本を参考に、絵の具で描き足していく楽しさ。|『organ』紺野真さんが読んできた本
buono 編集部
- 2016年12月12日
人気ビストロ『organ』の店内には、大きな本棚が据えられている。そこに並ぶ本の多くはオーナーシェフである紺野真さんが繰り返しページをめくり、店と共に“育って”きたもの。ときにはフランス料理の歴史に襟を正し、ときには新進気鋭のシェフが織りなすセンスに驚き、ときには旅先で飲んだワインの味を思い出しながら……。
本は教科書であり、先生。
「年に一度、自分の誕生日にスタッフ全員へ本をプレゼントするのが習慣」と紺野さんは話す。「どこかで修行したり、師匠がいた訳ではないので、いわば本が教科書であり先生。本から教わることは多いと思うんです」
学生時代を過ごしたカリフォルニアで目の当たりにしたのは、ブックカフェで思い思いに本と飲食を楽しむ人たちの姿。その経験は、紺野さんがつくりあげてきたお店の原風景になっている。
「お店を作った当初は、自分の舌を頼りにワインを選んでいました。ナチュラルなワインについて調べるうちに、同じようなワインを好んで集めている人が数人いたんです。そのうちの一人が大橋健一さん。当時そうしたワインを解説した本は、大橋さんが書いたこの一冊だけでした」
オーガニックとラベル上で謳っていても、有機栽培のワインに科学的な成分を追加したものも多いのだという。フランスには、一から十まで厳しい管理のもとにワインをつくりあげる醸造家がごくわずかだが存在する。
「この本を参考に農場まで足を運んだこともあります。スタッフにも頻繁に貸している一冊ですね」
レシピ本も繰り返し手に取るという。
「大まかな手順を参考にし、あとは自分の絵の具と描き方で」と紺野さん。舌鼓を打ちながら、本棚も愉しみたくなるビストロがここにある。
紺野さんがおススメする本と一言レビュー
1.「自然派ワイン」大橋健一
ソムリエ業界においてもっとも名高い資格といわれる、英国マスター・オブ・ワイン協会が認定する、マスター・オブ・ワイン(MOW)を日本在住の日本人で初めて受賞した大橋健一氏の著書。
2.「進化するレストランNOMA」ファイドン社
訪ねたNOMAではシェフのレネさんにお会いできた。自由に創造された料理とヴィジュアル。お皿の上だけでなくその背景にあるメッセージ性からも刺激や影響を受けている。
3.「パリのネオ・ビストロ」別冊専門料理
コテコテのクラシックなビストロではなく、カジュアルに進化したお店を「ネオ・ビストロ」とくくって紹介している本。パリの街を食べ歩きするのに、おすすめしたい一冊。
4.「レストランのシャルキュトリー」櫻井信一郎
シャルキュトリーとはハムやパテなど食肉加工品のこと。仏で伝統的な製法を学んだという「ローブリュー」 オーナーシェフ・櫻井信一郎氏のレシピは、シャルキュトリーを作る際に参考にしている大切な一冊。
5.「コーヒーに憑かれた男たち」嶋中労
『uguisu』を開店した当時は、抽出方法を選べる珈琲を提供していたほど、珈琲好き。「カフェ・ド・ランブル」「もか」「バッハ」という、名店主たちの話がとにかく面白い。
6.「NOMA 北欧料理の時間と場所」レネ・レゼピ
赤裸々に綴られた日記に、笑ったり感動したり、共感したり。旅先に持って行くほど、気に入っている。料理実験を綴ったテキストから、アプローチのひらめきを得ることも。
7.「パリのビストロ手帖」川村明子
筋金入りのグルメである、パリ在住の友人 “アッコちゃん” が、なじみの店を紹介している本。彼女の舌には信頼を置いているので、実際この本を見てビストロに行ったことも。
8.「ラ・ブランシュ 田代和久のフランス料理」田代和久
昔から好きな「ラ・ブランシュ」の田代和久シェフからは、料理に対する姿勢も学ばぶことがしばしば。ある企画で1日入門させてもらった時に、記念にサインをもらったとか。
9.「基本をきわめるフランス料理」三谷青吾
スタッフが頻繁に引っ張り出しているため、お店では通称 “赤本”と呼んでいる。 L’esprit MITANI(レスプリ・ミタニ)オーナーシェフ・三谷青吾氏が、現役シェフに向けて書いた料理レシピ集。
10.「La Cuisine Du Marché」Paul Bocuse
夏は決まって修行へ出向く。パリのレストラン「Spring」のシェフ、ダニエル・ローズ氏から研修最終日に贈られた。フランス料理の基礎を築いたポール・ボキューズの名著。
DATA
organ
住所/東京都杉並区西荻南2丁目19-12
電話/03-5941-5388
定休日/火曜・第4月曜
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PROFILE
buono 編集部
使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。
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