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シェフ垂涎、入手困難な北海道・江丹別のブルーチーズを追う

周囲を豊かな緑に囲まれた北の大地で生まれたチーズが話題だ。新鮮な牛乳の旨味をそのまま凝縮したような臭みのないブルーチーズ。世界中にファンを持ち「幻」とさえ呼ばれた品の作り手を訪ねた。

豊かな大自然の中、牧草で育つ牛たち

大理石のように美しく入った青カビ。新鮮な牛乳の旨味が凝縮された味わいとまったく臭みがないのが特徴。

北海道第二の都市、旭川。中心部から車で約40分、のどかな風景が広がる静かな里が江丹別(えたんべつ)だ。内陸のため寒暖差が大きく、日本最低気温全国第3位を記録したこともある。この地で昼夜完全放牧、牧草のみの酪農に取り組みたいと志し愛媛から移住してきたのが、伊勢ファーム創業者の伊勢壽寛氏。現在はブラウンスイス、ホルスタイン、ジャージーと3種18頭の乳牛を飼育している。

澄んだ空気を存分に吸って育った牛たちは健康そのもの。その搾り立ての牛乳を使ったチーズ作りに取り組んでいるのが、次男の昇平氏である。自ら搾った牛乳を工房へと運ぶのはバケツを使った手作業で。「パイプを通して流すと牛乳の状態を確かめることができませんから」と、理由を話す。

ファーム周辺にはのびのびとした自然が広がる。
春から秋は昼夜完全放牧で牛たちは自由に牧場内を歩き回り、エサは牧草のみ。寒さが厳しい冬のみ牛舎内で自家製乾草をエサとして飼育する。

昇平氏が作るのはブルーチーズただ一筋。「江丹別の青いチーズ」と名付けられたその品は、全国の名だたるシェフたちからも注目を集め、JAL国際線ファーストクラスの機内食に採用されるなど、突出した美味しさが特徴だ。すべて一人で手作りするために大量生産はできず、入手困難さから「幻のチーズ」と呼ばれたことも。さらに7年ほど前からは製法の壁に突き当たり、一時は製造中止となっていたが、大きな転換を経て2016年春から製造再開。より深みある美味しさとなって復活を遂げた。

唯一無二。「ここでしか作れないチーズ」を

チーズ作りに最も適した乳を与えてくれる「ブラウンスイス」種の乳牛。

チーズ生産者を志したのは高校2年生の時。英語の先生に「せっかくの人生、世界基準で生きろ。お前の牛乳で世界一のチーズを作るのもひとつの道だ」と言われたのがきっかけだった。帯広畜産大学に進学した昇平氏は、休日ごとに近隣の工房での手伝いもしながら独学でチーズ作りを学ぶ。卒業後は、質の高さで知られる共働学舎新得農場に就職し、食に対する考え方、あるべき姿について学んだほか「その土地でしかできないチーズ」を目指すよう指導されたという。

いかにチーズ全体にきれいに青カビを入れるかが課題。すべて手作業で製造できるのは1日最大7ホール。
中世からの製法で作る幻の「ブルードテルミニョン」。木桶で脱水する。

江丹別でしかできないチーズ。ヨーロッパで江丹別に最も気候が近い地方を調べた昇平氏は、その地、フランスのオーベルニュがブルーチーズの産地だと知る。実際に訪れ、道端の植生や牛の飼い方など驚くほど共通点が多いことを知り、ブルーチーズ作りに専念することを決意した。

「難しいと反対もされ、ひとつの商品だけに賭けるリスクも承知していました。それでも不思議と自信はあったし、これだけは誰にも負けないというものを作りたかったんです」

いつの日か「江丹別」を世界中が知るブランドに

初期のチーズが高く評価された理由を、昇平氏は「ビギナーズラック」と断ずる。やがて失敗が続き、自身のチーズ作りに納得がいかなくなると、再度フランスへ渡り一年の年月をかけて再修業。ようやく「理論とエビデンスに基づいたチーズ作り」の原点に立つ。

左から青カビ、酵母、乳酸菌。どれもブルーチーズ作りに欠かせない。
牛乳を凝固させた後、カッター(写真)で約1cm角のサイコロ状にカット。サイコロの隙間に青カビを入れていくのがフランス式ブルーチーズ製法だ。
熟成中のチーズ。

この渡仏の前までのやり方は、牛乳に乳酸菌、酵母、青カビを加え、レンネット(酵素)で凝固させた後、まずは塊をボロボロに砕いてから型に入れ、脱水、熟成へと進むイギリスやイタリアの伝統的な製法。組織が崩れやすく、クセが全面に強く出たり、または青カビがまったく入らずで、廃棄となるものも少なくなかった。

それに対し、近年フランスで行われている製法は、レンネットで凝固したチーズを約1センチ角のサイコロ状にし、表面に酵素の膜を張って粒同士がくっつかないようにした上で、型に入れて脱水するというもの。粒と粒の隙間に青カビがバランスよく入り、チーズの生地そのものの旨味も各段に増すそうだ。

一般のチーズが11〜12°Cで熟成するのに対しブルーチーズは7〜9°C。針で穴を開け青カビに酸素を補給した後、約2ヵ月間熟成する。
完成したブルーチーズを切ると、最初は薄い黄緑だった断面の青カビが酸素を吸って、みるみるうちに青色へと変化。熟成中に酸素が少なすぎた青カビは色が薄いまま、多すぎた青カビは灰色になる。

フランス式製法を取り入れて研究を重ね、ようやくたどり着いたのが現在販売中の「江丹別の青いチーズ」。そして、安定して納得のいく品を作れるようになった昇平氏が目を付けたのは、ヨーロッパで大流行中の「ブルーチーズのアレンジ熟成」だ。ワインの搾りかす、カカオの皮、マーマレードなど様々な素材で追熟するというもので、まったり成熟した味わいの虜になる人が続出しているという。

一世紀以上に渡り旭川で地酒を醸す高砂酒造。辛口の清酒「国士無双」などで知られる。
道産酒造好適米「彗星」を使った大吟醸の酒粕。甘く芳醇な香りが漂う。

昇平氏はかねてから交流のあった旭川の老舗酒蔵「高砂酒造」の酒粕を使った追熟を思い立つ。通常の熟成を終えたチーズを酒粕に包んで1ヵ月。第一回目の試作品を食べた時の感想を「自信はありましたが、それにしてもこんなに旨いだなんて、衝撃的でしたね」と表現した。「旭川」と名付けられたこのチーズ、ここでしか作れない天下無双の品であることは間違いない。フランス人に食べさせ「初めての味」に驚く顔を見る日を昇平氏は心待ちにしている。

酒粕熟成の「旭川」は伊勢ファームと高砂酒造直売所で販売。100g 1,400円。
日本酒のほのかな甘みとまろやかでねっとりした食感が加わり、得も言われぬ味わい。

そんな昇平氏が目標に掲げるのはロマネ・コンティ。

「ロマネ・コンティの町づくりって農産物のあるべき究極の姿だと思うんです。誰もが名前を知っていて、ロマネ・コンティ=ワインとなる。同じように、ブルーチーズと言えば江丹別となるように『江丹別』をブランド化し、良いチーズを作っている素敵な所だと知ってもらいたいですね。ロマネ・コンティの畑は1.5ha、うちの畑は40ha。実現できると思います」

江丹別という地名が全世界に知られる日は、そう遠くないのかもしれない。

「伊勢ファーム」チーズ職人 伊勢昇平
1986年、江丹別町生まれ。帯広畜産大学卒業後、共働学舎進徳農場を経て伊勢ファームへ。質の高いチーズが大評判となったが、その後のスランプで、武者修行のためフランスへ。2016年2月にチーズ作りを再開し、以前よりさらに高い評価を得ている。

伊勢ファーム(カウ&カーフ)
住所/北海道旭川市江丹別町拓北214
TEL/0166-73-2148
営業/13:00〜17:00、土・日・祝日10:00〜18:00
休み/火曜(冬季休業あり)
https://www.facebook.com/etanbetsu.blue

香り、濃厚な味わいを持ち合わせたブルーチーズ

イタリアの郷土料理を提供する『クオーレ・フォルテ』(東京・下北沢)で、「江丹別の青いチーズ」を使った美味しいレシピを教えてもらった。

「江丹別の青いチーズは、カビの量が多く香りと味が濃厚です。しっかりとした味わいの赤ワインが進む味わいですね」とオーナーシェフの羽賀氏。

ローマの郷土料理である「ニョッキロマーナ」はセモリナ粉で作られたニョッキ。通常はパルミジャーノなどを合わせるところに、江丹別の青いチーズをトッピングした。小麦の甘みを感じられるニョッキに濃厚な味わいのチーズがよく合う。ミラノの郷土料理であるチーズに衣をまとわせて揚げたシャットは、チーズの味わいをダイレクトに感じられるつまみ。ビールを入れサクッとした食感に仕上げた衣の中から、チーズがとろりと溶け出してくる。リゾットは、チーズの旨味を引き立てるために、酸味の利いたブルーベリーのソースで味わう。

「このチーズは味わいが強いので、塩などの調味料をあまり足さずに、チーズ単体で味付けするという感覚でレシピを工夫しました。イタリア北西部のロンバルディアのワインなどと合わせるのがおすすめです」

いつものチーズを使った料理を江丹別の青いチーズに置き換えるだけで、味わい深い一皿ができ上がるだろう。

ニョッキロマーナ

表面はカリッと、中はふわふわの食感のほのかな甘さのニョッキは、江丹別の青いチーズと合わせることで旨味が引き立つ。

材料(3人分)

牛乳……375cc
セモリナ粉……125g
バター……30g
塩……小さじ1/2
卵黄……1個
グラナパダーノ……60g
ナツメグ……少々
江丹別の青いチーズ……10g

作り方

1 鍋に牛乳を入れて温め、セモリナ粉とバター、塩を入れてよく混ぜる。粉に火が入ったら卵黄を入れて混ぜ、さらにグラナパダーノ、ナツメグを入れてさらに混ぜ合わせる。

2 1をまな板の上で伸ばし、めん棒で均一の厚さ(5mm程度)に伸ばしてからセルクルで抜く。バター(分量外)をフライパンに引き、片面を焼き目が付くまで焼く。

3 耐熱皿に並べたら、江丹別の青いチーズを一枚ずつ上にのせて、さらにグラナパダーノ(分量外)を振りかける。180°Cのオーブンで10分ほど焼いて完成。

シャット

ミラノでは冬にできるチーズで作られるこの料理。江丹別の青いチーズで作ることで、チーズの旨味をダイレクトに味わえる。

材料(2人分)

そば粉……100g
パディーナ(強力粉)……50g
塩……1g
ビール……150cc
グラッパ……大さじ2
江丹別の青いチーズ……36g

作り方

1 そば粉とパディーナ、塩をボウルに入れ、ビールを少しずつ加えながら混ぜ合わせる。さらにグラッパを入れ、よく混ぜる。これが衣液になる。

2 江丹別の青いチーズを6gずつに分けて、一つひとつ丸めて楊枝を刺す。

3 2を1の衣液にくぐらせ、180°Cの油(分量外)で揚げる。衣が程良く固まったら、再度衣液に浸けて二度揚げする。

リゾット

チーズを酸味のあるブルーベリーのソースと合わせることで、さっぱりと仕上げた。女性に必ず喜ばれる、〆の一皿。

材料(1人分)

玉ネギ(みじん切り)……1/8個
イタリア米……80g
ブロード(出汁)……200cc
江丹別の青いチーズ……40g
黒コショウ……少々

作り方

1 鍋にバターを入れ、玉ネギを炒める。玉ネギがしんなりしてきたらオリーブ油(分量外)を加え、生米を入れて軽く炒める。

2 ブロードを何度かに分けて加えて15〜20分ほど煮込んだら、江丹別の青いチーズを加え、軽く混ぜ合わせる。

3 別の鍋でソースを作る。赤ワインを煮切ってからブルーベリーを入れて完成。2を皿に盛り、中央にブルーベリーソースをのせ、黒コショウとシナモンを振る。

レシピを教えてくれた人

『cuore forte』シェフ 羽賀大輔
18歳の頃からイタリア料理の世界に入る。都内の様々なリストランテで修行した後、2010年に『クオーレ・フォルテ』をオープン。年に1度は渡伊し、ワインの生産者らを訪ねている。

cuore forte(クオーレ・フォルテ)
住所/東京都世田谷区北沢3-20-2 大成ビル1F
TEL/03-6796-3241
営業/17:30〜24:00(L.O.23:00)、金・土17:30〜翌3:00(L.O.2:00)
休み/火曜
※営業時間は変更の可能性があります。お出かけの際は予めご確認ください。
http://ameblo.jp/daisuke8741

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