BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • HATSUDO
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

トビアス・フォスが大金星。キュングやエヴェネプールに勝ち、初のアルカンシエル|UCIロード世界選手権

2022年の世界王者を決める、UCIロード世界選手権がオーストラリア・ウロンゴンで918日に開幕。大会初日に行われた男子エリート個人タイムトライアルは、ノーマークに近い存在だったトビアス・フォス(ノルウェー)が最速タイムをマーク。同種目の新たなチャンピオンとなった。

最後までペースを落とさなかったフォスがジャイアントキリング

オーストラリア南東部の港湾都市・ウロンゴンが舞台となる、今年のロード世界選手権。同国での開催は2回目。例年と同様に9月最後の日曜日に大会最終日が来るよう会期が組まれているが、競技の本場ヨーロッパから遠いオーストラリアでの開催であることで、国によっては渡航費の捻出が難しいとの理由で選手派遣を取りやめたり、選手団の規模を縮小するといった事態が続出。さらには、同国からのビザ発給が遅れ、予定していたフライトに間に合わなかった選手や、ワウト・ファンアールト(ベルギー)のように自費で座席をアップグレードさせて移動したといったケースも。

そして何より、今季終了時に決まるUCIワールドチームと同プロチームとの昇降格・残留がかかっているチームに所属する選手の中には、この大会を回避してチーム活動に専念する事例が複数発生。こうした状況への議論はさておき、いつもと比較しイレギュラーな中での世界選開幕となっている。

大会初日の18日に行われた男子エリート個人タイムトライアルは、ウロンゴン市内をめぐる34.2kmで争われた。17.4kmのコースをおおよそ2周するレースは、細かなアップダウンはあるもののTTスペシャリストであれば問題なく攻略可能。難所らしい区間といえば、数百メートルで高度約50mを一気に駆け上がるマウント・アスリーくらい。頂上から勢いよく下って、平坦路へとつなげていくことが必要だ。

出場48選手を4つのヒートに分けて行われた戦いは、第3ヒートまでを終えた時点でシュテファン・ビッセガー(スイス)の4049秒がトップ。これを基準タイムとして、優勝候補がひしめく最終の第4ヒートへと入った。

その中で、まず好ペースで攻めたのがマグナス・シェフィールド(アメリカ)。7.2kmに設けられた第1計測ポイントをトップタイムで通過。その2人あとにコースへ飛び出したフォスはシェフィールドより約2秒早いタイムを記録し中盤へと進む。

24.5km地点に置かれた第2計測ポイントでも、シェフィールドは暫定トップとなるタイム。これを約20秒縮めたフォスも快調で、両者のフィニッシュタイムに期待が膨らむ。

しかし、シェフィールドにアクシデントが発生。コーナーをオーバースピードで突っ込み、脇のフェンスを乗り越え落車。何とかバイクには戻ったものの、それまでのペースからは大きく落として上位争いから脱落。

一方、後半に入ってさらにペースを上げたフォスは、ビッセガーのタイムを約47秒上回る402秒でフィニッシュ。平均スピード51.241kmで走破し、残る選手たちの走りを待つ。

Photo: UCI

序盤でフォスとほぼ同ペースを刻んだイーサン・ヘイター(イギリス)は、途中でチェーントラブルに見舞われバイクを交換。それでもペースを戻してフィニッシュではフォスとの差を40秒にとどめる。この段階で暫定2位とした。

大きな注目が集まったのは、出走順で最後の4人。シュテファン・キュング(スイス)、タデイ・ポガチャル(スロベニア)、レムコ・エヴェネプール(ベルギー)、そして昨年まで2連覇しているフィリッポ・ガンナ(イタリア)。個人タイムトライアルにとどまらず、ロードレース界そのものを牽引する選手たちがフォスのタイムをターゲットに攻める。

この日、最もフォスと競ったのがキュングだった。第1計測でフォスより2秒早く通過すると、第2計測までも順調でこの段階で約12秒タイムを縮める。フィニッシュタイムが見ものとなったが、最終盤に少々失速。逆にフォスから3秒の遅れをとる結果に。

ポガチャルは序盤からいまひとつリズムに乗れず、後半にペースを上げたものの、フォスからは48秒遅れでフィニッシュラインを通過。2選手を残した時点でメダル圏外へ。

1週間前に閉幕したブエルタ・ア・エスパーニャを制したエヴェネプールは、好調そのままで第1計測からフォスより速いペースを刻む。しかし、こちらも中盤以降でペースを落とし気味に。終盤に盛り返したものの、フォスとは9秒の差。走り終えた時点で3番手とした。

Photo: UCI

3連覇がかかったガンナの走りは、序盤こそフォスらと互角のペースだったが、中盤以降少しずつ差が広がっていく意外な展開。終盤にはその差はさらに大きくなり、ガンナ自身も最後はあきらめムード。ペダリングを緩めながらフィニッシュラインを通過し、今回は7位に終わった。

暫定トップ3が座るホットシートに就きながら、優勝候補たちが軒並み自身から遅れをとる様子に驚きのリアクションを繰り返していたフォス。最終走者のガンナが走り終えたのを見届けると、それまでの姿から一転して顔を覆った。みずからもビックリの結果に、言葉を失い、笑顔を取り戻すのにも時間を要するほどだった。

Photo: UCI

大番狂わせともいえる快走劇を演じたフォスは、1997525日生まれの25歳。普段はユンボ・ヴィスマに所属し、プロキャリア3年目のシーズンを送っている。プロ入り前の2019年には「若手の登竜門」ツール・ド・ラヴニールで個人総合優勝。2021年にはジロ・デ・イタリアで個人総合9位となり、グランツールレーサーとしての期待値も高いライダーの1人。グランツールでは山岳はもとより、個人タイムトライアルでタイムを稼いで上位進出するタイプで、実際にTTステージでの上位常連ともなりつつある。

今季はノルウェー選手権の個人タイムトライアルで2連覇していたが、晴れてマイヨアルカンシエルを1年間着用できることに。ポディウムで白地に5色のラインが入った栄光のジャージに袖を通し、多くの観衆から祝福を受けた。

Photo: UCI

フォスに続き、キュングは世界選手権自己最高の2位。エヴェネプールは2年連続の3位を収めた。トップ3はいずれも25日実施の男子エリートロードレースにも出場を予定している。

UCIロード世界選手権 男子エリート個人タイムトライアル(34.2km)結果

1 トビアス・フォス(ノルウェー) 40’02”Avg. 51.257km

2 シュテファン・キュング(スイス)+0’03”

3 レムコ・エヴェネプール(ベルギー)+0’09”

4 イーサン・ヘイター(イギリス)+0’40”

5 シュテファン・ビッセガー(スイス)+0’47”

6 タデイ・ポガチャル(スロベニア)+0’48”

7 フィリッポ・ガンナ(イタリア)+0’56”

8 ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)+0’59”

9 イヴ・ランパールト(ベルギー)+1’09”

10 ブルーノ・アルミライル(フランス)+1’10”

女子はファンダイクが2連覇

男子に先だって行われた女子は、同じく34.2kmで争われた。

地元の期待を一身に背負って出走したグレース・ブラウン(オーストラリア)がトップに立ち、長くホットシートに座ったが、最終走者で前回覇者のエレン・ファンダイク(オランダ)が序盤から圧倒的な走り。

最終的にブラウンに12秒差をつけたファンダイクが2年連続で個人タイムトライアル女王に。2位のブラウンに続き、3位にはマーレン・ローセル(スイス)が入った。また、4位のヴィットリア・グアジーニ(イタリア)はU23トップで、同カテゴリーの世界女王となった。

©️ Getty Sport

UCIロード世界選手権 女子エリート個人タイムトライアル(34.2km)結果

1 エレン・ファンダイク(オランダ) 44’29”Avg. 46.130km

2 グレース・ブラウン(オーストラリア)+0’12”

3 マーレン・ローセル(スイス)+0’41”

4 ヴィットリア・グアジーニ(イタリア)+0’52” ※U23優勝

5 リア・トーマス(アメリカ)+1’18”

6 クリステン・フォークナー(アメリカ)+1’25”

7 アンネミーク・ファンフルーテン(オランダ)+1’43”

8 ジョージア・ベイカー(オーストラリア)+1’46”

9 ロッテ・コペッキー(ベルギー)+1’50”

10 アンナ・キーゼンフォーファー(オーストリア)+1’56”

 

UCIロード世界選手権公式ウェブサイト

SHARE

PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

No more pages to load