自己研鑽の本が、いまや周囲に影響を|『ソラノイロ 』宮崎千尋さんが読んできた本
buono 編集部
- 2020年09月18日
開業からほどなく『ミシュランガイド2015東京』ビブグルマンに登場し、ラーメン業界に激震を走らせた『ソラノイロ』。いまや4店舗に拡大したソラノイログループを牽引する宮崎氏は嬉しそうにこう語る。
「これまでの人生で、幾度か訪れた分岐点には、本がきっかけになったことが少なくありませ ん。本に直接影響されたこともあれば、後で考えれば『あのページがあったから……』と振り返ることもあります」
人生の舵となる本がある
ラーメン業界へ飛び込んだことも、その後の一風堂の代表・河原成美氏との出会いも、それぞれきっかけになった本があったという。そんな宮崎氏は、今や多くのスタッフを率いる立場に立ったわけだが、今も読書を欠かすことはない。
「最近はスタッフとのコミュニケーションツールとしての本の価値を痛感しています。直接、ぼくの言葉で語るのではなく、ぼく自身が影響された本をそっと渡すことで、スタッフが自らが伝えたかったメッセージに気付いてくれることがあります。こうして気付いてくれたメッセージは深く浸透するので、定着度が違いますね。いまでは本が意思統一に欠かせないものとな っています」
ソラノイロ本店4階の事務所には宮崎氏の膨大な蔵書が並んでいる。ソラノイロ各店に漲る活力はここで生まれているのだ。
宮崎さんが読んできた本
【高校時代の一冊】
「ベストオブラーメン in Pocket」文春文庫
ラーメンキャリアの原点となった一冊
「予備校に通っていた頃、父が買ってきたこの本を奪って(笑)、掲載されていたラーメン店を食べ歩いていました。背脂全盛で、食べるラーメンすべてが衝撃でした」
当時は、後に自らがラーメン業界に身を置くなどとは全く想像していなかったと宮崎氏は振り返る。四半世紀前にこの本に出合えたことこそ、ラーメンと自分を繋ぐ糸口であったと語る。
【『ラーメン博物館』時代の一冊】
「2018年同じ笑顔で」力の源ホールディングス
かの有名店と引き合わせた数奇な出合いとは?
宮崎氏がラーメン博物館で働いていたことを知る人は少ない。
「ラーメンに興味がありながらも、提供する側か、評論家のような紹介する側か 迷っていた時に、ラーメン博物館で働く機会を得ました。そして館内で出合ったのがこの本です。ページを通じて河原さんの人間性と言葉の強さに惹かれ、気付けば一風堂の門を叩いていました」
【『一風堂』時代の一冊】
「魯山人の料理王国」文化出版局
“ラーメン店の当たり前”を疑い始めるきっかけ
「ラーメン屋は、こ汚くても許されちゃうじゃないですか。そんなもんかと思っていました。この本で気付かされたのは、ラーメンも料理であり、ラーメン屋はレストランだという至極当たり前のことでした。そう考えた途端に視野が広がりましたね。同時に、料理人としての心構えを他のジャンルの料理人と同じように持たねば、と気が引き締まりました」
【ブレイクスルー期の一冊】
「ARIgATT」IMAGICAパブリッシング
“カフェ的ラーメン店”そのヒントとなった背景
宮崎氏といえば、ラーメン業界にカフェカルチャーを導入した第一人者。
「この号に掲載されていた有名カフェは空間、音楽、そして器選びなど、随所に時代を先取りした雰囲気がありました。実際に店を訪ねるなかで、ラーメン店もこうしたスタイルであれば、女性も入りやすいのでは? と考えるようになりました。ソラノイロの原点がこの一冊です」
【『ソラノイロ』発展期の一冊】
「スープ —和・洋・中・エスニック スープいろいろ164」柴田書店
トレースではなく、 発想を広げるバイブル
ソラノイロではプロデューサーである宮崎氏の真骨頂ともいえる型破りの限定ラーメンが人気だ。
「ダシに制約はありません。決めつけているのはわれわれのほうなんです。限定 ラーメンを考えるときは、固まりがちな発想をやわらかくするためにこの本を開きます。フレンチのレシピを眺めながら浮かんだアイデアを商品化したこともあります」
Profile
ソラノイロ オーナー 宮崎千尋
一風堂にて修業を積んだ後、2011年に『ソラノイロ』で独立開業。店舗のカフェ化や、麺まで野菜を使った「ベジそば」が女性を中心に支持を集め、2014年にミシュラン掲載を果たす。
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PROFILE
buono 編集部
使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。
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