瀬戸内から日本海へ広がるSetouchi Véloが鳥取県境港・米子ミーティングを開催
Bicycle Club編集部
- 2024年05月28日
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2024年4月25日に、鳥取県境港・米子で瀬戸内地域の広域サイクリング振興プロジェクト「Setouchi Vélo協議会」のミーティングが開催された。協議会の構成・参加団体メンバーによるサイクルツーリズムそして、自転車文化のについてのミーティング、その実地体験としてトライアルライドが開催された。
Setouchi Vélo 境港・米子ミーティング
鳥取県境港市と米子市において、瀬戸内地域の広域サイクリング振興プロジェクト「Setouchi Vélo」のトライアルライドとミーティングが開催された。Setouchi Véloは、多様性に富んだ瀬戸内地域およびその周辺地域のサイクリングルートを一つに結び、国内外へアピールすることを目的としている。さらに、自転車を取り巻く環境整備を進め、歩行者、自転車、自動車が安全に共存できる自転車文化の構築も目指している。鳥取県が昨年構成団体に加わったことで、広域連携としてのSetouchi Véloが瀬戸内を越えた広がりをみせている。
魅力的な鳥取うみなみロード
開催地となった鳥取県は美しいロケーションを誇る「鳥取うみなみロード」を有している。これは、西の境港市と東の岩美町を結ぶ全長約152kmのサイクリングルートで、日本海の絶景と県内有数の観光地、「鳥取砂丘」や「水木しげるロード」、さらに名物グルメ「牛骨ラーメン」、鹿野温泉・はわい温泉・皆生温泉といった温泉をを巡ることができる。
今回のトライアルライドでは協議会の構成・参加団体メンバーがスポーツ用Eバイクの基礎講習を受講した。その後、「⽩砂⻘松の⼸ヶ浜サイクリングコース」を約15km走行し、左手には日本海と白い砂浜、正面には大山という壮大な眺めを楽しみながらEバイクの走行感覚を体験した。
地元や県外のサイクリストからも愛されている⼸ヶ浜サイクリングコースには平日にもかかわらず、多くの利用者を見かけることができた。
鳥取ではサイクリングの周知から、民間サービスの充実へシフト
フォーラムは米子市の伊木隆司市⻑と本州四国連絡高速道路株式会社常務取締役員の森⽥真弘さんの挨拶で幕を開けた。
基調講演ではコイデル代表の門田基志さんが「欧州の⾃転⾞事情と広域連携」をテーマに講演、続いて愛媛県東京事務所の河上芳一さんが「⾃転⾞先進県、愛媛のこれまでとこれから」と題して登壇した。さらに開催地の取り組みについては、「大山時間(⿃取県商⼯会連合会⻄部商⼯会産業⽀援センター)の前畑裕志さんが発表を行った。
ヨーロッパでは行政、国を越えた広域連携があり、共通ピクトが整備されている
門田基志さんによると「瀬戸内海から四国、広島、鳥取県に行った時に、県ごとにサインが違ったり、走る環境が異なるといった問題があります。エリアごとにクルマのマナーやルールが変わり、急に危険になる場合もあり、走りにくいと感じることがあります。いっぽうヨーロッパでは、ドイツとオーストリア、スイスの国境を越えて自転車に乗ることが容易で、国境がほとんどないように感じます。サイクリングロードが整備され、誰でも分かりやすくなっています」と、共通したピクトやルールを統一することでサイクリストの利便性を図り、サイクルツーリズムを推進できることを説明した。さらに「サイクルツーリズムを推進する際には、サイクリストだけでなく、家族が楽しめる場所を提供することが重要です」とサイクルツーリズムと通常の観光の連携の大切さも強調した。
愛媛県の自転車に関するこれまでの取り組みと将来
愛媛県東京事務所の河上芳一さんの講演では、愛媛県では自転車新文化を普及させるための、これまで十数年間の取り組みに加えて、さらに今後の課題解決に対するヒントが紹介された。
河上さんによると「14年前、中村知事が就任し、しまなみ海道を世界に発信したいという意向を持ちました。その中で、自転車を通じて地域を活性化させるという考えが生まれました。台湾のジャイアント社を訪問し、創業者の劉会長と面談し、自転車新文化の考え方を取り入れることになりました」という。こうして自転車に関する取り組みが始まった愛媛県では、平成24年7月に「愛媛県自転車安全利用促進条例」を制定、平成26年10月広島県との連携し、高速道路を封鎖して開催される7000人規模の大会「サイクリングしまなみ」の開催へと広がっていった。
いっぽう、こうした取り組みを通じて、愛媛県は自転車先進県としての地位を確立しつつあるが、まだ多くの課題が残っていると河上さんは解説する。「愛媛県では国際会議を誘致し、ツーリズムだけでなく、まちづくりや都市空間の整備についても議論する場を作ることを目指しています。こうした活動を通じることで、自転車のある生活を地域に浸透させることが重要だと考えています」と今後の方針を示した。
官民一体となって自転車を楽しめる環境をつくる「大山時間」
⿃取県商⼯会連合会が中心となって鳥取県西部地域の魅力を域内外に発信するプロジェクトが「大山時間」。その大山時間の前畑さんによると「大山時間では令和元年度からは、国内外からのサイクリストを受け入れるための環境整備を進めてきました。会員や関係者の機運醸成、理念共有のためのフォーラムや研修会、商品・サービス開発支援、サイクルツアーガイドの養成、ルートマップ作成、モニタリングツアーなどを行っています。大山山麓・日野川流域観光推進協議会との連携事業や、岡山県との連携によるサイクリングルート設定なども視野に入れています」という。
ここまで商工会の支援により、民泊・ガイド事業者の創業や、飲食店によるサイクリスト向けサービスなどの事例も生まれてきており、今後は、商品化に向けた事例作りを進め、継続して知識を得てサイクリストを受け入れる体制を整えていきたいと、官民が連携してサイクルツーリズムを進めていっている状況と未来について説明した。
中国地方最高峰の大山、そして日本海の浜辺と変化に富む鳥取
この4月から鳥取県サイクルツーリズム振興監となり、令和2年から県内のサイクルツーリズムに関わってきた鈴木俊一さんは「鳥取県の観光の魅力としては、中国地方で一番高い山である大山があります。夏でも涼しく、多くのアクティビティを楽しむことができます。鳥取砂丘にある砂の美術館も非常に評価が高い施設です。鳥取県では、コンパクトなエリアに多様なサイクリングコースが集まっているのが特徴です。弓ヶ浜サイクリングコースは平坦なコースで、「ツール・ド・大山サイクリングルート」のコースは短い距離ながら獲得標高が2,000メートルを超えます。商工会連合会の皆様と連携し、サイクリングガイドの養成講座等を進めています。また、鳥取県では自転車の利用環境が充実しており、レンタサイクルの拠点やコンビニ等での空気入れの設置、自転車を載せられるタクシーなどがあります」とすでに整備されている県内のサイクリング環境について説明した。
パネルディスカッション「⿃取県における⾃転⾞活⽤の未来」
最後に、「⿃取県における⾃転⾞活⽤の未来」をテーマにパネルディスカッションが行われた。コーディネーターは門田さんが務め、パネリストには鳥取県サイクルツーリズム振興監の鈴木さん、愛媛県東京事務所⻑の河上さん、バイシクルクラブ編集長山口博久と八重洲出版統括部長の迫田賢一さんが登壇。サイクルツーリズムについて議論した。
鳥取県がSetouchi Véloプロジェクトに参加することは、同県の魅力を国内外に発信する大きな一歩となる。美しい自然景観と歴史文化を楽しむサイクリングを軸に、地域の活性化と交流人口の増加が期待される。今後、鳥取県では自転車に優しいまちづくりを進め、安全で快適なサイクリング環境の整備に注力していくことだろう。
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