香川県綾川町でSetouchi Vélo協議会が開催、「自転車活用で変える町の未来」を議論
Bicycle Club編集部
- 2024年12月06日
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2024年10月3日、香川県綾川町で6回目となるSetouchi Vélo協議会の市町村ミーテイングが開催された。当初は行政担当者などがeバイクを体験するトライアルライドも行われる予定だったが雨天のため中止となり、バスでの町内のサイクリング関連施設視察となった。ここでは基調講演、パネルディスカッションの内容についてお届けする。
Setouchi Véloプロジェクトは瀬戸内をつなぎ、自転車に優しい環境づくりを推進
まずSetouchi Véloプロジェクトについて説明する。瀬戸内地域の多様なサイクリングルートを一つに結びつけるという取り組み。このプロジェクトの核心は、「Setouchi Véloルート」を通じて瀬戸内地域を世界に誇るサイクリングの推進エリアとすることだ。兵庫県、岡山県、広島県、山口県、鳥取県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県の9県にわたるサイクリングエリアのネットワークを構築し、地域の自然美と文化を国内外にアピールすることを目指している。また、歩行者、自転車、自動車が共存できる快適な自転車文化の構築も計画している。また具体的な活動として「シェア・ザ・ロード(思いやりロード)」を啓発するためのチラシを配布するほか、ヘルメットの正しい被り方について啓発活動などもしている。
香川県綾川町はいちごで有名
当日はあいにくの雨のためトライアルライドは中止されたが、綾川町総合運動公園から回る予定だったコースをバスで視察した。参加者は府中湖周辺のサイクリングルートの整備状況を視察し、道の駅滝宮やヤドン公園など観光スポットを巡り、綾川町の観光資源とサイクリング環境の現状を確認した。
綾川町には初心者から上級者まで楽しめる多様なサイクリングコースが整備されており、特に府中湖周辺のコースは、湖の景色を楽しみながら走れる平坦な道が続き、初心者にもおすすめ。ただし、サイクリングロードはまだ整備中の箇所もあり、綾川町では今後の課題としていきたいという。
香川県綾川町は、讃岐うどんの発祥地として知られ、豊かな自然や地元の農産物が魅力。特にイチゴや柿の生産が盛んで、酒蔵もあり、美しい農村風景が広がっているのが特長だ。町には「道の駅滝宮」があり、週末には多くのサイクリストが訪れる場所でもある。
観光名所となったヤドン公園
うどん県PR団として活動するポケモンの「ヤドン」がテーマとなったヤドン公園は県外からの訪問者が楽しめる観光スポット。ヤドン公園は香川県と株式会社ポケモンが「地域活性化に関する連携・協力協定」を締結したことで実現した事例。
基調講演では自転車の活用法を改めて再認識
町内バスツアーで主要な観光スポットを見終わったあとは、会場を綾川町総合運動公園に移し、協議会が開催された。綾川町長 前田武俊氏、本四高速 取締役常務執行役員 森田真弘氏の挨拶に続き、コイデル 代表取締役社長 門田基志氏の『世代を超えた自転車活用について「安全と健康」』をテーマとした基調講演、オージーケーカブト 広報チーム 小川 裕輔氏の安全講話「ヘルメットが守る命」といったサイクリングに関する基礎知識を学ぶ機会が設けられた。
このほか、門田氏をコーディネーターとして、「綾川町でのEバイクの推奨について」パネルディスカッションが行われ、サイクルスポーツ中島丈博編集長、バイシクルクラブ山口博久編集長が登壇、「高齢者に向けてどう普及すればよいのか?」といった地域課題について議論が行われた。
門田基志氏による基調講演では、自転車がいかに健康促進に寄与し、世代を超えて利用できる手軽な移動手段であるかを解説。いっぽうでは高齢者の自転車利用には光があれば影もあり、事故に巻き込まれやすいことを説明。愛媛県ではその対策として高齢者自転車教室を始めており、その事例を紹介した。
「健康と生きがいづくりとしてのシニアサイクリング体験会では平均年齢77歳という会もありました。生きがいづくり、友人づくりができることが魅力で、Eバイクを使うと体力差が埋められるメリットもあります」と門田氏
小川裕輔氏の安全講話ではヘルメットの着用や安全教育の重要性についても触れられた。
過疎化対策など包括的な自転車活用に取り組む綾川町
綾川町総務課いいまち推進室主査 坂井大介氏により綾川町での自転車に関する事例紹介も行われた。
「あやがわ自転車ロードレース(コッパアヤガワ 2024)」が9月15日に開催された。
綾川町はロードレースが盛んで、平成2年からは旧綾上町エリアで自転車ロードレースが行われてきたほか、平成4年にはインターハイが行われるなど歴史がある。コッパアヤガワはインターハイで自転車競技の会場となったレガシー(遺産)でもある。このほか道の駅には多くのサイクリストが訪れることからスポーツ自転車と親和性の高いエリアだという。
このほか、地域に根差した自転車の活用にも取り組んでいる。人口が増えている市街地では幼少期からの自転車に関する安全対策も実施。座学とプッシュバイクを使った自転車安全教室を開催するなど、子どもたちとその親の自転車に対する教育の必要性を感じているという。
いっぽう、過疎化が進む山間部ではEバイクを活用した試みを実施。その可能性を見るために関係者がライドイベントを行い意見交換するなど、Eバイクのポテンシャルを確認する取り組みも実施している。
こうした自転車活用を推進する必要性を踏まえて、町では自転車活用に関する協議会を発足させ、さらに香川県のなかで「自転車先進の町づくり」を目指し、今後具体的な活動計画の策定へ向けて動き出している。
パネルディスカッションでは「綾川町の課題を自転車活用で解決するヒントを探る」
パネルディスカッションでは、門田氏をコーディネーターとして、綾川町長 前田武俊氏、綾川町総務課いいまち推進室長 福家孝司氏、バイシクルクラブ山口編集長、サイクルスポーツ中島編集長が登壇し、「綾川町の課題を自転車活用で解決するヒントを探る」と題して議論が行われた。
中島氏からは「風呂敷を広げるような提案ですが、例えば県を上げてうどんフェスタを開催し、そのなかで岡山からサイクルトレインを運行し、その訪れた方を綾川町に案内してはいかがか」といった提案がされたほか、山口からは「綾川町は香川県の真ん中、さらに高松空港のアクセスの良さ、そして高速、国道、琴電が通る交通の便のよさを生かし、立ち寄れるハブを作ればより集客できる」といったことなどが提案された。
ヤドン公園前には金毘羅詣で利用された旧道があり、ここを地元の中学生が活用していた。また、綾川町はイオンモールなどもあり生活が便利なことから宅地開発も進み人口も増加に転じているという。
今回、道路視察では、安全性向上に向けたインフラ整備の必要性について議論があり、今回市町村ミーテイングという場を利用して他県からの参加者からもアドバイスが寄せられた。関係者にとって今後のSetouchi Véloプロジェクトの一環として、より効果的な地域観光の発展に繋げるための貴重な学びとなった。
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- ©Pokémon. ©Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
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