2021年シーズン世界ランク1位はポガチャル、ログリッチの牙城を崩す|ロードレースジャーナル
福光俊介
- 2021年11月15日
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vol.19 ビッグレース総なめのポガチャルが個人1位、チームトップはドゥクーニンク
国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。今回は11月上旬に発表されたロードレースのUCIワールドランキングについて。今シーズンの強さをそのまま反映する形になった順位を深掘りしていきたい。
実力・活躍度がそのまま反映された個人ランキング
UCI(国際自転車競技連合)がロードレース部門で設定するランキングのうち、最高栄誉にあたるのが「UCIワールドランキング」。これは、最高位カテゴリーのUCIワールドツアーから同2クラス、さらには世界選手権・大陸選手権・国内選手権を含む、世界各地のあらゆるレースで付与されたポイントの合算によってランク付けされるもの。今年であれば、東京五輪のロードレース・個人タイムトライアルもポイント対象となった。
このランキングはシステム上、得点配分が高いUCIワールドツアーを主戦場とする選手たちが上位を占めることになるが、その背景には上位ランカーたちがどれだけ格式の高いレースで活躍したかを示せるようにしたいというUCIのねらいがある。
新型コロナウイルス感染症の世界的大流行により、今季はポイント対象期間を10月末まで延長。通常であれば同月中ごろで締めるが、世界情勢を考慮する形をとった。ちなみに、シーズン中断を余儀なくされた昨年も、ブエルタ・ア・エスパーニャが閉幕した11月まで期間を延長しており、2年連続でのイレギュラー化となっている。
ランキングは大きく分けて個人・チーム・国別の3つに設定される。そのうち、今年の個人ランキングでは、ツール・ド・フランスで個人総合2連覇を果たしたタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)が1位に輝いた。
ポガチャルはシーズン初戦となった2月のUAEツアーでの個人総合優勝を皮切りに、3月にはティレーノ~アドリアティコ、4月にはリエージュ~バストーニュ~リエージュと、ビッグタイトルを次々と獲得。迎えたツールでは完勝し、それまでランキング首位を走っていたプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)からトップの座を奪った。その後も東京五輪ロード3位をはじめ、出場するレースで着実に上位に入ってポイントを加算。10月にはイル・ロンバルディアでも勝って、今季の最後に大量得点を獲得した。
ポガチャルのUCIポイント5363点のうち、3423点がステージレースで獲得したもの。ステージレースだけを対象にした「ステージレースワールドランキング」でも文句なしの1位。
次いで、ワールドランキング2位はワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)。今季獲得したビッグタイトルといえば、3月のヘント~ウェヴェルヘムと4月のアムステル・ゴールド・レースといったところだが、ツールでは山岳・個人TT・スプリントそれぞれでステージ勝利を挙げる離れ業を演じたほか、年間を通してコンスタントに上位を押さえていた点で、ポイントを稼いだ印象。獲得ポイント4382点のうち、3016点がワンデーレースで得たもので、こちらは「ワンデーレースワールドランキング」で1位に輝いている。
昨年まで2年連続でワールドランキング1位だったログリッチは“3連覇”こそ逃したものの、東京五輪個人TTやブエルタでの印象的な勝利もあり3位に。ロード世界選手権2連覇のジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ、フランス)は4位だったほか、パリ~ルーベで劇的勝利を挙げたソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)が6位と躍進した。
チームランキングではドゥクーニンク・クイックステップが“復権”
チーム内個人ランキング上位10人の持ち点を合わせて算出するチームランキングでは、“ウルフパック”ことドゥクーニンク・クイックステップが“復権”。アラフィリップの大活躍に加え、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)やファビオ・ヤコブセン(オランダ)といったスプリンター陣の復活もあり、年間65勝。勝利数もさることながら、合計ポイントでも1位になった。
2位にはステージレースを中心に各選手がポイントを重ねたイネオス・グレナディアーズが続いた。ジロ・デ・イタリアを制したエガン・ベルナル(コロンビア)は個人ランキングでも5位となり、チームの稼ぎ頭に。シーズン後半に快進撃を演じたイーサン・ハイター(イギリス)も1335.33点を獲得し、チームに貢献した。
昨年トップだったユンボ・ヴィスマは3位。ワウトとログリッチの獲得ポイントが大きなウエイトを占め、ツール個人総合2位のヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)も1730点で続いたが、チーム4番手以降が550点以下にとどまり、合計点で上位2チームとの差がついた。
このほか、各国上位8選手の得点を合算して表す国別ランキングでは、ベルギーが1位。いまや一大勢力となったスロベニアが2位、有力選手ひしめくフランスが3位と続いた。
2021年 UCIワールドランキング
●個人トップ10
1 タデイ・ポガチャル(UAE・チームエミレーツ、スロベニア) 5363pts
2 ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー) 4382pts
3 プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア) 3924pts
4 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ、フランス) 3104.67pts
5 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア) 2576pts
6 ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア) 2553pts
7 マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ) 2461pts
8 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス) 2251pts
9 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ、ポルトガル) 2219pts
10 リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル) 2018pts●チームランキング
1 ドゥクーニンク・クイックステップ 15641.21pts
2 イネオス・グレナディアーズ 14998.66pts
3 ユンボ・ヴィスマ 12914.67pts
4 UAE・チームエミレーツ 12355.66pts
5 バーレーン・ヴィクトリアス 10429pts
6 アルペシン・フェニックス 8251pts
7 ボーラ・ハンスグローエ 8222pts
8 アージェードゥーゼール・シトロエンチーム 7151pts
9 グルパマ・エフデジ 6715pts
10 イスラエル・スタートアップネイション 6704.66pts
11 モビスター チーム 6656pts
12 トレック・セガフレード 6593.66pts
13 アスタナ・プレミアテック 6469pts
14 アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ 5571pts
15 コフィディス 5481pts
16 EFエデュケーション・NIPPO 5362.33pts
17 チーム アルケア・サムシック 5000pts
18 ロット・スーダル 4704pts
19 チーム バイクエクスチェンジ 4686.33pts
20 チーム クベカ・ネクストハッシュ 4368.66pts
21 チームDSM 3887pts
22 トタルエナジーズ 3192pts
アルペシン・フェニックスがUCIプロチーム内トップ ワールドツアー招待出場権の行方は?
これらのランキング確定を受けて、新たな焦点として挙がるのが第2カテゴリーであるUCIプロチームの同ワールドツアー招待出場権である。
この権利はUCI規定に基づき、前年のチームランキングによって決まる。今年は前年12位だったアルペシン・フェニックスがUCIワールドツアー全レースへの招待出場権を獲得していて、マチュー・ファンデルプール(オランダ)のツールステージ優勝やマイヨジョーヌ着用につなげた。
アルペシン・フェニックスは今年さらに順位を上げて、6位でシーズンを完了。UCIプロチーム内では1番手となり、来季もUCIワールドツアーへの招待を確保できそうだ。
さらに注目されるのが、この権利の2枠目が設けられるかどうかである。
原則としてUCIワールドチームは18チームで構成されることとなっているが、実情は19チームが登録されている。これを受けて、本来であれば2つのUCIプロチームに与えられる招待出場権は1チームのみに限定されている状況なのだ。
UCIワールドチームの多くが来季に向けて準備を進めているが、唯一、チーム クベカ・ネクストハッシュだけが2022年シーズンを戦えるか不透明な状況。財政難にあることをチーム側も認めており、新規スポンサーが獲得できなければトップシーンでのレース活動は不可能な情勢にある。
チーム クベカ・ネクストハッシュ次第で、来季のUCIワールドチームの編成は18チームなのか、19チームなのかかが変わってくる。18チーム編成の場合は、今季UCIプロチーム2番手となったチーム アルケア・サムシックが2枠目の招待出場権を確保するとともに、3番手のトタルエナジーズにUCIワールドツアーにおけるすべてのワンデーレースの招待出場権が与えられる。
また、19チーム編成となった場合は今季同様、アルペシン・フェニックスにUCIワールドツアー全レースの招待出場権が、チーム アルケア・サムシックには同ワンデーレースの招待出場権が与えられることになる。
なお、これらは来季の登録チームと合わせて、12月に決定・発表となる見通しだ。
福光 俊介
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。
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- TEXT:福光俊介 PHOTO:A.S.O./Charly Lopez A.S.O./Fabien Boukla A.S.O./Pauline Ballet Wout Beel
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。