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パリ五輪イヤーの2024年ロードレースシーンはどう変わる?|ロードレースジャーナル

vol.67 ツールのニース閉幕、ビッグネームのレースプログラムにも大きな変化が

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。2024年シーズンが見えるところまで来て、トップシーンを駆ける選手・チームの動向が少しずつ明らかになってきた。何より、パリ五輪イヤーとあり、ビッグネームのターゲット設定にもいつもとは違う趣きが感じられる。今回は来る五輪によっていつもとは異なるロードレースシーンとなりそうないくつかの要素を挙げてみる。

五輪開幕前のパリを避けるツール・ド・フランス

改めて、パリ五輪のロード種目のスケジュールを確認しておきたい。大会全体の開幕翌日にあたる7月27日(土)に女子・男子の順で個人タイムトライアルを実施。他競技との時間的な兼ね合いはあるものの、事実上、両レースの勝者が大会最初の金メダリストになりそうだ。

ロードレースは1週間後の8月3日(土)に男子、翌4日(日)に女子がそれぞれ競う。大会は会期後半に入っており、五輪ムードにさらに拍車をかける重要な一戦となるだろう。

詳細な日程やコース解説については、この夏に筆者が取材・執筆した記事を参照されたい。
https://funq.jp/bicycle-club/article/902480/

市街地で開催されるパリ五輪。ロードレースも街の中を走る Photo:Syunsuke FUKUMITSU

フランスの首都であり、ヨーロッパにおける中心都市の1つであるパリでの大規模なスポーツイベント開催とあり、ロードレースシーンにおいてもイレギュラーなポイントが発生する。

やはり何といっても、ツール・ド・フランスの閉幕がパリ・シャンゼリゼを離れて南仏のニースへ移されるのがビッグトピック。それも、最終の第21ステージは名峰エズ峠を走る山岳個人タイムトライアルだ。大会最終日が個人タイムトライアルで争われるのは、35年ぶり。グレッグ・レモンが50秒差をひっくり返し、ローラン・フィニョンが悲劇的な敗北を喫したあのとき(1989年)以来となる。

五輪開幕の約1週間前にツールは3週間の戦いを終えるが、大都市パリやその周辺におけるロジスティック面を考慮し、いったんシャンゼリゼから離れる判断がくだされている。実際、パリ市街地で大多数の競技が実施され、会期中は各所で道路封鎖がなされるという。その準備にも時間を要することを踏まえると、いくらフランスのアイデンティティーのひとつであるツールといえども、今回ばかりは“特別待遇”を得るわけにはいかなかったよう。

なお、ツールのパリ回避は2024年大会に限られるとみられ、2025年以降はシャンゼリゼでの感動的なフィナーレが戻ってくることだろう。

ツール・ド・フランス2024ルートマップ。パリを避ける異例のルーティングになっている。

ワウトはツール回避、ロード・MTB両立を目指すマチューは?

7月下旬から8月上旬にかけて行われるパリ五輪は、多くのトップライダーのレースプログラム設定にも影響を及ぼしている。

2024年シーズンの動向についてみずから言及したのが、ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)。来季に向けて近々、“本職”であるシクロクロス参戦が控える中、5月に開催されるジロ・デ・イタリアに初めて臨むことを認めた。

2024年はジロ・デ・イタリアに出場するワウト・ファンアールト。五輪に向け十分な準備するためツールは回避する © A.S.O./Pauline Ballet

ワウトのジロ参戦はオフシーズンに入ってから各所で語られるようになり、一部チーム首脳陣もその方針にあることを言及していた。所属するユンボ・ヴィスマは今季、全グランツールを制する“離れ業”を演じたこともあり、ワウトにはジロでの個人総合成績を狙わせる公算があるのでは……との声もあった。

このほど、ワウト自身が「ジロではステージ優勝に絞る」旨を宣言。3月から4月にかけては例どおりミラノ~サンレモや北のクラシックを走ったのちに、ジロへと向かっていく見通し。

こうした判断の背景には、やはりパリ五輪の存在があるのは明白。先ごろベルギー自転車競技連盟が発表した五輪ロード種目のロングリスト(候補選手)では、ロード・個人TTともにリスト入りし、その中でも「代表入り内定」レベルの高いプライオリティが与えられている。五輪直前までツールを走るのではなく、ジロを終えてからしっかり準備をしたうえで、前回の東京大会では果たせなかった金メダル獲得を目指そうという算段だ。なお、五輪後にはブエルタ・ア・エスパーニャへの出場も現在検討中とされ、実現すれば彼にとってはキャリア初となる1シーズン2回のグランツール参戦となる。

レムコ・エヴェネプールはツール・ド・フランスへのデビューを予定。3週間を戦い、パリ五輪へ向かっていく © UNIPUBLIC / SPRINT CYCLING AGENCY

ワウトと同様に「代表入り内定」クラスに位置するのが、レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)。こちらは対照的に、ツールデビューが濃厚だ。今季はジロでマリア・ローザを争いながら、新型コロナウイルス感染によってまさかの途中離脱。そのリベンジを果たすべく、来季はジロとツールの連戦をもくろんでいたと言われるが、チーム首脳陣の説得もありツールに絞ったよう。

レムコも五輪から逆算したレースプログラムとなっていて、3月にはパリ~ニース、春のクラシックは得意のリエージュ~バストーニュ~リエージュに絞り、6月にクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ、ツール、そして五輪へ……との流れを予定する。

トーマス・ピドコックは2連覇がかかるマウンテンバイクとロードレースの2種目でパリ五輪を戦う © A.S.O./Charly Lopez

トーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)も、これまでとは異なるアプローチを施す。五輪では連覇のかかるマウンテンバイク、そしてロードレースでも代表入りする可能性が高まっている。

彼のコーチであるクルト・ボガーツ氏がベルギーメディアに語ったところによれば、本来得意とする北のクラシックを回避し、4月後半に行われるアルデンヌクラシックを走る方針だという。今年はアムステル・ゴールドレースで3位、リエージュで2位となっており、丘陵コースはまったく苦にしていない。もっとも、北のクラシックを走ることによるダメージを避けたいとの考えで、マウンテンバイクのレースプログラムとの兼ね合いも考慮したものと思われる。ツールへの出場も予定されており、五輪までに走るレースはレムコとほぼ同じになりそうだ。

ロード世界王者のマチュー・ファンデルプール。マウンテンバイクでの五輪出場枠獲得に向けた動きも必要になっている © UCI

かたや、現役のロード世界王者であり、前記した選手たちにとっては最大のライバルになるマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク、オランダ)は決断に時間を要している様子。彼にとって重要なファクターのひとつが「マウンテンバイクでの出場権獲得」で、ロード・MTB両種目の出場資格を得ているピドコックとは事情が異なっている。

まずマウンテンバイク種目の国別出場枠を獲得する必要があり、そのための戦いをこなさなければならない。マチューを支えるコーチ陣は「五輪での両種目出場は(能力的に)可能」としながらも、いつも以上にハードになるであろうスケジュールをどうこなすかがポイントになるとみている。

ひとつの案として、「ツールは第9ステージまで」というものがあり、グラベル区間を走る第9ステージまで走って撤退。五輪への準備を急ぐという考えがあるとか。ただ、マチューには、今季大活躍のヤスペル・フィリプセン(ベルギー)のリードアウトという役割もあり、簡単にツールを離れるわけにはいかないとの側面もある。

ちなみに、五輪のマウンテンバイク種目は7月29日に組み込まれている。

新たなシーズンの入りが近づき、今後続々とビッグネームのレースプログラムが明らかになるはずだ。ツール3連覇を目指すヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)は? ヴィンゲゴーを阻止し復権を果たしたいタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)は?

回を追うごとに五輪の重要性が高まるロードレース界。選手たちの決定・決断から、パリへの強い意志を感じることができるだろう。

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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